第3話 煩悩鹿は拝まれる!

「鹿様、私の言葉が分かりますか?」

(ま、まぁ)

「キュイ」


 返事をしつつ頷いてみれば、周囲の人々が改めて平伏して拝み始める。

 え、これ危ない宗教? この後集団レイプとかされないよね? 鹿の姿ならいざ知らず、こんな身体じゃ1人も相手にできんよ?


「どうか落ち着いて聞いてください。」

「キュ、キュー」


 分かったけどさぁ…せめて1 on 1で話さない? と、周囲に目配せしてみる。幸いなことに心は通じ、牧師が


「ここは私が応対致します。」


 と言って、家の中は二人きりに。ふかふかベッドの縁に腰掛けて自身の体を確認すれば、やはり人間の身体。立派な角とモノはついているものの、やはり身体は幼女そのもの。


「…我らの聖典に、こんな文があります。〈国に災い訪れし時、アルカールの地の森に、角を生やした雄の子供が現れる。その者はやがて国を救い、世に安寧をもたらすだろう〉……アルカールはこの地域一帯の古代名、そしておそらくは、鹿様がこの文にある救世主に他ならないと、民も私も信じております。」


 いや、急に言われても分からんし、そもそもお前誰なん? 牧師なのは分かったけど、この国がまずどこかもよくわからんのだけど。

 少なくとも日本ではなさそうかな?


「ソームおじさぁん、鹿様起きたって本当~?」

「あっ、鹿様!」


 えっと…狩人の二人……。

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