邪なる緑の惑星

トモフジテツ🏴‍☠️

前篇 そうして、どうなったのか

 十四度目の外惑星探索、二つの目的。

 居住環境構築装置プラネットフォーミングの動作と、広範囲を浸食する植物の駆除状況の確認作業。


 二人の探索職員が歩く。太陽黄経は百五度。


「いつ来てもひでぇもんだ」


 職員の一人が、相棒に向かってそんな風に軽口を叩いた。かつては高度な文明が栄えた記録の残る惑星の建造物は、鬱蒼うっそう蔓延はびこる植物に包まれている。

えすぎいすぎしげりすぎ、だな」

 職員は返事をしない相棒に再び愚痴ぐちをこぼす。自然や緑の豊かさにも限度があるだろうというのが職員の言い分。惑星の支配者であるとでも言いたげに跋扈ばっこする蔦植物ツタしょくぶつ深緑色アイビーグリーンも、それらが放つ草の匂いも青い香りも、情報があまりに強すぎると視覚や嗅覚に不快感をもたらす。

「俺らみたいな生き物がわんさか暮らす時期も、あったんだと」

 見渡す限り草木と昆虫の楽園でしかない環境で、職員は喋り続けた。

「信じられるか? 昔は〝母なる青き惑星〟とか呼ばれてたらしい」

 相棒はようやく声に反応する。冗談はよせと、肩をすくめながら口角こうかくを上げた。

「総面積の七割が水だったらしい、だから……青き惑星、だ」

 とうとうえきれなくなった職員二人は、大声で笑い出す。


 かつて地球と呼ばれた星、よこしまなる緑の惑星の探索は続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る