第八話

 すると直道なおみちはシオンさんに、うれしそうに話しかけた。

「あ、これ知ってる! ファイアって、ほのおの魔法だよね! これでモンスターを、攻撃できるんだよね!」


 それを聞いて、やはりシオンさんは微笑ほほえんだ。

「うんうん、直道君もよく知ってるわね。その通りよ。いざという時は、たよりにするわ」


 すると直道は嬉しそうに、右手をり上げた。

「うん、まかせておいて!」


 それを見て複雑ふくざつな気持ちになったが、僕たちは先に進むことにした。そうして三体さんたいのゴブリンと二回、戦ったが僕たちが魔法を使うまでもなく、やはりシオンさんが一瞬いっしゅんたおした。


 ちょっとつまんないな思いながら先に進むと、広い部屋に入った。何だか今までと違うなと思い見回みまわすと、何と階段を見つけた。したりる階段だった。するとシオンさんは、僕たちに注意した。

「これから地下二階に下りるけど、注意してね。出てくるモンスターは多分、ゴブリンよりも強いはずだから」


 そうして階段に近づこうとした時、変な音がした。バサッ、バサッという何かがばたく音だった。何だろうと思って見上みあげた僕は、おどろいた。巨大なモンスターがいたからだ!


「あ、あわわわわ……」と僕は、なさけない声を出してしまった。あしもガクガクと、ふるえている。だって目の前にいるモンスターが、大きすぎるから。見た目は、コウモリだ。でも大きさは全然、違う。


 羽を広げて羽ばたいているが、その大きさは三メートルくらいだ。こ、こんな大きなモンスター、どうやって倒すの?……。するとシオンさんは、さけんだ。

「あのジャイアント・バットは、おそらくこの地下一階のボス。倒さなきゃ、先に進めないわ! 私が戦うから純貴じゅんき君と直道君は、援護えんごをお願い!」


 そしてレイピアで、ジャイアント・バットにりかかった。たった一人で。それを見て、僕は決心けっしんした。そうだ、あのモンスターも倒さなきゃならない。そしてこのダンジョンの一番深くにいるかも知れない、ドラゴン・ロードのことを調べなきゃいけない。そうすることが僕たちが地球に帰る、ただ一つの方法だろうから。


 ふとシオンさんのすぐ後ろにいる直道を見てみると、直道もガクガクと震えている。顔色かおいろも、悪い。ごめん、直道。僕のせいで、こんなことになっちゃって。直道、何が何でも僕が地球に帰してあげるから。いや、僕たちは絶対、地球に帰るんだ! 


 そして僕は、考えた。そうか、あれはジャイアント・バットっていうのか。あれはきっと、ゴブリンよりも強い。だからシオンさんも、苦戦くせんするはずだ。だから僕はシオンさんに、防御力ぼうぎょりょくげる魔法をかけた。


 プロテクション!


 するとシオンさんは、「ありがとう、純貴君!」と言いながらレイピアを振るった。直道もシオンさんの邪魔じゃまにならないように、シオンさんからはなれた。


 シオンさんの攻撃でジャイアント・バットは、確実にダメージを受けているはずだ。イケる、このままいけば勝てる! そう思った次の瞬間しゅんかん、ジャイアント・バットは、ギャアアアア! と叫んだ。そして大きな羽を、すごい速さで羽ばたかせた。


 するとジャイアント・バットから、いきおいがある風がいてきた。それで僕と直道は、後ろに吹き飛ばされた。それでも何とか上半身じょうはんしんを起こすと、前を見た。くっ、シオンさんは、どうなっている? するとシオンさんは、レイピアを前に立てて風を斬っていた。

「ふん。私にこんな攻撃は、かないわ!」


 そしてジャイアント・バットの頭上ずじょうに、ジャンプした。さらりてくる勢いを利用しながら、レイピアを振り下ろした。


 フォーリング・スラッシュ!


 斬られたジャイアント・バットは、グオオォォという声を残して消滅しょうめつした。つ、強い。さすがにゴブリンのように一瞬では倒せなかったけど、僕にはシオンさんがあっさりと倒したように見えた。


 それに僕も直道も、それにシオンさんもダメージを受けてはいない。圧倒的あっとうてきな勝利だった。すると直道は、シオンさんのそばに走りった。

「やりましたね、シオンさん。すごかったです、すごく強かったです!」


 シオンさんは、笑顔で答えていた。

「ありがとう、直道君」


 そして振り返り、僕にげた。

「さあ、地下二階に行くわよ! 私についてきて!」


 その言葉に頼もしさを感じながら、僕もシオンさんの側に寄った。そして僕たちは、地下二階に下りる階段を、下りた。

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