第4話 聖女クラウシア
ついにやって来ました。夜会当日です。
旦那様に何度か体調は大丈夫かと聞かれましたが、私は元気ですし、お医者様も外に出て大丈夫と言って下さったので大丈夫です。
「リトリシエ様...!お綺麗です!!」
侍女の1人が感心したように言います。今の私は、先日贈っていただいた少し濃い青色のドレスを着ています。裾にかけて黒っぽいグラデーションになっていてとても綺麗です。そういえば、このドレスの色、旦那様の瞳によく似ています。
―――――――――
「とても綺麗です。」
「はぇ!?!」
会場に着いて、エスコートされている最中に旦那様が急に私の耳元に口を近づけてそんなことを囁いてきたので、変な声が出てしまいました。顔も真っ赤なのが自分でもわかります。よくもまぁそんなに恥ずかしいことを堂々と.....。ちらりと横を見ても彼はいつも通り表情は何一つ変わっていません。ここまで来ると逆に尊敬です。
あら、何だか周りがざわざわしています。みなさん、私たちを見ているようです.......。
はっ!!!!私人前で顔を真っ赤にしていました!今はリトリシエ様、「氷の令嬢」なのでした!!
別人だとバレてないですよね...。
―――――――――
私たちは夜会が始まる少し前に着いたので、会場で始まるのを待っています。とはいえ旦那様とは会話などございません。旦那様はとても無口ですが、他のご令嬢からきゃあきゃあ言われております。旦那様は無関心そうですが...。何だかもやもやします。
「旦那様、ご令嬢からとても人気なのですね、」
「何の話だ?」
はっ!!!口が勝手に.......!!
「いえ、その、旦那様とお話したがっているご令嬢がいますので、ご挨拶には行かれないのかなと思いまして。」
「僕には貴方という婚約者がいますからね。必要以外は話しかけませんよ。」
「.......そうですか。」
必要以外.......。必要ならお話するのですね.....。
って!!私ってば!!何を考えているのでしょう!今日の私、何だか変です。
――――――――――――
「「聖女様ですわ!」」
私の悩みはその一言で吹き飛びました。この国に聖女は私しかいなかったはずです。
恐る恐る会場の入口に目をやると、そこには聖女クラウシアがいました。
ど、どういうことでしょう。あれは私...。も、もしかして、リトリシエ殿下の中身が私で、私の中身がリトリシエ殿下?!?!転生というよりかは入れ替わりとかの方が正しいのでしょうか。よく分かりませんができるだけ関わりたくないので、隠れなければ...。
そう思い私は旦那様の腕をぎゅっと掴み、そのまま背中に隠れました。旦那様は私に腕を掴まれとても驚いていましたが、すぐにいつものお顔に戻っていました。旦那様は背が高く身体もがっしりしているので、細身の私なら十分隠れられるはずです!!
―――――――――
そんなことありませんでした。今私と旦那様の目の前にはニコニコとした聖女様がいらっしゃいます。
「お久しぶりです。スレン殿下。」
「お久しぶりです。この間の宴ではありがとうございました。」
わ、私はバレていないでしょうか.....。
私は今、旦那様の背中に隠れ、お洋服をぎゅっと掴んで小さくなっています。旦那様、私今とても変な行動していますが、嫌いにならないでくださいね.......!!なんて考えていると、クラウシア(中身は多分リトリシエ殿下)が口を開けました。
「殿下の後ろにいらっしゃるのはリトリシエ殿下ですね!!」
ああああああぁぁぁ!!バレてました!!な、何を言われるのかしら.....。怒られる...?まさか殺されたり.......?!嫌ですわ!!!
そう思い私は旦那様の腕を更にぎゅっと掴みます。そしてクラウシアは私の耳元に口を近づけてきました。
「事故の件、大丈夫でしたでしょうか。私の馬車と衝突したのですよね...?優れないところなどはおありじゃないですか?」
「えっ、あっ、はい。大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます。」
な、なんでしょう...。この雰囲気、中身はリトリシエ殿下では無い気がします。本物の私のようで.........。
「く、クラウシア様、せ、聖力の方は大丈夫ですか.......?」
私は思い切って聞いてみました。
聖力とは聖女の力。私は今リトリシエ殿下の身体ですが、自分の聖力を感じていますし、おそらく使えます。なのでこの聖女の中身が私で無ければ分からないはずです。しかも、私の聖力、実は事故に遭い目が覚めたら何故か半減してしまっているのです。それを知らなければ.......
「まぁ、リトリシエ殿下は聖力をご存知なのですね!実は...事故のあと、目が覚めたら何故か聖力が半減してしまったのです。」
なっ.......!この中身.....私なのですか?!
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