話をしようよ
――私と話したい?
それはそれは、また奇特な。
私のことを知っているだろう? そのうえでのお誘いかい?
ふふ、君はなかなかにチャレンジャーだね。チャレンジャーと言っても
おっと脱線してしまったね。
こほん。さて、なにを話そうか?
正直に言って、私はあまり話し上手ではない。
むしろ、下手な部類と言っていいだろう。
数少ない――ありがたいことにこんな私にも居るのだ――友人に言わせると、
「あんたさぁ、意識してないんだろうけど、人の神経逆なでするようなこと言うからねぇ……」
らしい。
興が乗ると饒舌になるのは自覚しているが、そこまでひどい言葉は使っていないつもりなのだが。
「
と言って、幾つかの具体例を挙げてくれた。
……いやぁ、ひどかったね。
悪質な言動で、とても心ある人の放つ言葉ではなかったよ。
友人にはひと言も返せなかったね。
……いい友達だって?
ありがとう。それは最上級の褒め言葉だ。
自分で言うのもアレなのだが、なんの見返りもなく、ただ寄り添ってくれる彼女らは、私にとって掛け替えの無い存在なのだよ。
自分のことを褒められるよりも数億倍嬉しい。
で、君は私となにを話そうというのかな?
先ほど告げたように、無自覚で人を傷つけるような傾向のある私と?
……他愛のない話? 特に意味のない会話を求むというのかね?
ますます奇特だねぇ。
そんなことをして、君になんの利があるというのかな?
ある? ほぅ、それはそれは。
どんな利が得られるというのか、興味がわいてくるね。
なに? 私のことを知れる?
それが君にとっての利になる?
――わからないな。
私という人間の諸元など、教諭陣に頼めば幾ばくかは聞かせてもらえるであろう?
まぁ、もちろん個人情報の詳しいところは教えてはもらえないだろうが、いくらかを知ることはできるはずだ。
ふむ、私本人の口から聞きたい、知りたいと?
名も、所属も学業の成績もそれなりに知られていると思っていたのだが、それはうぬぼれだったかな?
「会話を重ねることで私の人となりを知りたい」と?
他愛が無ければ無いほどいい?
……変な奴だなぁ、君は。
変な奴は嫌いではないぞ、うん。ありきたりすぎるより、興味が持てる。
うん、私は君に興味がわいた。
……なんだい、その嬉しげな顔は?
私に興味を持ってもらえて嬉しいと?
はは、私なんぞに興味を持たれたら、嫌がる人間の方が多かったがね。
怪しげな実験されるだの、解剖されるだの、改造人間にされるなんてのもあったな。
全く失礼だ。少しばかり調べさせてもらおうとしただけなのにな。
純粋に知りたかっただけなのだが……理解されないというのは悲しいものだ。
ふむふむ、君も純粋に私のことを知りたいだけ?
む……ぅ。
ひとつ訊きたい。
なにゆえに君は私のことを知りたがる? 私に興味を持つ?
好意?
好意とは、つまり……。
あ、いやいやいやっ。
そ、それは、なにかの気の迷いだ。
わ、私のような者にそんな気持ちを抱くなぞ、君、どうかしてるぞ。
え、気の迷いかどうかはこれからたくさん話し合いましょう?
あ~……退きそうにないね。
いいだろう。君のその気持ちは一時の間違いなのだとわからせてあげようじゃないか。
じゃあ、まずは自己紹介からだな。
私の名は……。
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