地下四階

第十五話

 地下四階の印象いんしょうは、他の階と違っていた。他の階のかべ表面ひょうめんはゴツゴツとした岩だったが、ここはたいらだった。まるで四角い正方形の岩を、かさねて作られたようだった。


 でもそこから出てくるモンスターは、強かった。太って二本脚にほんあしで立っているブタのようなモンスターだけど、武器として持っているヤリがやっかいだった。


 僕たち三人がダンジョンの中を歩いていると壁から突然、ヤリが飛び出す。それを前に移動いどうしてかわすと、さらに壁からヤリが飛び出してダメージを受けた。


 右の壁から飛び出したヤリを左に移動してかわすと、今度は左からヤリが飛び出してダメージを受けた。シオンさんの説明だとこのモンスターは、オークだそうだ。そしてやはりオークも三体さんたいづつ壁からあらわれるので、このような攻撃ができるようだ。


 オークは力が強くヤリの攻撃を受けると、大きなダメージを受けた。それでもシオンさんは反撃はんげきしたがオークの体力は多いらしく、五回ほど攻撃しないとたおせなかった。


 なのでシオンさんを援護えんごするために直道なおみちは、サンダーの魔法を使った。そうするとシオンさんが三回ほど攻撃するだけで、倒すことができた。僕はつえで攻撃してみたが、ほとんどダメージを与えられなかった。


 なのでレイピアで攻撃するシオンさんとサンダーの魔法で攻撃する直道がダメージを受けた時は、僕は体力を回復させるリカバリーの魔法を使って二人を援護した。


 でもやっぱり三体のオークとの戦いは、きつかった。ヤリで攻撃されてシオンさんは、ドンドン体力をうしなった。更に直道は、ピンチだった。サンダーの魔法でシオンさんを援護していたから、魔力をドンドン失った。


 オークにはサンダーの魔法は良くいたので、直道もオークに攻撃された。そして魔力だけでなく、ダメージを受けて体力もドンドン失った。


 更に僕も、大変だった。そんな二人の体力をリカバリーの魔法で回復させるんだけど、僕の魔力も無限むげんではない。つまり僕の魔力も、ドンドン失われた。


 なのでこの地下四階で僕たちは数回、休んだ。ダンジョンのゆかぬのいて、そのまわりに聖水せいすいをかけてオークが現れないようにして。聖水の力は絶大ぜつだいで布の周りにまいただけだけど、布にオークが近づかないだけでなくダンジョンの壁からオークが現れることも無かった。


 だから僕たちは安心して横になって、体力と魔力を回復させた。そしてまた現れる強いオーク三体を倒しながら、地下四階を進んだ。


 でも僕はこのキツイ戦いを何度もかえしたので、ステータス・ペーパーを見るのが楽しみだった。きっとレベルも大幅おおはばがって、たくさん魔法をおぼえることを期待きたいした。


 それはシオンさんも考えていたようで、「さあ、こんなに強いオークをたくさん倒したんだから、きっとレベルは大きく上がっているわよ。だからステータス・ペーパーを見ることを楽しみにして、今はがんばって!」と僕たちをはげましていた。


 僕もきっとそうだろうと思ったので元気に、「はい、がんばります!」と答えていた。直道はサンダーの魔法を使って魔力を減らし、またオークのヤリで攻撃されて体力を減らしていた。


 直道にとってオークとの戦いは、ツラかっただろう。もちろん僕はそんな直道に、リカバリーの魔法をかけていた。


 するとやはり僕も、魔力を減らしていた。リカバリーの魔法をかけるのは直道だけではなくシオンさんもなので、やはり僕の魔力も大きく減ってつかれを感じていた。


 なので布の上で横になって休んでいる時に、にくをシオンさんからもらった時はうれしかった。食べてみると鶏肉とりにくのような味がしたのでシオンさんに聞いてみると、やはりこれはエルフのさとの近くにある山でエルフの猟師りょうしつかまえた山鳥やまどりの肉を干して保存食ほぞんしょくにしたモノだそうだ。


 その干し肉を食べながらポーションを少し飲むと、何だか生き返るような気がした。


 そうして何度も強いオークと戦い、休んでまた戦うことを繰り返しているとステータス・ペーパーを見る時がきた。シオンさんはバックパックからそれを出すと、僕をかした。

「さあさあ、純貴じゅんき君。君のステータス・ペーパーを見せてよ!」


 なので僕は早速さっそく、ステータス・ペーパーをひろげてみた。するとかび上がった文字は、『神官しんかん レベル10 プロテクション リカバリー バリア ハイ・リカバリー』だった。ハイ・リカバリー? それが分からなかった僕は、シオンさんに聞いてみた。するとシオンさんは、よろこんだ表情で答えた。


「ハイ・リカバリーっていうのはね、リカバリーよりも多くの体力を回復させる魔法なの。助かるわー、純貴君がハイ・リカバリーの魔法を覚えてくれて! これでモンスターとの戦いが、楽になるわ!」


 なるほど、そうなのか。そして僕は、レベルが10に上がったことに注目ちゅうもくした。やはり強いオークをたくさん倒したことで、レベルが一気いっきに三つも上がった。


 レベルが上がると体力や魔力もえるそうだから、やっぱり戦いは有利ゆうりになるだろう。もちろん、このダンジョンの調査にも有利になるだろう。


 そして次は、直道がステータス・ペーパーを見た。浮かび上がった文字は、『魔法使い レベル10 ファイア アイス サンダー パワー・ソード』という文字だった。直道は、シオンさんに聞いた。

「あのー、シオンさん。パワー・ソードって何ですか?」


 するとやはりシオンさんは、喜んだ表情で答えた。

「やったー! パワー・ソードの魔法を覚えてくれたんだ! パワー・ソードっていうのはね、その魔法をかけると剣の攻撃力ががるの。一度かけると、剣の攻撃力が二倍になるの。二度かけると三倍、三度かけると四倍になるっていう、とてもありがたい魔法なの!」


 そしてシオンさんのテンションは、一気に上がった。

「ハイ・リカバリーとパワー・ソード! この二つの魔法が使えるのは、大きいわ! これでモンスターとの戦いが、一気に有利になるわ! もしかしたらドラゴン・ロードが復活していても、倒せちゃうかも!」

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