第十一話

 でも直道なおみちは、前かがみになったままガクガクとふるえていた。くっ、ダメか。直道は完全に、ホーン・ノマーにおびえている。


 ハッキリ言って、僕もホーン・ノマーに怯えている。でも僕はもう、決めていた。直道と一緒に、地球に帰ることを。それならどうするかと素早く考えた僕は、シオンさんに攻撃魔法などのダメージをらす魔法をかけた。


 バリア!


 ハッキリ言ってホーン・ノマーをたおせるのは、シオンさんしかいない。それならまずシオンさんが受けるダメージを、少なくする必要があると考えたからだ。するとシオンさんは、たけびをげた。

「はああああ!」


 そしてその場で右から左に一回転いっかいてんしていきおいをつけて、ホーン・ノマーの右脚みぎあしりつけた。

 

 スピン・スラッシュ!


 するとホーン・ノマーは右脚に大ダメージを受けたようで、右ひざがゆかについた。体勢たいせいくずれたホーン・ノマーのはらは、シオンさんの目の前にあった。僕は思わず、さけんだ。

「いけー、シオンさん!」


 するとシオンさんはもう一度、一回転してホーン・ノマーの腹を斬った。


 スピン・スラッシュ!


 するとホーン・ノマーはグオオォォという叫び声を残して、消滅しょうめつした。か、勝った……。僕は思わず、シオンさんにってきついた。

「か、勝った! 僕たち、勝ったよ!」


 するとシオンさんは温かい目をして、僕の頭をなでてくれた。

「ありがとう、純貴じゅんき君。本当にありがとう……」


 少しの間そうしていると、僕の興奮こうふんもおさまった。そして、シオンさんに聞いてみた。

「大丈夫、シオンさん? 回復魔法を、かけてあげようか?」


 でもシオンさんは、顔を左右にった。

「いえ、それはいいわ。あまり魔法を使うと、純貴君が疲れちゃうから。っていうか、純貴君は大丈夫だいじょうぶ?」


 それを聞いて、僕は気づいた。僕も相当そうとうつかれていると。多分たぶん、今のままでは魔法は使えない……。するとシオンさんは、提案ていあんした。

「ここで、ちょっと休みましょう!」


 そう言ってホーン・ノマーと戦う前に床に置いた、バックパックから二つの荷物にもつを出した。その内の一つは大きなぬので、シオンさんはそれをゆかに広げた。

「さあ、ここで横になって、みんなで休みましょう!」


 なるほど、こうやって休むのか。それでも僕には、ありがたかった。魔法を使いすぎたせいで、すごく疲れていたから。でも一つ、疑問ぎもんがあった。なので、聞いてみた。

「あのー、シオンさん。ここで休んでいる時、モンスターにおそわれたりしないでしょうか?……」


 するとシオンさんは、笑顔で答えた。

「それは、大丈夫!」


 そう言ってもう一つの荷物を、手に取った。それはポーションのようなモノだったが、金色だった。シオンさんはフタを開けると、中身を布のまわりにまき始めた。

「あのー、それは何ですか?」

「これは、聖水せいすいよ。こうしてまいておけば、モンスターは近づいてこないの」


 なるほど。確かにそれなら、安心あんしんして休める。そしてシオンさんはさらに、この大きな部屋の入口に聖水をまき始めた。うん、これならモンスターはこの部屋に入れないだろうから、更に安心だ。


 そして布にシオンさん、僕、直道の順に横なった。うん、こうやって横になるだけで、疲れが取れる……。少し疲れが取れた僕は、シオンさんに聞いてみた。

「あの、シオンさん。ちょっと聞いてもいいですか?」


 するとシオンさんは、体を半回転はんかいてんさせて僕の顔を見た。

「何、純貴君?」

「あの、ホーン・ノマーのことをエレメント・モンスターって呼んでたんですけど、それって何ですか?」


 するとシオンさんは、説明してくれた。エレメント・モンスターは、エレメントの力を持つモンスター。エレメントとはこの世界のもとになっている、火、水、風などのこと。そんな力を持っているから、エレメント・モンスターは強い。さっき戦ったホーン・ノマーは、火のエレメント・モンスターだと。


 なるほど、そうだったのか……。僕が納得なっとくしていると、シオンさんは目を閉じた。

「さあ、少し休みましょう。私もちょっと、疲れてるから……」

「はい」


 そうして僕も更に休もうと思ったが、直道のことが気になった。体を半回転させて直道の方を見てみると、僕に背中を見せて横になっていた。僕は、聞いてみた。

「疲れているか、直道?」


 だが直道は、何も答えなかった。もう、寝てるのかな。僕は今、直道が何を考えているか知りたかったけど、それはできなかった。そしてやはり疲れていた僕は、いつの間にか、ねむっていた。


 ●


「純貴君、直道君、疲れは取れた? そろそろ、きてみようか?」


 僕はその声で、目がめた。うーん、もうちょっと寝ていたいけど、だれ? 僕を起こしたのは? そう考えていると僕は、はっとした。そうだ、ここは惑星わくせいトラニバのダンジョンの中だ! 


 それを思い出すと、眠気ねむけき飛んだ。そして、立ち上がってみた。うん、疲れは取れている。なので僕は、シオンさんに伝えた。

「はい、疲れは取れましたよ、シオンさん!」


 するとシオンさんは、微笑ほほえんだ。

「そう、それは良かったわ。あ、直道君も起きたわね」


 ふと見ると、直道も立ち上がっていた。疲れてはいない様子ようすだが、無表情むひょうじょうだった。やはり今、何を考えているのか分からなかった。シオンさんは布をバックアップにしまうと、大きな声を出した。

「それじゃあ、地下三階に下りるわよ。当然とうぜん、ここよりも強いモンスターが出ると思うから、気をつけて!」


 僕は思わず、うなづいた。そして、気合きあいを入れた。よし、がんばるぞ! そうして僕たちは、地下三階にりる階段に向かった。

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