第5話 説教と上級生?

「貴方ねぇ...いくら急いでるからってあんなに強力な身体強化なんて使わなくってもいいでしょう!身体強化も出力を誤れば制御できなくなる。!?誰かにぶつかりでもしたら大けがするわよ!現に私にぶつかりそうになったじゃない!」


 先生は真っ赤な顔で俺を叱る。まさか栗沢先生の説教イベントがこんなに早く拝めるとは...しかも目の前で。いや感動してる場合ではない、幼めな容姿のせいで迫力には欠けるが、怒っていることははっきりと分かる。ちゃんと謝らねば。


「はい...本当にすみません...。ちゃんと制御出来るようになってから使うようにします...」


 俺は誠心誠意、頭を下げて謝る。すると栗沢先生は大きくため息をついた。


「良いわ、頭を上げて。」


 良かった。どうやら反省の気持ちは伝わったようだ。


「少し間違えたら、大けがにつながるんだから、しっかり反省しなさい。まったく...今日は入学式なのよ?、ちゃんと下級生のお手本になるよう行動しなさい。」


「はい...ん??」


 お叱りの言葉を受けながらも、彼女の発言にひっかかるところがあったのでそのまま質問する。


「すみませんが、なぜ自分が上級生だと?」


 すると先生は、首をかしげながら答える。


「え?だってあんな出力の身体強化をするには、かなりの魔力が必要でしょう?いくら天涯学園の生徒って言っても、新入生には無理な魔力量だったし...それに、あんな出力の身体強化は新入生の身体じゃとても耐えられないわよ。だから、ダンジョンに潜って魔力と身体能力を上げた上級生なのかなって。」


「なるほど...。」


 そう言いながら俺は、この世界ゲームの設定を思い出す。この世界では、生まれながらに誰もが大なり小なり魔力を保有している。その魔力を用いて魔法を使用することでダンジョンの魔物と戦うわけだが、その出力は使用した魔力量に依存する。規模が大きく威力の大きい魔法を使用しようと思えば、それに見合うだけの魔力が要求される。当然、魔力が足りなければ魔法は使えない。


 では、生まれながらに魔力の少ないものは弱い魔法しか使えないのか?と言われれば、その答えはNoである。ダンジョンに於いてのみ、魔力は増やすことが可能なのだ。


 ダンジョンの魔物は、死亡するとその体の一部を残し、魔力となって霧散する。この霧散した魔力を人間が吸収することで、魔力量を増やすことが出来、さらに身体能力も向上する。


 なので、魔力が多くて体の丈夫な人間は、生まれつき魔力の多い者、あるいはそれだけ多くの魔物を狩った者、つまりはここ天涯学園で日常的にダンジョンに潜り、魔物を狩っている上級生になるわけだが、先生はどうやら俺を後者だと思ったらしい。


 まぁ実際は、初めて魔法を使った故に暴走した、魔力が多くて丈夫な新入生なのだが...。


 身体強化の制御が出来ていなかった言い訳をするわけでは無いが、誤解は解いておくべきだろう。俺は申し訳なさそうにしながら、学生証を見せる。


「あの...すみません。俺、新入生なんです...。」


「え゛?」





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