第3話

取り残された私と結衣ちゃん。久しぶりの再会で会話に詰まって部屋は静まり返っていた.......なんてことはなく普通に会話をしていた。

「お姉ちゃん今どこで働いてるの?」

「今は製薬会社だよ。」

「製薬会社。大変そう。」

「うん。だからこれを機に転職しようかなって。」

正直辛かったし転職を考えるラいい機会だろう。

「転職?そんな簡単じゃないでしょ?」

「うん。新しい仕事が見つかるまでは続けるけど。」

「お姉ちゃんがもし職を失っても私はお姉ちゃんを養うからね....」

「そんなことにならないように頑張るけどね。」

流石に高校生に養ってもらうような大人にはなりたくない。

「ふふ。ほんとにお姉ちゃんとまた話せてるのが夢みたい。」

「また?夢じゃないよ。」

「じゃあ確かめさせて。」

結衣ちゃんは立ち上がると私の足の上に私と向かい合うようにして座った。

「大きくなったねぇ。」

私は結衣ちゃんの頭を撫でる。結衣ちゃんは気持ちよさそうに私の肩に顔を擦り付けてきた。しばらく可愛がっていると顔を真っ赤にしながら結衣ちゃんが私から離れた。

「恥ずかしい。」

真っ赤にした顔を隠すかのように手で顔を覆う結衣ちゃんを見てるとこっちも恥ずかしくなってくる。

「そういえば結衣ちゃん。」

「なに?」

「確認するの忘れてたんだけど苗字はどうするの?」

「お姉ちゃんの苗字の姫宮ひめみやにしたよ。そっちの方が嬉しいし。」

「そっか、これからは姫宮 結衣なんだねー。」

私は姫宮を強調しながら言った。

「からかってない?」

「ばれた?」

結衣ちゃんは私の近くにやってくるとぽかぽかと優しく叩いてきた。

(ほんとにかわいいなぁ。)

10年間抑制され続けた結衣ちゃんへの愛がここにきてダムが崩壊したかのごとく湧き出てくる。私は結衣ちゃんを抱きしめて唯ちゃんのドキドキしている鼓動が聞こえる位密着した。

「結衣ちゃんドキドキしてる。」

「お姉ちゃんもでしょ。」

「ねぇそのお姉ちゃんってのやめにしない?」

「なんで?」

「私たち結婚したんでしょ?なら名前呼ぶのが普通じゃない?」

「うぅ......」

「ほら、優奈ちゃんでも呼び捨てにしてもいいよ?」

「ゆ....ゆうな、ちゃん?」

結衣ちゃんは顔を上にして私の目を見つめながら言った。

「よくできましたー!!」

私はさらに結衣ちゃんの頭を撫でる。だめだ私の嫁は可愛すぎる。


しばらくからかっているとまた結衣ちゃんは私から逃げ出してしまった。

「かわいいなぁ。」

この無限に愛が湧き出てくる感じ、幸せだなぁ。

「結衣ちゃん。おいでー。」

部屋の隅に逃げてしまった唯ちゃんを呼ぶ。

結衣ちゃんはじりじりと警戒しながらも近づいてきてくれた。私はポンポンと自分の膝の上を叩くと結衣ちゃんは顔を赤らめながらも近づいてちょこんと座ってくれた。

(ほんっとにかわいいなこの子。)

正直結衣ちゃんが小さい頃は恋愛感情をこんな小さな子に抱くわけがないと思っていたが成長した結衣ちゃんはこれ以上ないほど私の好みドストライクでかわいすぎる。無限に好き。

「結衣ちゃん?」

「なに?」

「同棲だから役割分担を決めたいんだけど結衣ちゃんて家事できる?」

「できるよ。いっぱい花嫁修業してきたから。」

結衣ちゃんは自慢げに言う。

「じゃあ私の好きな料理も作ってくれるの?」

「甘いオムライスでしょ?」

「覚えててくれてるの!?」

「もちろん。」

驚いた。オムライスが好きって話は10年前にした話なのに覚えていてくれたのか。

「いまも好きなのかわからないけど。」

「いまも大好きだよー。」

「良かったぁ。」

嬉しくて足に座っている唯ちゃんを軽く抱きしめる。

「だからむしろ私が多めに家事をしたいんだけど。おね...ゆうなちゃんはお仕事で忙しいんだし。」

「でも私は大人だからなぁ。」

「その前に私たちは婚約者でしょ。助け合っていかないと。」

「確かにそうだね。」

「うん。そういうこと。」

そう言って結衣ちゃんは足から降りてしまった。そしてそのまま私の方を向いて座った。

「それで優奈ちゃんに話さなきゃいけないことがあるんだけど。」

結衣ちゃんは真正面から私を真剣な顔で見つめてきた。

「どうしたのそんな真剣な顔して。」

「こっちに来て。」

結衣ちゃんは立ち上がると三つあるうちの一つの部屋のドアを開けてその中に入って行った。私も結衣ちゃんに続いて部屋に入る。結衣ちゃんが部屋の電気をつけるとそこには大きなパソコンと机の上にはモニターが二つ置かれていた。

