第6話たばこ買ってきてBBA事件~禁煙者車でタバコをふかすBBA~

 1993年に私の身に降りかかった三大ミステリー事件?今日はその三部作の完結編である。

 1993年の10月の終わり、仕事で有給が取れたため、日帰りで大分県の佐伯駅まで行こうと思い立ち、自宅から一番近い駅で佐伯駅までの往復切符を購入して、朝一番の電車に乗り込んだ私。本州の西の端目指して揺られて、山陽本線の本州側で一番西に位置するターミナルである下関駅で乗り換え。関門海峡をくぐる415系電車に揺られて小倉までやってきて、ここから日豊本線を南下していく旅となる。普通列車で行くので、途中駅ではにちりん号に何度か道を譲って、さらにあちこちの駅で途中下車を楽しみながら、11時ごろに別府に到着。ここでは後続のにちりんと寝台特急富士を先に行かせるために、20分ほどの停車時間があるため、昼時にかかってくるし、おなかもすいたので何か買おうと思い、駅の売店でお弁当と飲み物を購入して、自分が確保していた座席に戻ろうと、ホームを歩いていると、

「ちょっとちょっと、あんたさぁ、たばこ吸う?」

と、私に話しかけてくるまったく見知らぬBBAが一人。私が

「俺?」

と言う意味で自分の方を指さすと

「そうそうあんた。ねぇ、ちょっとお願いがあるんやけど、私がたばこ買ってる間にこの電車が出発してはいけんから、たばこ買ってきてくれん?」

と言うのである。私は

「なんじゃこのBBA。そんなん自分で買ってくりゃいいじゃん」

と思ったので、

「たばこならそこの売店で売ってたよ。俺は自分の席に戻るから」

と言ってやり過ごそうとすると、いきなりそのBBA、

「何よあんた、私がたばこ買ってきてって頼んでるのに、買ってきてくれんの?」

「たばこならそこで売ってるから、自分で行けばいいじゃん。俺はタバコ吸ったことないし、買いに行くような用事もないから」

と言うと、なぜかそのBBAがヒートアップ。バカでかい声で

「皆さん、この人わねぇ、私がたばこ買って気手って頼んでも買ってきてくれんのですよ。どう思います」

と喚き散らすので、他の乗客がじろじろと私たち二人の方を見るので、

「わかったわかった。買ってくるから金よこせ」

と言って、500円を受け取って、指定された銘柄とお釣りの250円を渡して、

「はい、たばことお釣りね。それじゃあね」

と言いつつ、内心は

「やれやれ、まったく変なBBAに絡まれた」

って思って自分が確保していた座席に戻ろうとすると、そのお釣りの額を見たそのBBAが

「ちょっと、お釣りは300円やないの?」

と言ってくる始末。私は

「あのねぇ。この銘柄は250円なの。500円受け取って、そのお金で買ったから、お釣りは250円でしょうが」

そう告げると

「私がいつも買ってるところは200円やから。あんたお釣りを50円だまし取ろうとしてるんやね」

とまたわけわからんことを言い出すので、私は

「あんたがいつも買う店での値段が200円じゃろうが250円じゃろうが、そんなん知らんがな」

と言うと、またバカでかい声で

「みなさん、この人はねぇ、たばこのお釣り50円を私から騙し取ろうとしてるんですよ~。どう思います~」

と喚き散らしだしたので、再びほかの乗客のじろじろっと私たちを見る視線が…。

私は

「あぁ~もう。わかったよ。50円渡すからもうこれでバイバイね」

そう言って財布から50円玉を取り出して、そのBBAに渡して自分の席に戻ったのであるが、そのBBAがなぜか私の座っているボックスシートの真向かいに座り、禁煙車であるにもかかわらずタバコをふかし始めたのである。私が

「ここは禁煙車じゃから、たばこは吸ってはダメ」

と忠告したのであるが、そのBBAは

「あぁ、いいのいいの。私はいつもこうやって吸ってるから」

「って、どこがいいのやねん。禁煙車で吸ったらだめやろ」

「何よあんた、私に指図するつもり?」

また車内であるにもかかわらず、バカでかい声でわめき散らしそうな雰囲気がありありだったので

「あ、そう。もう俺は知らん」

そう思っていると、今度は私にタバコの吸い方についてレクチャーしだした。

「あのね、私は看護婦やってるからよくわかるんやけど、タバコはね、思いっきり深く吸い込んだらダメなんよ。口に軽く含むくらいで吸うようにせんとね、肺の病気とかになったりするから」

そう言うのであるが、私は生まれてこの方、ただの一度だってタバコを吸ったことがないので、

「そんなん言われてもわかるわけねぇよ」

そう言ったのであるが、そのBBAはもうすでにマイワールドに突入していて、私の話なんか一切お構いなし。私はこのBBAが勤務している病院の行く末が見えたような気がした。

「どんな病院なんやろ…絶対にかかりたくない病院じゃ」

そう思いつつ、列車は先に進んで、やがて大分に到着するアナウンスが流れ始めた。

そのBBAは

「ところであんた、どこまで行くの?」

と聞いてきたので、私は

「大分の先の佐伯まで行くよ」

と告げると、そのBBAが

「そうなん?」

と返してくるので、

「まさかこのBBAも佐伯まで行くって言わんよな?」

と思ったのであるが、そのBBAはどうやら大分で降りるらしい。

「私みたいな大人がついて行ってあげんといけんのやろうけど、世の中変な人が多いから、気をつけて行くんよ」

と言っていたのであるが、このBBA、自分が一番変なんやって気が付いてないんやろうかと思った私である。

「あんたが一番変なんや」

って言ってやろうかと思ったが、そのBBAは大分で降りて行った。そして同席していた初老の男性が

「あんたも災難やったねぇ。何がしたかったんやろうねぇ」

と不思議なものを見たというような顔つきで鶴崎駅で降りて行った。

このBBAのせいで、私は生まれてこの方、初めてタバコと言うものを買いに行った。それも自分が吸うためじゃなく、赤の他人のタバコを買うために…。そして、50円ふんだくられたうえに、知る必要もないタバコの吸い方についてあれこれレクチャーされて、自分が一番変なんだということにも気づかずに、降りてい行った。あのBBA、いったい何がしたかったのだろう。そもそも、自分がたばこ買いにってる間に電車が出発してはいけないから私に買いに行けって、

「じゃあ、俺が買いに行ってる間に出発してもええんかーい」

と思うし、私が500円受け取って、そのままトンズラするということも考えなかったのであろうか。まったくもって、あのBBAの生態は謎である。


以上、1993年私に降りかかった三大ミステリー事件であった。

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