第十四話

 すると直道なおみちは、こくりとうなづいてさけんだ。

「シオンさん、三つの大きなツララが無くなった今がチャンスです!」

「もちろん!」


 シオンさんはレイピアをかまえると、ジョノリにりかかった。だがジョノリは、両手をき出して魔法を使った。


 それはキラキラとかがやく、氷の全体攻撃だった。僕は、大ダメージを受けた。シオンさんも、同じようだ。くっ、あれは直道のほのおかたまりの魔法でも、消滅しょうめつさせられないだろう。どうする?! すると直道は、叫んだ。

純貴じゅんき君、僕にバリアの魔法をかけて!」


 え? 何で? 僕は一瞬いっしゅん、直道が何を考えているか分からなかった。でも僕は、直道を信じた。今の直道なら、何かをやってくれるはずだ! だから僕は、攻撃魔法などのダメージをらす魔法を直道にかけた。


 バリア!


 すると何と直道は、ジョノリの前に立って両手をひろげた。あぶない、直道! また氷の全体攻撃をらってダメージを受けるぞ! でもジョノリの攻撃を受けても、直道のダメージは少ないようだ。すると直道は再び、シオンさんに叫んだ。

「今です、シオンさん! 攻撃魔法を使ったあとのジョノリに、スキができました!」


 シオンさんは「はああああ!」とたけびをげ、レイピアで無数むすうきをはなった。


 サウザンド・ヒット!


 それを喰らったジョノリは大ダメージを受けたようで、消滅した。か、勝ったのか、僕たち。あの、強いジョノリに……。僕は本気で、よろこんだ。

「やったー! 勝ったぞー! 地下三階のボスを、たおしたぞー!」


 するとシオンさんと直道は、僕に振り返り微笑ほほえんだ。それを見て僕はさらうれしくなったが、一つ疑問があった。どうして直道はジョノリの全体攻撃魔法に、ほとんどダメージを受けなかったんだ? 聞いてみると、直道はれくさそうに答えた。


 まず考えたのは、僕が魔法使いだっていうこと。シオンさんから魔導士まどうしには、あまり攻撃魔法はかないって言われたことを思い出したんだ。それなら魔法使いの僕も、ジョノリの攻撃魔法はあまり効かないんじゃないかって思ったんだ。


 それに純貴君からの攻撃魔法などのダメージを減らす、バリアの魔法をかけてもらった。それで僕にはジョノリの全体攻撃の、氷の攻撃魔法もあまり効かないんじゃないかと思ったんだ。そして攻撃魔法を放ったあとのジョノリに、スキができると思ったんだ。


 それを聞いて、僕は素直すなお感心かんしんした。すげえ、やっぱり直道って、頭いいー! そして喜びのあまり僕は、直道にきついた。

「すげー、直道! お前やっぱ、頭いいな! いや、天才だ!」


 すると直道は、ますます照れた表情になった。

「いやー、それほどでも……」


 でも直道は、シオンさんに聞いた。

「あの、シオンさん。今回、僕はシオンさんの役に立てたでしょうか?……」


 すると抱き合っている僕たちに、更にシオンさんが抱きついてきた。

「当り前でしょう、直道君! この地下三階のボス、ジョノリに勝てたのは直道君のおかげよ!」


 するとやはり照れながらも直道は、ハッキリとげた。

「そうですか。それなら僕も嬉しいです、シオンさん。そして純貴君も、ありがとう……」


 僕はちょっと、わけが分からなかった。すると直道は、僕に告げた。

「ジョノリの全体攻撃の氷の攻撃魔法で、ほとんどダメージを受けなかったのは純貴君のバリアのおかげだよ。ありがとう……」


 そうか、そういえばそうだった。でもやはり今回、ジョノリに勝てたのは直道が活躍かつやくしたからだと思う。それにギクシャクしていた僕と直道の関係も、良くなったような気がする。僕にとってそれは、ジョノリを倒したことよりも嬉しかった。すると僕たちを抱きしめたまま、シオンさんは叫んだ。

「ホントに君たちって、最高ー!」


 喜んでいるシオンさんを見て僕は嬉しかったし、直道も嬉しそうな表情をした。そして直道は、僕に告げた。

「今までゴメン、純貴君。僕はこんな状況じょうきょうになったことを、純貴君のせいばかりにしてきた。本当は一緒いっしょあなに入った、僕にも責任せきにんがあるのに。そしてシオンさんの役に立てない僕は、純貴君に嫉妬しっとしてた。本当は僕も勇気を出して、戦わなきゃならなかったのに……。でも、もう大丈夫。僕はこのシヴァとの戦いで、自信じしんを持つことができた。だから純貴君……」


 直道の言葉は、そこで止まった。続きを聞きたかった僕は、次の言葉をうながした。

「だから何だよ、直道?」


 すると直道は、僕の目をっすぐに見つめて告げた。

「このダンジョンでドラゴン・ロードが復活しているかどうか、ちゃんと調べよう。そしていずれはドラゴン・ロードを倒して、地球に帰ろう。もちろん、僕と純貴君で一緒に。いいかな……」


 それを聞いて、僕は確信かくしんした。僕たちは絶対に、地球に帰れると。だって、こんなにたよりになる直道が、本気を出したから。だから僕は、直道に告げた。

「もちろんだ、直道! 一緒に地球に帰ろうぜ!」


 そして力一杯、抱きしめた。直道が、「うぎゃー、苦しいよ、純貴君!」と悲鳴ひめいげるほど。それを見ていたシオンさんは、今まで見たことが無いほど微笑んでいた。

「よーし、私たち三人が力を合わせれば無敵むてきよ! 絶対にドラゴン・ロードのことを、調べましょう! さあ、地下四階に行くわよ!」


 僕と直道は、同時に右手を上げた

「「おー!」」


 そして僕たちは、地下四階にりる階段を下りた。

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