第7話 煩悩鹿は食い荒らす!

 見上げると、先程まで大量に居たはずのゴブリンたちが丸焼きになっていた。


「キュ、キュ?」


 台風に襲われた時のような、自然の絶大な脅威に恐れ慄く感覚がひしひしと湧き出てくる。

 何が起きた? 俺は後ろを向く。だが、皆俺を見つめるばかりでその原因らしいものは無い。


 まさか、俺の角から?

 触ってみると、ほのかな暖かさが角から沸いていた。角には神経も筋肉もない。ということは、どうしても暖かくなる道理はない。

 ……これは、何だ?


「キュ、キュイ!」


 何となく、恐ろしくなって、怖くなって、頭を振った。すると、轟音が左右から生じて、また焼き焦げた肉の香りが漂ってくる。


「キュ、キュー……」


 涙が溢れる。こんなのはなしだろう。俺は鹿として、被食者として生まれた。これほどに強大な力は持て余すのだ。

 萌え袖になっている黒いコートで目を擦る。すると、二人が近づいてきて、静かに頭を撫でてくれた。


 こういう時は飯だ。ということで、その辺に落ちてた焼きゴブリンをもむもむもむ。

 なんかコリコリして美味いと思ったらちんぽだった。割と美味いのね、これ。

 なんか二人は引いてたけど、街の人には感謝された。

 ただ、その後食った焼け焦げてない草の方がずっと美味かった。やっぱり草なんだよな、鹿の主食は。こればっかりは変わることはないだろう。

 もむもむもむもむ……お前らも食うといいぞ! ただし毒があるやつには気をつけろよ!

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