第17話 ドレス
「ドレスは僕の瞳の色にしてもいいだろうか。」
「本気で言ってます?」
「僕が冗談を言っているように見えるか?」
今日の午後に仕立て屋が来るから、それまでに予めデザインを考えておきたい。
「スレン様...。もしかしてオーダードレス.....?」
「それ以外に何がある?」
「おぉう.....。」
それは一体どういう反応なんだ?
「ただでさえ、ドレスを贈るという行為だけで、相手への愛情表現ですよ?それに、自分からオーダーして、そのドレスの色を自分の瞳の色にするだなんて、独占欲丸出しじゃないですか。もしかして、リトリシエ様の中にいる女性に好意を...?」
なんだこいつ、勘がいいな...。否定はできず、それを少し不満に思い、何も言わずにカイルをじぃーっと見つめていると、彼は何かを察したのだろう。見たことないくらいに目を見開いて、口をぽかーんと開いている。少ししてから現実に引き戻されるように、口を動かした。
「いやいやいやいやいや、嘘ですよね?嘘ですよね!!スレン様、そんな感情持ってたんですか?!」
「失礼だな。」
「いや、だって、ええぇぇぇええ?!」
「いちいち反応がうるさいぞ.....。」
別に誰が誰を好きでもいいだろう.....。
その後、仕立て屋が来るまでの時間、ずっと話を続けられたのだった。
―――――――――
「スレン様、仕立て屋の方が来られました。話の続きは夕食後にでも。」
こいつまだ話し足りないのか.....。
結局初恋の話までさせられて、ただの羞恥プレイではないか?もう話したくないな.....。
とりあえず今は目の前の事を片付けなければ。
「スレン殿下。お初にお目にかかります。」
「そんなに固くしなくていい。こちらこそ、足を運んでくれて感謝する。」
その後、仕立て屋の人はとてもご機嫌でカタログを開き始めた。
「お色やデザインのご希望はありますか?」
「...僕の瞳の色にするというのは...だめだろうか.....。」
僕は呟くように言った。正しく言えば、言ってしまった。口にした後にはっとし、仕立て屋の人や、使用人の反応を伺うと...
「す、スレン様ってあんなに可愛らしい方でしたっけ...?」
「なんというか...幼さが残っていて.....」
「一生仕えようと今誓いましたわ。」
お前ら...全部聞こえてるぞ。
こうなるのなら人払いをするべきだった.....。
「スレン殿下の瞳の色は深い青なのですね。ふむふむ、最近はですね、グラデーションが流行っているのですよ。」
女性というのは本当に流行りというものが好きなのだな...。僕にはよく分からないから、ほとんど仕立て屋の指示に従い、デザインが決まった。その頃には日が沈んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます