第四話

 僕はおそるおそる、聞きかえした。

「あ、あの。おれいって、どうやって?」


 するとお姉さんは、元の明るい表情にもどった。

「あ。お礼してくれる気、あるんだ~。やった~、ツイてる~」

「あ、あの、だから。どうやって、お礼をすればいいんですか?」

簡単かんたんなことよ。このダンジョンの調査ちょうさを、手伝てつだってほしいの!」

「ダ、ダンジョン?! こ、ここって洞窟どうくつじゃないんですか?!」


 するとお姉さんは、あっさりと答えた。

「そうよ、ここはダンジョンよ。洞窟じゃないわよ」


 そうだったのか、ここはダンジョンだったのか……。いやいや、ダンジョンでも洞窟でも、あんまり関係ない。さっきの三体さんたいみたいなやつらがいるここを、調査?! 無理無理無理! そんなの絶対、無理! だから僕は、ことわろうと思った。

「あの~。お姉さんも気づいていると思うんですけど、僕たちまだ子供なんですよ。だからこんな危険きけんなダンジョンの調査の手伝なんて、無理だと思うんですけど……」


 するとお姉さんは、表情をかがやかせた。

「まあ、うれしい! 私のことを、お姉さんって呼んでくれるの?! ああ、久しぶり。お姉さん、良いひびき……」


 そして両手を胸の前で組んで、うっとりとした表情になってしまった。僕は、思った。このお姉さん、変な人だ。美人だけど、変な人だ……。そして僕は、このお姉さんの年齢ねんれいが気になった。でも僕は、年齢は聞かなかった。


 だって最近、読んだマンガに、『女性に年齢を聞いちゃ、いけません!』っていうセリフがあったから。このお姉さんは、もちろん女性だ。だから僕は、聞かなかった。そして僕は思い出して、お姉さんに言い放った。

「だから僕たちはまだ子供なんで、こんな危険なダンジョンの調査の手伝いなんて無理ですよ!」


 するとお姉さんは、ニッコリと微笑ほほえんで聞いてきた。

「でも君たち、人間よね? そして、ジョブちよね?」


 ジョブ持ち? 何それ? 僕は確かに人間だけど、それと関係があるのかな? なので、聞いてみた。

「あの~。ジョブ持ちって、何ですか?」


 するとお姉さんは、説明してくれた。ジョブ持ちとは魔力を使って魔法を使ったり、魔力を使わないでスキルという技を使える職業しょくぎょうを持っていることだと。


 ちなみに私のジョブは魔法を使えない剣士けんしなのと、さっきの三体を倒した細身ほそみの剣を見せてくれた。そしてそれは、レイピアと呼ぶそうだ。でもやっぱり僕は、言い放った。

「いやいや、僕は魔法なんて使えませんよ! それに僕のジョブなんて、分かりませんよ!」


 するとお姉さんは、意味ありげに微笑んだ。

「まあ、今はそうでしょうね~」


 そして背中に背負せおっている、リュックのようなモノから何かを取り出した。それはくるくるとつつのように丸まった、紙のように見えた。お姉さんはそれを僕に、差し出した。

「さ、これをひろげてみて」

「は、はあ……」


 僕はその丸まった紙のようなモノを、たいらになるように広げた。すると何と、文字がかび上がった。それには『神官しんかん レベル1』と、書かれていた。神官? 何それ? と考えていると、 いつの間にかお姉さんもこれをのぞんでいた。

「うんうん。やっぱり君のジョブは、神官だったんだね。でもレベルが1だから、まだ何の魔法も使えないけど」

「神官? 神官って何ですか?」


 するとやはりお姉さんは、説明してくれた。神官とは、神につかえるジョブ。レベルが上がると、体力を回復させる魔法などを使えるようになるわ、と。ふーん、なるほど。僕は一応いちおう納得なっとくした。でも一つ、疑問があったので聞いてみた。

「どうしてお姉さんは、僕のジョブが神官だって分かったんですか?」

「ふふふ、その服装ふくそうよ。そんな服装のジョブは、神官しかいないわ」


 僕は、青色で丸や長方形の模様もようが入った上着うわぎとズボンを見てみた。ふーん、そうなんだ……。でも僕は、もう一つの疑問を聞いてみた。どうして僕は、神官になったのかを。するとお姉さんは、答えてくれた。


 私はエルフのさとに住んでるんだけど、里に伝わる古い記録きろくを読んだことがある。それによると異世界いせかいからきた人間は、この惑星わくせいで生きびるために力を手に入れる。つまり色々な力を使える、ジョブ持ちになると。ある意味、進化しんかだと。


 ふーん、そうなんだ。僕は一応、納得した。でも、様々さまざまな疑問が浮かんだ。お姉さんは、エルフなの? そう考えていると、思い出した。あのお姉さんの、長くてとがった耳を。あれはロールプレイングゲームなどでよく見た、エルフだ! そうか、お姉さんはエルフだったんだ……。


 そして、もう一つの疑問があった。『この惑星』って言ってたけど、名前は何っていうの? エルフがいるから、もちろん地球じゃないこは分かるけど。するとお姉さんは、答えた。

「ここは、惑星トラニバ! ようこそ、惑星トラニバへ!」


 いや、ようこそって言われても……。別にきたくてきたんじゃ、ないんだけど……。あー、あの神社じんじゃの横にできたあなに入ったら、こんなことになるって分かってたら絶対、入らなかったよ。今さら、後悔こうかいしてもおそいけど……。


 それにしても、惑星トラニバか。お姉さんは地球のことを異世界だと思っているようだけど、僕にとってはこの惑星トラニバの方が異世界だよ。エルフはいるし変な生き物はいるし、魔法も使えるみたいだし……。まあ宇宙にはたくさんの惑星があるみたいだから、こんな惑星もあるんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る