「なんかすごいね。配信者みたい。」

昔見ていた配信者の配信環境みたいだ。よく見るとカメラも置いてあった。

「よくわかったね。そう、私は配信をしてるんだ。」

結衣ちゃんは椅子に座りながらそう答えた。

「配信と言っても顔を出してるわけじゃないんだけどね。Vtuberって知ってる?」

「見たことある。なんか絵と動きがリンクしてるやつだよね?」

「そんな感じ。私はそれをやってるんだ。」

「へー。結衣ちゃんは声かわいいし人気あるんだろうな。」

「まあそこそこって感じなんだけどね。」

結衣ちゃんはそう謙遜していたが結衣ちゃんに人気が出ないなら見る目が無い。

「じゃあ配信してるときは静かにしてた方がいい?」

「いや、それよりも優奈ちゃんがよければ配信に出てほしい。」

「え、えええええええ。」


「そんなに驚くこと?」

「いや、でも私なんかが出ていいの?そういうのってなんかいろいろ設定とかあるでしょ?それに素人が出ていいものなの?」

「まあいろいろあるんだけど。でもたまに配信で優奈ちゃんの話してたから出てくれたら嬉しいんだけど....だめ?」

結衣ちゃんは上目遣いでおねだりしてきた。

「い、いいよ。」

上目遣いの結衣ちゃんに逆らえるわけもなく私は承諾してしまった。このことが私の未来を大きく変えることも知らずに。

「それで配信はいつやるの?私普段は仕事あるから配信に出られないけど。」

「一応土日とどこかの平日の夜に配信してるかな。たまーにやらないときもあるけど。」

「じゃあ今日は配信するの?」

今日は土曜日だったはずだ。

「そのつもり。」

「じゃあご飯先に食べちゃおっか。」

「うん!私が優奈ちゃんの胃袋を掴んであげる!」


キッチンに移動すると結衣ちゃんは冷蔵庫を漁り出した。

「冷蔵庫になにか入ってるの?」

今日引っ越してきたばかりだし何も入ってないのではないか?

「お母さんたちが買ってきてくれてるはずだよ。ほら。」

結衣ちゃんは冷蔵庫を漁りながら野菜を手に持って見せてきた。

「ほんとだ。」

「今日は私が作るから優奈ちゃんは座ってて。」

「手伝うよ。助け合いでしょ?」

「いいのに.....」

結衣ちゃん主導でクッキングが始まった。料理は得意だが最近は仕事でまともに料理をしていなかったからちゃんと料理するのは久しぶりだ。

「今日は何を作るの?」

「今日はオムライスとポテトサラダとオニオンスープを作るよ!」

「おーちゃんとしてる。」

「おね...優奈ちゃんはポテトサラダを作ってくれる?」

「はーい。」

私はポテトサラダに必要な材料を冷蔵庫から取り出して調理を開始した。

(結衣ちゃん手際良いな。)

ポテトサラダを作りながら横で卵を焼いている結衣ちゃんを見るとチキンライスを作りながら綺麗に卵を巻いてアーモンド形のオムレツにした。あれ前失敗してからやってないんだよな。

「料理うまいね。」

「えへへ。いっぱい練習したから。優奈ちゃんに食べてもらうために。」

結衣ちゃんは少し恥ずかしそうに言う。私もこんな歯の浮いたようなことを言われて恥ずかしいんだが!?

そのあとスープを作ってテーブルに並べた。

「美味しそう!」

「冷めちゃう前に食べちゃおう。いただきます。」

「いただきます。」

スプーンで卵とチキンライスを一緒に掬って食べる。卵の甘さが程よくて美味しい。

「美味しいよ。」

「良かった。優奈ちゃんのポテトサラダもおいしいよ。」

「ありがと。」

私はいつもそこまで量を食べないのだが結衣ちゃんのご飯が美味しくてすぐに食べ終わってしまっておかわりまでしてしまった。

「ごちそうさま。美味しかったよ。」

「良かった。料理を修業した甲斐があったよ。」

食器やフライパンを洗いながら結衣ちゃんに聞く。

「お風呂先に入っちゃう?」

「あー、うん。そうしよっかな。」

「はーい。」

お風呂をセットするボタンを押す。

食器を洗い終わって水切りカゴに食器を並べてソファーに座ってテレビを見ている結衣のとなりに行く。

「お皿洗いありがと。」

「はーい。」

私もソファーに座ろうとするとお風呂が沸いたことを知らせる音声が流れた。

「お風呂先に入る?」

「うん。」

ゆいは立ち上がってリビングから出て行った。がすぐに戻って来た。

「なにか忘れ物?」

「ううん。ねぇ優奈ちゃん。」

「なぁに?」

「お風呂一緒に入らない?」

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おおきくなったらお姉ちゃんと結婚する!と言っていた隣の家の子が綺麗になってしかも婚約届を持ってやってきた件 緩音 @yurune

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