04 未曽有

side 鈴谷りん


私は、これまで奇跡と呼べる出逢いはなかった。

友達が出来たとしても、私に向けられる感情が全て薄っぺらくて、もっともっと私だけ見てほしいって思っていた。 

もし、そんな出逢いがあったら私はどんな感情を相手に向けるんだろう。

その時はまだ、分からなかった。


高校の入学式、

私は大して何も期待していなかった。

また、つまらない学校生活を過ごすんだろうと飽きれていたけど、上手く生きるには友達作りは必須だ。

だから、席の周りの人間全員に話しかけた。

結果、友達はできたけれど、やっぱりつまらなくてどこか寂しい。

何も寂しくないと思えば、全て良くなるだろうけど、私はそうは思えなかった。


入学式から1週間後、

私は他クラスの女の子に話しかけられた。

友達がいなさそうで、私と異なって育ちが良さそうだったから名前はよく覚えていた。

『あの、鈴谷さんだよね?』

緊張していながらも、初対面の人に話しかける勇気があって、勇敢な子だと思った。

なんで、私の名前を知っているんだろう?

この子と話したら、私に興味があるんだろうか、なんて強く思ってしまいそうで、少し怖かった。

だから、質問をしたの。

『なんで私の名前を知っているの?』

「綺麗だったから」

わたしのことが綺麗だとか、思う人間がいるんだろうか。

きっとこの先、この子だけなんだろうな。

そう思うと、少しうれしくなった。

理由はどうであれ、人から関心を向けられるのは何よりも嬉しい。










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