第5話 誰かを守るために
バニラアイスを綺麗に食べ終え、メロンソーダを飲み干した後、今度はチョコレートケーキが食べたいと言い出し、半分こすることにした。注文が届くと、彼女はスマホを取り出して写真を撮り始めた。ケーキを俺の方に寄せてから、シャッター音がかすかに聞こえる。その後、スマホをいじって俺のスマホに通知が来た。
「何か送った?」と俺が尋ねると、美優は笑顔で答えた。「うん。今日の記念だよ」
送られてきた写真には、俺とチョコレートケーキのツーショットが写っていた。「盗撮かよ!」と俺は心の中で突っ込みつつ、彼女のいたずらっぽい笑顔に心が温かくなった。
その後、俺たちは映画館に向かうことにした。道中には唐揚げやケバブなどの食べ物を売るキッチンカーが点々と並んでいた。美優はそれに反応して「あっ、あれ食べたい」と指を伸ばし、食べ物の方へと向かおうとした。
「これから映画館でポップコーン食べるだろう?」と言いつつ、俺は彼女の手を引っ張って連れて行った。手を引かれた美優は、なんだか嬉しそうな顔をしているように見えた。
気のせいかもしれないが、美優が食べ物の誘惑に負けないようにしていた俺たちは、映画館に到着した。「チケット買ってくる」と言って、俺は券売り場まで一人で行き、二人分のチケットを買った。
「ありがとぅ。今回は映画に付き合わせてごめんね。お礼は何がいい?」
「お礼はいらないけど、ま、また来よう。それでいい」
「うん。わかった。約束ね」
俺と美優は映画の開始時刻を確認し、決められたスクリーンへと向かった。俺たちの席はスクリーンの一番後ろだった。美優は少し不満そうだったが、本当は真ん中あたりが良かったらしい。仕方ない、席が埋まっていたのだ。俺は彼女の肩を軽く叩き、「次は早めに予約しような」と笑った。
映画が始まると、俺はワクワクとドキドキでいっぱいだった。隣に美優がいることで緊張していたのかもしれない。俺たちが見ている映画は『きゃめんライダーMovie 誰かを守るために』だ。最近始まったライダーの新作映画で、内容はこうだ。
主人公のタケルは、きゃめんライダーとして活躍していたが、ある日、敵から放たれた一撃から一人の少年を守る。その少年はタケルの意思を継ぎ、新たなきゃめんライダーとして立ち上がり、活躍していくというストーリーだ。
映画を観ながら、俺はふと考えた。自分も誰かを守り、その人が新たな一歩を踏み出すのを見届けることができるだろうか。そんなことを思いながら、美優の方をちらりと見ると、彼女も映画に夢中になっている。
映画が終わった後、美優は興奮気味に話し始めた。「タケルが少年を守るシーン、感動的だったね!」
「ああ、俺もあのシーンが一番好きだ」と俺は答えた。現実では俺は美優を守れるような男でもなく、相応しくないと思ったが、そんなことを言う勇気もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます