第58話 二人の行方
急いでギルドから出て、二人でミラの行方を捜しに行く。
ミラはカレンを探しているはずだ、そうなればカレンがどこに行ったのか分かれば、そこにミラも居るはずだ。
だが、何処を探せばカレンを見つけられる。もしも、危険な場所に神父が行っていたとしたら、二人だけじゃ危険だ。
急いで二人を見つけて、止めないとな。
カレンの情報では神父がどこに行ったのか分からない。
そのせいで、俺たちも彼女がどこに向かうのかが全く見当もつかない。
このままここで考えても分かりっこない、とりあえずカレンに関わりのある教会に行ってみるか。
今は、時間が惜しい。……動きながら考えるしかない。
「ケドラ、ひとまず教会に行ってみるぞ」
「はい!」
頭の中で、カレンの発言を思い出しながら教会に向かって走り出した。
カレンたちが居ないか、辺りを見渡しながら走る。
しかし、教会に着くまでの間に彼女たちの姿を見かけることは無かった。
ミラはともかく、カレンに関してはギルドを出て行って結構な時間が経っている。
カレンは見つけられなくとも、ひとまずミラを見つけられればいいんだが。
頼む、教会の中に居てくれ。
俺たち教会の扉の前に着くと息を切らしながら、教会の扉を開く。
ここにミラが居るかもしれないという、淡い期待を抱きながら中を確認する。
しかし、少ない蝋燭の明かりが無人の教会を照らしている。
「ミラ! カレン! 居たら返事してくれ!」
「ミラ! 隠れてないで、出て来いよ!」
俺たち二人の呼びかけは、誰も居ない教会内に虚しく響き渡る。
その後も、何度か呼びかけながら教会内を捜索するが、彼女たちがここに居る気配が無い。
くそ、ここには居ないか。ここに来るまでに結構時間食っちまったな。
カレンたちが見つからずとも、教会に来ている誰かから何か情報を聞けたらいいと思っていたが、結果は空振りに終わった。
「カレンさんは、神父様が買い物に出かけたって言ってましたし、市場に行ったんじゃないですか?」
次の行き先を考え、教会の長椅子に座り頭を悩ませていると、ケドラが思い出したかのようにそう話す。
ケドラの言うように、市場に向かった可能性があるかもしれないとは思った。
だが、市場にはカレン自身が一度向かっている、そこで成果が得られなかった以上、他の場所を捜索すると思っていた。
結果として、教会が空振りに終わった以上、情報として残されているのは市場しかない。
一度、市場に行ってみるか。人通りも多い、もしも彼女達が付近を通っていれば誰かが目撃しているかもしれないしな。
「そうだな。市場に向かうぞ、ケドラ」
「はい! 行きましょう!」
俺たちは来た道を急いで引き返し、市場に向かった。
市場に到着してすぐに、彼女たちの捜索を開始した。
市場はいつも通り、沢山の人で賑わっている。
行き交う人々の顔を確認しながら、走り回る。
あの女性は、髪が金色だが格好が違うな。
あっちの子は、いや、違うな。
ちくしょう、このまま目視で探し続けても埒が明かない。
露店の店主たちに話を聞いて回るか。
そう思い、近くに居る肉屋の男店主にカレンたちを見ていないか確認する。
「なぁ、悪いが金髪で黒い大剣を背負った修道女か、桜色の髪をした少女を見てないか?」
「悪いが見てねぇな。それより、肉を買って行かねぇか?」
「そうか分かった。すまねぇが、今はそんな暇ないんだ」
「んだよ、買わねぇなら、早くどっか他所に行ってくれ」
肉屋の店主は客ではない事が分かると、不機嫌そうに俺たちを追い払う。
ここの店主は見ていないと言っていたが、誰かほかの人なら……。
その後も、一軒ずつ店を回る。
15店舗ほど回った頃、ついに手掛かりが掴める。
武具屋の男店主が、彼女たちが斜め前の宝飾店の女性と話しているのを見かけたそうだ。
彼曰く、カレンを見たのは一時間程前で、女店主と話した後、丁寧にお辞儀をして何処かへ向かったそうだ。
その20分後にミラが同じようにやって来て、何やら焦った様子でカレンと同じ方向に向かって走っていったそうだ。
ようやく、手掛かりが掴めたな。
急いで女店主に彼女たちの行き先を確認しよう。
俺とケドラは武具屋の男に礼を伝え、斜め前の宝飾店に向かう。
宝飾店には、様々な色の煌びやかな石の装飾品が大量に並べられている。
装飾品の棚の後ろには、ふくよかな濃い化粧の女性が立っている。
「あら、いらっしゃい。誰かに贈り物かい?」
「悪い、買い物が目的じゃねぇんだ。40分くらい前に桜色の髪の女の子が来なかったか? それと、金髪の修道女」
「ミラちゃんと、カレンちゃんの事かい? 二人は一緒では無かったけど、来たわねぇ」
「どこに行ったか教えてくれないか?」
「教えるのは構わないけど、何か買ってくれたら考えてあげるわよ。今日は来る客みんな、何も買わずに情報だけ寄こせって言うばかりで困ってるのよ」
彼女は真剣な表情で、交換条件を提示してきた。
商人相手に、情報だけ寄こせと言っても、そう簡単には渡してくれないよな。
ここは、何かを買って、早く情報を貰うとするか。
だが、決して裕福な訳ではないんだ、出来るだけ安い奴を……。
棚に並べられた装飾品を隅から隅まで確認する。
この緑色の石があしらわれたネックレスは、と、金貨一枚だと!?
とてもじゃないが、こんな高価な物は買えん。
他にも並べられた商品を確認するが、どれも手が届かないほど高価な物ばかりだった。
どれもこれも、高すぎるだろ。ひとつ買うだけで破産しかねない値段だ。
値段の高さに驚きつつ、他の商品も隈なく確認していく。
これは、どうだ? 薄い赤色の加工された石が光り輝く腕輪の値札を確認する。
銀貨2枚だと? 何故、こんなに安いんだ。
いや、そんな事を考えてる暇はない。確認した中でこいつが最安値だ、これを買うとしよう。
「こいつをくれ」
「はぁ、一番安い奴を買うのかい。まぁ、でも買い物をしてくれた事に変わりない、教えてあげるわ」
赤い石の腕輪を指さす俺に、ため息をつく店主は少し不満そうではあったが、ミラたちの情報をくれた。
正確には、ミラたちの行方もそうだが、神父の行方と行った方が正しい気がする。
カレンに、神父の事を聞かれた女店主は、一週間ほど前に神父が店に訪れていた事を伝えたそうだった。
神父は、誰かに贈り物をする為に、宝飾品を探しに来ていたらしい。
その注文は、特定の石で出来た宝飾品は無いかというものだった。
女店主は神父にその特定の石をあしらった宝飾品は無い事を伝えた。
それを聞いた神父はがっかりした様子で、独り言を呟きながら店を後にしたそうだ。
「なぁ、その特定の石ってのは何の石なんだ?」
「近くのほら、なんていうのか分からないけど、何とか遺跡? 名前は分からないけど、そこで取れる石らしいわ」
何とか遺跡? 近くに遺跡なんかあったのか? 俺も知らない場所だ。
だが、店主の話を聞く限り、その遺跡に神父が向かった可能性が高い。
この情報を知った二人も、きっとそこに向かっているはずだ。
だが、肝心の遺跡の場所が分からねぇ。
困り、頭を悩ませていると、後ろで話を聞いていたケドラが口を開く。
「その遺跡の事なら、俺知ってますよ!」
「本当か?」
「はい! 場所は分かるので行きましょう!」
こうして、俺とケドラは急いで遺跡の元へと向かう。
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