第13話
******
「そろそろお風呂、湧いたかしら。理沙、今日は香菜江さんに入れてもらいなさい?」
夜の20時前。夕飯が終わって、理沙ちゃんと一緒にテレビを見ていると、優香さんが声をかけてきた。
どうやら優香さん家のお風呂は、理沙ちゃんが寝る前の時間に済ませるようだ。
「香菜江おねーさんとお風呂ー! ママは一緒に入らないの?」
理沙ちゃん、なんともまあ自然に最高の提案をする。わたしとしては大歓迎だが、優香さんの裸を見たらえっちな気分になっちゃいそうだしなあ。家族三人でのお風呂は、色々大変そうだ。
「ママはちょっと忙しいから、いいの」
「えーっ。ママ、お風呂の時いっつも香菜江おねーさんのこと話してるのに。一緒に入らないの、へんなの」
「こらっ、余計なこと言わないでいいの! 早く入っちゃいなさい」
なんとも興味深い会話が聞けたものだ。
「ママって香菜江おねーさんの前だと怒りやすいのかなあ?」
「あれはね、照れてるっていうんだよ、理沙ちゃん。それより、お風呂でママのこといっぱい聞かせてね」
理沙ちゃんから優香さんのあられもない情報、いくらでも引き出せそうだ。
優香さんは、ちらちらとわたしたちを
小さい子どもをお風呂に入れるのは初めてのことなので、かなり気を使った。恥ずかしがる余裕なんてあるはずもない。
頭を洗ってあげたり、体も
理沙ちゃんは、常時キャッキャしているのでそこだけは救いだった。
一通り洗い終わったので、湯船で二人、のんびりとする。ごくらくごくらく、って
「香菜江おねーさんって、ママとぜんぜんちがうね」
「え、そうなの? ごめん、何か違ってて嫌だった?」
「ううん、そうじゃなくて。ママとからだ、ぜんぜんちがうなって。香菜江おねーさん、おっぱいないもん」
理沙ちゃん、指摘しにくいことを平然と言ってのける。その発言は、女のわたしにしてみればけっこうなダメージだ。いや、昔は気になったこともあるけど、今は全然気にならないし! 別に、自分の胸とかどうでもいいし!
「あ、あはは。優香ママ、おっきいしやわらかいもんね。ごめんね、わたしのおっぱいじゃ理沙ちゃんを楽しませてあげられなくって」
「えーっ! 香菜江おねーさんもママのおっぱい知ってるんだ! 香菜江おねーさんもママのおっぱいつんつんしたことあるのー?」
!?
つんつんどころか、ちゅーちゅーしたし、かみかみもしました、って言えないんだが! ぐ、どう答えればいいんだ。相手が純粋すぎて、誤魔化すのも難しいな。そうか、だから優香さんは理沙ちゃんとお風呂に入りにくかったんだな。
「ま、まあ、ちょっとしちゃった、かな……。優香さん、魅力あるし……」
「香菜江おねーさんもママのこと好きなんだ! ママもね、香菜江さん香菜江さんっていっつも言ってるんだよ。おにあいってやつだねー」
理沙ちゃんって、意外とおませなのか。でも、わたしたちが恋愛関係にあるのを知ったとしても、嫌がらないでくれそうだな。後は、打ち明けるタイミングか……。そこは慎重にいきたいところだ。
「わたしは優香さん大好きだよ。もちろん理沙ちゃんも好き。理沙ちゃんは、優香ママのこと好き?」
「いちばん好き! でもね、香菜江おねーさんも同じくらい好きかも」
理沙ちゃんと湯船で抱き合う。
子どもにとって一番大切なのは母親だろう。それと同レベルに好かれているのは、素直に喜ばしいことだ。
いくら優香さんと相思相愛になったところで、理沙ちゃんに嫌われでもしたら、優香さんとの結婚は諦めなければいけないだろうし。理沙ちゃんの気持ちは、今のところ順調に掴めている。
「うーん。でも、やっぱりママと香菜江おねーさん、おっぱい以外もちがうねー」
「え、今度はなに?」
理沙ちゃん、わたしのからだに興味津々なのか、次々に違いを見つけてくる。将来、えっちな女の子にでもならないといいが……。優香さんがえっちなからだしているし、影響されてもおかしくはないな。そこはわたしが正していかないと……。
「したのおけけが、ママはすご……」
「理沙ーーーー!?」
お風呂の外から、
……優香さん、もしかしてずっと聞き耳立ててた?
さしもの理沙ちゃんも、顔面を蒼白にして身震いしている。どうやらママは、怒ると恐ろしく怖いようだ。
……きっと、わたしが矯正しなくても品行方正に育ってくれるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます