第5話 初めての夜会
まさかと思い、私は無意識に旦那様から手を離し後ろに2、3歩下がりました。
聖力がお互い半減しています。つまり、事故の時瀕死状態に陥ったリトリシエ殿下に私の聖力が流れ込み、リトリシエ殿下は一命を取り止めた。ただ、流れ込んだ聖力が多すぎて、意識などまで一緒に流れ込んでしまった、ということでしょうか?!
何だか難しい話です.......。簡単にまとめたら、私の精神が2分割されて、それぞれの体に宿っているということですね。
.......そんなことありえるのでしょうか。
1人で考え込んでいると、クラウシアは旦那様と少し話して去っていきました。もう関わりたくはありません。
何だったのかよく分かりませんが、一応ひと段落です。
―――――――――
前言撤回です。ひと段落なんてありませんでした。旦那様は公爵家時期当主なのです。たくさんの貴族の方が挨拶に来られます。それに、旦那様はお顔がとてもきれいなので、おそらく旦那様と結婚したいとか思っているであろうご令嬢もたくさん来られました。
私は特にすることもないので周りをきょろきょろしています。人間観察は好きなのです!
そう思い、周りを見ていると、何やら私のことを見て何人かでひそひそ話をしている髭を生やした少し偉そうな方々を見つけました。
私のこと、とても睨んでおられます.......。
何を話しているのでしょう......。気になります。
今こそ!聖力の使い時ですね!!!
実は聖力って万能なのです。
加護によって、耳を聞こえやすくするなど造作もないです。
私は自分の耳に手を当て加護を付けました。
『リトリシエと聖女は事故にあったはずだろ?なぜ普通の顔をして夜会に参加しているのだ』
『これでは公爵家の信頼を落とすことはできないですな』
『事故の衝撃が弱かったのか?もう少し派手にしてやるべきだったな.....』
『聖女と公爵家、両方の権力を落とせる機会だったのにな、非常に残念だ。』
えっっ.......!!!まさかあの事故、仕組まれていたのですか?!
でもそうですよね、私の馬車とリトリシエ殿下の馬車、普通なら衝突する訳がありません。
うーん...と考えていると斜め上から視線を感じました。旦那様です。なぜそんな不服そうな表情をしてらっしゃるのでしょう。少し考えた後、私は気づました。旦那様の腕に私の手をかけていたのですが、考え事に集中し過ぎてぎゅぅっと掴んでおりました!!!
私は咄嗟に謝ろうと手を離し口を開こうとした時でした。
「ーー♪♪〜〜」
音楽が流れてきました。まさか.......
「ダンスだな」
旦那様がボソッと呟かれました。
やっぱりダンスですよね!!!
今回の夜会で1番不安だったもの...それがダンスなのです。
実は私、ダンスがとても苦手です.......。
ちらっと旦那様の方を見上げると、旦那様もこちらを見ておられたようで、バチッと目があいました。少し気まずいです.......。
すると旦那様は急に私の前に跪きました。
そして私の手を取ります。
「私と一緒に踊っていただけませんか?」
「はっ、はい」
普段旦那様の一人称は僕なので、慣れない私という単語にどきっとしてしまいました。
相手は年下...相手は年下.....。
ダンスが始まってもどきどきが治まりません。それどころか更にどきどきしてしまいます。相手は年下なんですから、どきどきする必要はありません!と自分に言い聞かせていますのに...
「リトリシエ」
「はぇ?!」
踊ってる最中に耳元で囁かないでください!!
「今日のドレスとても似合っています。とてもかわいい」
「っっ!!!」
会場に来る時、エスコートしながらもそんなことを言っておられました!!でもあの時とは違いダンスしながら耳元で.....!しかも今は距離もとても近いのです。顔もよく見えて.....。あああとても整っていて素敵なお顔です!!!可愛いと言われるのは嬉しいのですが、それ以上に恥ずかしすぎます!!こんなとき今までのリトリシエはどうしていたのかしら!!冷たくなんてとてもできません!!
「.......ぁりがとぅ、ござぃます.....」
結局恥ずかしすぎてほとんど声も出ませんでした。ですが旦那様の口角が少し上がったような気がします。気がしただけですよ?
―――――――――
無事にダンスが終わりました。旦那様がとても上手だったので失敗することなく終わりました。そろそろ2曲目が始まるようです。
この後どうしようと思っていると1人のご令嬢がやって来ました。金色の髪を縦に巻き、瞳は深い緑。ドレスはとても濃い赤色です。とても気の強そうな美しいご令嬢です。何をしにいらっしゃったのでしょう.......。
「お初にお目にかかりますスレン殿下。私ウェザール伯爵家のマリアールと申します。先程のお二人のダンスとても素敵でしたわ!皆も見蕩れておりましたわ!」
「そうですか。ありがとうございます。でも、褒めるならリトリシエを。彼女はとてもダンスが上手なのですよ。」
...............は?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます