第二十一話

 よし、シオンさんは完全に戦う気になった。僕も一緒いっしょに戦うぞと決心けっしんしたが、先に攻撃してきたのはドラゴン・ロードだった。

「たかがエルフと人間の分際ぶんざいでー! これでもらえー!」


 ドラゴン・ロードは口から、真っ赤な大きな火の玉をいた。それを喰らってしまった僕たちは、大ダメージを受けた。でも僕は、余裕よゆうだった。これくらい、回復できる! 僕は体力を大きく回復させる魔法を、僕たちにかけた。


 ハイ・リカバリー! ハイ・リカバリー! ハイ・リカバリー!


 するとシオンさんは、レイピアをかまえた。

「ありがとう、純貴じゅんき君!」


 そしてジャンプして、ドラゴン・ロードの左肩ひだりかたりかかった。だがドラゴン・ロードに、ダメージは無いようだ。

「グハハハハ! そんな攻撃は、我のかたいウロコがふせぐ!」


 そしてドラゴン・ロードは、後ろをり向いた。すると長くて太いシッポが、僕たちをおそった。シッポにたたきつけられた僕たちは、部屋のかべまで飛ばされた。でも、まだだ。まだ僕たちは、戦える! 僕は魔法を、となえた。


 ハイ・リカバリー! ハイ・リカバリー! ハイ・リカバリー!


 するとシオンさんは今度は、ドラゴン・ロードのはらを斬った。だがドラゴン・ロードは、余裕だった。

「グハハハハ! そんな小さなダメージでは、われは倒せんぞ!」


 それを聞いたシオンさんは、答えた。

「でも、ダメージは与えられたようね。やはりウロコが無い腹なら、ダメージを与えられるようね……」


 そして直道なおみちに向かって、さけんだ。

「直道君! このレイピアに、パワー・ソードの魔法をかけて!」

 すると直道はすぐに、けん攻撃力こうげきりょくを上げる魔法を三回かけた。


 パワー・ソード! パワー・ソード! パワー・ソード!


 シオンさんは攻撃力が四倍になったレイピアで、ドラゴン・ロードの腹を攻撃した。右から左に回転して、そのいきおいで何度も斬った。


 ストーム・スラッシュ!


 するとこの攻撃は、ドラゴン・ロードに大ダメージを与えたようだ。

「くっ、エルフの小娘こむすめがああああ!」


 次の瞬間しゅんかん、ドラゴン・ロードのツノが光った。するとこの部屋の壁にある岩が、次々とドラゴン・ロードの表面ひょうめんにくっついてよろいのようになった。だがシオンさんはもう一度、斬りつけた。


 ストーム・スラッシュ!


 しかし今度は、ドラゴン・ロードは余裕だった。

「グハハハハ! そんなほそい剣の攻撃では、岩は斬れんぞ!」


 そして何とドラゴン・ロードは、自分にくっついている岩を部屋中にはじき飛ばした。無数むすうの岩のかたまりが飛んできて、僕たちはそれをよけきれなかった。僕たちは深刻しんこくなダメージを受けて、その場にたおれた。


 く、くそっ。僕たちは、ここまでなのか。やっぱりドラゴン・ロードを倒すのは、無理むりなのか。エルフのさとまもれないのか。そして僕と直道は、地球に帰れないのか?……。


 ふと見るとドラゴン・ロードのツノがまた光り、壁の岩が再び鎧のようにくっついた。ダメだ、このドラゴン・ロードは強すぎる。勝てる気がしない……。


 そうして心がれそうになったが、僕は体に違和感いわかんを感じた。新しい力を手に入れたような、違和感を。これは多分たぶん、僕のレベルが上がったんだ。あんなに強いドラゴン・ロードに大ダメージを与える戦いを見ていたから、僕のレベルが上がったんだ。そして新しい魔法を、おぼえたんだ。


 それは体力を、完全回復かんぜんかいふくできる魔法のような気がした。そして僕は、シオンさんの体力を完全回復させようとした。でも、考えた。ダメだ。シオンさんが戦えるようになっても、シオンさんの攻撃は今のドラゴン・ロードにはつうじない……。それなら……。


 僕は必死ひっしに、直道に聞いた。

「おい、直道。大丈夫だいじょうぶか?」


 すると、弱弱よわよわしい声がかえってきた。

「あ、あんまり大丈夫じゃない……」

「でも直道。体に違和感を感じないか? 自分のレベルが上がったような、違和感を」

「違和感? なるほど、そういえば新しい魔法を覚えたような違和感があるよ……」


 僕はそれを聞いて、直道にかけることにした。直道に体力を完全回復させる、魔法をかけた。


 グレート・リカバリー!

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