第3話 憧れの



遂に夜会が明日に迫ってきました。とても楽しみです。私はマナーについてのレッスンを受けたので、今までほど緊張せずに当日を迎えられそうです。そして今.......。


「リトリシエ様にはこちらが似合うと思います!」

「いえ!こちらの方が!!」

「これも捨てがたいです!!!」


私の侍女達が、私のドレス選びで言い争いをしています...。みなさんには仲良くして頂きたいのですが.......。


みんなでわいわい言い争って居ると突然部屋の扉が開きました。そこから顔を覗かせたのは


「「スレン様っっ!!?!!」」


侍女のみなさんとても慌てていらっしゃいます。

私はまだスレン様との距離感を掴めないままでいます。お顔があまりにも変わらないので、表情を読み取れないのです.....。お顔は良いのですから、少しにこっとされてみれば良いのに.....。

じぃーっとスレン様のお顔を眺めていると、スレン様が少し咳払いをして口を開きました。


「ドレスはこれにしてください。あとお前たち、声が大きすぎる。廊下まで聞こえてきたぞ。」

「はっはい!すみません!ドレスはこちらでご用意させていただきますね!失礼いたしました!」


侍女のみなさんは慌ててお部屋を出ていかれました。そして今、この部屋には私とスレン様の2人だけです。


「ドレス、僕が勝手に選びましたが、宜しかったでしょうか。」


スレン様は、彼が今持ってきたドレスを私に手渡して下さいました。スレン様が直接持ってきたということは、ドレスのプレゼントということですか?!?!


「すっ、スレン様っ!女性にドレスを送るということは、そういう事ですよ?!?!」


そう、この国では、愛する人にドレスを送るという習慣があるのです。パーティや夜会などで一緒に踊って欲しいという意味が込められているそうです。


「僕たちは婚約していますから、当たり前ですよ。」


あ...そうでした.....。婚約者同士でした.....。


「それと、」


スレン様はそう言いながら私にお顔を近づけてきました。そして手で私の顔を掬い、親指で唇に触れられました。スレン様の前髪が私の額に触れそうです。


「スレン様、という呼び方は距離を感じて寂しいです。せめて旦那様、とかどうでしょう。」


そう言いながらさらにお顔を近づけて来られます。近いです近いですっっ!!


「はいっ、旦那様っ!旦那様とお呼びするので離れてください.....っ!!」


慌てて私はそう言いました。私、絶対に顔が真っ赤になっています.....。リトリシエ殿下は絶対こんなお顔なされないですよね.....。中身は別人ってバレちゃわないでしょうか...。


「夜会の場でもそう呼んでいただけると嬉しいです。ドレス、真剣に選んだので気に入っていただけると嬉しいです。それでは」


スレン様.....旦那様はそう言うとお部屋を出ていかれました。もう、本当に、どきどきしました...。転生前の私は22歳で、旦那様は19歳。私よりも年下のくせに.......。


こんなにもどきどきさせられて悔しいです。

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