一瞬を生きる、然れど悠久に在る

@Tokisame_Shigure_35

あのとき、いま、これから

死。


「おじいちゃん・・・」


それは、人が生きとし生ける存在である以上、避けられようのない運命。


「は、はは・・・ごめんな。大人になったら、一緒に酒でも飲もうって、約束したのに・・・」


人間に限ったことではないが、不慮の事故でもない限り、それは長い年月を生きた者から順に訪れる。


「酒なんかいいよ。身体に悪いし・・・」


時の流れと言うものは残酷で、無情で、無慈悲である。


「はは、そうだな・・・儂は酒が好きだったから、飲みすぎたのかも、しれんな・・・」


それでいて、この上なく平等な不変の指針でもある。


「・・・おじいちゃん」


「・・・なんじゃ?」


「俺が天国に行ったら、一緒に酒飲も?」


「・・・ははは。じゃあ、まだまだ先じゃな」


「うん。でも、お願い。待ってて」


「ああ。待ってる」


「・・・雨、止まないね」


「きっと、神様も悲しんでくれてるんじゃよ・・・」































人の、「あなた」の生は、いずれ終わりが訪れる。


「おじいちゃん・・・」


然れど『あなた』は、写真の中に、映像の中に、記憶の中に存在し続ける。


「は、はは・・・ごめんな。大人になったら、一緒に酒でも飲もうって、約束したのに───」






時の流れは残酷で、無情で、無慈悲で。


「・・・ああ、雨か」


それでいて、過去と現在と未来を繋ぎ、彩る、不変の指針なのだから。

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