第六話

 僕は顔を、左右にった。この世界にきたきっかけだったあなは、すでに消えてしまった。どうすれば地球に帰れるのか、分からない……。するとふと、思いついた。シオンさんなら何か、知っているかもしれないと。だから僕は、聞いてみた。

「あの、シオンさん。シオンさんはひょっとすると、地球に帰れる方法を知っていますか?」

「うーん、多分たぶんだけど……」


 とシオンさんは、話し出した。元々もともと、君たちがきたのはドラゴン・ロードが原因げんいんだと思う。ドラゴン・ロードはとても大きな力を持っていて、存在そんざいするだけで時空じくうゆがませる力があると言われている。


 さとの古い記録きろくによると、以前いぜんにもドラゴン・ロードが復活した時に時空が歪んで君たちのように、ここにきた人間がいたそうなの。そしてドラゴン・ロードをたおした時にまた時空が歪んで、人間は地球に帰ったらしいの、と。シオンさんは、つぶやいた。


「そう考えると君たち人間がこの惑星わくせいにきたっていうことは、やっぱりドラゴン・ロードが復活ふっかつした可能性が高いわね……」


 それを聞いて僕は、複雑ふくざつな気持ちになった。地球に帰れるかもしれない方法が分かったのはうれしいけど、そのためにはドラゴン・ロードを倒さなければならないなんて……。そして僕は、聞いてみた。

「あの、ドラゴン・ロードって倒せるんですか?……」


 するとシオンさんは、むねった。

まかせておいて! 私たちエルフの里のみんなが力を合わせて、必ずドラゴン・ロードを倒すわ! 今までもそうしてきたし、ドラゴン・ロードを倒さなきゃ私たちエルフはほろんじゃうかも知れないから!」


 そしてまた、シオンさんは僕たちにたのんできた。

「だから本当にドラゴン・ロードが復活したかどうか調べる仕事を、手伝てつだってくれないかな?」


 うーん、ドラゴン・ロードが復活したかどうかを調べる仕事を手伝うのは、正直言ってこわい。だってこのダンジョンにはさっきのゴブリンのような、モンスターがいるはずだから。でも実際に戦うのは剣士けんしであるシオンさんみたいだし、ドラゴン・ロードを倒さなきゃ地球に帰れないみたいだし……。


 なので僕は、決心した。シオンさんの仕事を、手伝おうと。そして僕は、シオンさんに告げた。

「分かりました。僕たちはシオンさんの、仕事を手伝います!」


 するとシオンさんは、よろこんでくれた。

「ありがとう、純貴じゅんき君! 大丈夫だいじょうぶ。君たちのことは、きっと私がまもるから!」


 そして直道なおみちにも、話しかけた。

「あ、君も手伝ってくれるかな、直道君?」


 すると直道は、顔を左右に振った。

いやだよ僕は! 僕はそんなあぶないことはしたくないよ! 僕はここにいるよ!」


 それを聞いたシオンさんは、やっぱりこまった表情になった。だから、僕が直道を説得せっとくしようとした。

「大丈夫だよ、直道。僕たちのことは、必ずシオンさんが護ってくれるよ。だから、な?」


 でもやっぱり直道は、顔を左右に振った。だから僕は、強い口調くちょうげた。

「ハッキリ言うぞ、直道。直道はここにいたいって言うけど、ハッキリ言ってその方が危険きけんだ。さっきみたいにゴブリンのようなモンスターに、おそわれるかも知れないからだ。お前はそいつらと、戦えるか? 戦えないだろう? でもシオンさんがいれば、シオンさんが僕たちを護ってくれる。さあ、どっちを選ぶ?」


 すると直道は、何もしなかった。ただだまって、考えているようだ。どっちを選んだ方が、安全かを。もう少しで直道を説得できると思った僕は、右手を出した。

「それじゃあ、こうしよう。僕も、直道のことを護る。だから一緒いっしょに行こう!」


 少しすると直道は、動き出した。そしてシオンさんのそばに、移動いどうした。僕は取りあえず、安心した。直道がやっと、僕たちと一緒にいることを選んだからだ。でも直道は振り返り、僕に向かって叫んだ。

「僕は純貴君なんかに、護ってもらいたくないよ! こうなった原因の、純貴君なんかに! 僕はシオンさんに護ってもらうんだ!」


 僕は少し、ショックを受けた。こうなってしまった原因の僕のことを、そこまできらっているのかと。でもその通りだから、何も言えなかった。


 そして、それでも良いと思った。シオンさんと一緒にいれば、僕たちは地球に帰れると思ったからだ。そして僕は、ひそかに決心した。何が何でも僕は、直道を地球に帰すと。


 そして僕たちは、ダンジョンの中を歩き出した。すると僕は左腕ひだりうでいたみを感じて、立ち止まった。そういえばさっきゴブリンに襲われた時に、ケガをしたんだった。しかも、血が流れた。


 今は血は流れていないけど、それでも少し、痛かった。すると立ち止まった僕に気づいたシオンさんは、僕に近づいてきた。

「どうしたの、純貴君?」


 なので僕は、さっきゴブリンに襲われた時にケガをしたことを伝えた。するとシオンさんにリュックのようなモノから、500mlのペットボトルくらいの大きさの白いびんを取り出した。


「これを一口ひとくち、飲んでみて」

「えっと、これは何ですか?」

「これは、ポーションよ。飲むと体力を回復させたり、きずを治すことができるの。さ、だから飲んでみて?」

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