第12話

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 実に幸福な時間だった。

 わたしは、世界のすべてを手に入れた覇王のような気分だった。


 優香さんの全身を口で味わったし、初めてももらってしまった。しかも、優香さんも途中から慣れてきたのか、乱れまくりで。休憩なしで致してしまった。


 居間でそのままおっ始めていたはずが、いつの間にやら布団を敷いて今は二人とも裸でぐったりしている。布団は、激しく愛し合った証のように、ぐちゃぐちゃになっていた。

 優香さんは、汗でひたいに髪の毛を貼り付けた妖艶ようえんな姿で、満足げな顔をしている。放っておいたら寝息でも立ててしまいそうだ。


 そこでいきなり、わたしの腹の虫がなった。


 ……めちゃめちゃ恥ずかしい。裸を見せたときよりも恥ずかしい。えっちでエネルギーを使い果たしてしまったようだ。


 それが合図だったみたいにして、優香さんもむくりと起き上がった。事後の雰囲気は漂わせているが、発情期は終わったらしく、いつもの優しい瞳でわたしを覗き込んでくる。……裸のままなので、優香さんが上体を起こすと、デカおっぱいがぷるぷるしていて目に毒だ。わたしの視線に気がついた優香さんは、慌ててシーツで胸を隠した。


「香菜江さん、えっち。まだしたりないって顔してるわよ」


「え、ま、まぁ。可能ならば一日中していたいですけど」


 あきれられるかな、って思ったけど、優香さんは嬉しげに微笑ほほえんだ。肯定されたみたいで、また押し倒したくなった。たぶん、時間さえあれば永遠にえっちしていられる。どこかでブレーキかけないと。


「ご飯も忘れてずっとしてたのに、元気ね、香菜江さんったら。でも、もうそろそろ理沙が帰ってきちゃうから……色々片付けないと」


「え、もうそんな時間……」


 時計を見ると、13時30分だった。3時間以上、休まずセックスしてたのか。

 お腹も減るわけだ。


 それに、この部屋、自分でもわかるほど汗と体液の匂いで包まれている。となると、外から入ってきたら、かなり強烈な香りに感じるはず。布団も乱れているし、衣類だって色んな液体で湿しめっている。換気やら掃除、したほうがいいだろう。


「香菜江さん。寂しそうな顔しないで? ……また、しようね? 私だって……物足りないんだから」


「優香さん、はじめてなのに気持ちよくなってくれたみたいで、よかったです。またしたい、って思ってくれてるの、すごく嬉しい」


「だって、二度と忘れられないわよ、あんなにめちゃくちゃにされたんだから。またしたいって思うのは、当然よ……。すごく愛されたって感じがするもの」


「子持ちの優香さんが実は処女だった……って思ってなかったから……嬉しくなって、つい激しく……」


「恥ずかしいから、それは言わないで……。香菜江さんったら、優しくして、って言ったのに聞いてくれないんだもの。……でもね、よ、よかったわよ……?」


「あの……きつけないでください。わたしは優香さんが可愛いと思ったら、すぐしたくなっちゃうんですからね」


「困ったお人ね、香菜江さんは。でも、ごめんね。私は、理沙を育てるって決めているから、香菜江さん一筋になれないの」


 優香さんのほうこそ、寂しげだった。後悔をしているわけじゃないだろうけど。わたしを満足させてあげられないことが歯がゆいみたいだった。わたしも彼女に愛されているのがわかって、たかぶってしまう。


「それは承知の上ですから、いいんです。でも……はぁ……。今日、帰りたくない……」


 今日は週のど真ん中。明日は仕事。家に帰らないといけない。けど、えっちの余韻よいんひたっていたい。ずっと、優香さんに触れていたい。

 優香さんには、わたしが門限が近づいた子どものように映ったのか、あやすように頭を抱いてくれた。生おっぱいが、わたしの頬をおおってくる。


「……私だって、香菜江さんにいてほしい。あ、そうだ。今日は泊まっていったら?」


「え、でも……」


「家からじゃないと、職場に通うの難しい? お泊りセットとか持ってこられないかしら」


「まぁ。まだお昼ですし、準備したりする時間はありますけど。理沙ちゃんも明日幼稚園でしょ? いいんですか?」


「んー。っていうかね。私、全身、香菜江さんにつけられたあとだらけなのよね。……これで理沙と一緒にお風呂、入れないわ。だから、責任取ってね? 今日は香菜江さんが、理沙をお風呂に入れてください」


 優香さん、すました顔でどすけべ発言をしてきた。

 そういえば、夢中で優香さんのいたるところにキスマークをつけてしまったな。別に理沙ちゃんに指摘されたところで、子ども相手なんだから、いくらでも誤魔化しがきくだろうに。優香さんはそう思わないらしく、恥ずかしいみたいだ。


「理沙ちゃん、わたしと一緒のお風呂で嫌がらないかな」


「絶対喜ぶわよ。さて、それじゃあお昼作ったりお掃除したりしないと。香菜江さんは、お泊りの準備でもしてきたら?」


「え、ああ。そうですね」

 

 優香さんも激しく体力を消耗したはずなのに、もうけろっとして服を着用し始めた。肌がツヤツヤしているような気さえする。もしかしたら優香さん、とんでもなく性豪せいごうなのかもしれない。


 シャツを着ている優香さんを眺めていたら、うなじがちらっと覗ける。ムラムラしてしまい、わたしは彼女の背後に忍び寄った。


 優香さんをバックハグすると、汗でむわっとしていて、むせ返るようなエロい体臭をしている。えっちしたいけど、いつでもしてくれるって言ってたし、今は我慢。


 わたしは、一旦の別れとはいえ、惜しむようにキスをした。


「じゃあ、さっさと用意してきますね」


「うん、またね……あなた」


 優香さん、新婚のつもりなのか、もじもじしながら言ってくれた。初えっちをしたためか、気分はもう夫婦のようだ。一回のえっちで彼女ヅラする、って話は良く聞くが、される側としてはたまらないな。


 幸せすぎて、おかしくなる!

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