第9話 トレインレベリング
俺は夜桜高校にあるステータスを更新する場所にいた。ここでは自分のステータスを更新することが出来る。更新することで学校に伝わる仕組みになっていた。他にはジョブを取得する時に使用する。
机の上に置かれている水晶に手を置くと、脳内に自身のステータスが浮かび上がる。
【名前】 遠野和真 Lv4
【ジョブ】 未登録
【HP】 35
【MP】 37
【STR】 34
【VIT】 32
【AGI】 33
【INT】 29
【MND】 31
スキル〈1/2〉
【スローアップ】
ステータスの伸びが良い。これもスローアップの影響なのだろうか。それでも、明莉や奏汰達には遠く及ばないだろう。
だけど、やれるかもしれない。
土曜日。俺はダンジョンに潜っていた。1人でダンジョンに向かい、アレをしようと考えた。しかし、ダンジョンの入り口で偶然――
「和真君!」
明莉と再会してしまった。明莉は笑顔でこちらに向かってくる。
どうしてここにいるのかと聞けば、少しでもレベルを上げる為に、2層に行こうとしていたらしい。3層のシーフやメイジと戦わないのかと言えば、1人じゃ無理だと返ってきた。
「和真君もレベル上げ? なら一緒にしよう?」
「……今回ばかりは邪魔かなぁ」
「和真君と一緒にいたいの。駄目かな?」
明莉が上目遣いでこちらを見つめてくる。不覚にも可愛いと考えてしまった。
誘いに乗る理由は無いが、明莉が2層でレベルが上がるとも思えない。俺が行おうとしているアレの方が効率が良い。その分危険だが、手伝ってもらうのも有りかもしれないな。
「明莉さん、手伝って欲しいことがある。5層まで付いて来て欲しい」
「5層に? 私はまだレベル4だよ?」
「大丈夫だ」
「……分かった。付いて行く」
明莉は俺と一緒に5層まで行くと言ってくれた。
「あと、この先のことは誰にも言うなよ」
「? うん、分かったけど、和真何する気なの?」
「5層に到着したら教える」
俺と明莉は5層に向かって歩き始めた。
草原である4層を越えて、5層に到着した。洞窟のようになっていた。俺と明莉は5層の中を歩く。するとゴロゴロと音が聞こえてきた。
「止まって」
「なに? この音ってうわあっ!?」
目の前に岩石が通り過ぎた。その岩石は転がった先で落ちていく。岩石が落ちる道を歩いていた。道はフェンスで囲まれており、岩石が通る道以外落ちる心配はない。
このまま先を進んで行くと、行き止まりになった。
「なにも無いね」
「そうだな。だけど、ここでなら出来ることがある」
「それが、和真君のやりたいことなの?」
「嗚呼。俺は、トレインレベリングをやる」
「トレイン、レベリング?」
明莉は頭にハテナマークを浮かび上げる。俺はまず説明を行った。
「まずトレインってどんな行為か知っているか?」
「ううん。教えて欲しい」
トレインを知らないんだ。いずれ教わることになるから、先に教えても問題ないだろう。
「トレインはモンスターを引き連れる行為のことを言うんだ」
「えっ? 危険じゃないの?」
「危険だよ。モンスターを引き連れるんだからね。で、あの岩石で轢き殺して貰う訳だ」
俺の説明を改めて頭の中で整理する。まず、俺がモンスターを引き連れる。そのモンスター達を岩石で倒す。これはプレイヤーが効率的にレベル上げをする為に生み出された方法である。
明莉は複雑そうな表情をしていた。
「だ、駄目だよ和真君。いくら何でも危険過ぎる」
「俺は強くなるならなんだってする。それに、ダンジョンなんて危険と隣合わせだ」
明莉は強く言い返さない。俺は本当に強くなる為なら何でもする。トレインレベリングだって現実でやったら危険なのは分かっている。それでも、やりたいんだ。
俺は自分の理想を明莉に押し付けることはしたくない。ここは帰って貰おうかな。
「明莉、嫌なら――」
「私も一緒にやる」
「えっ?」
「見たうえで決めるね」
「……分かった」
明莉は俺がトレインレベリングを見たうえで決めるとのことだ。
「明莉、連絡先を交換しよう」
「分かった」
俺と明莉は連絡先を交換する。夜桜パッドに明莉の連絡先が追加された。夜桜パッドで通話が出来る状態にする。
「それじゃ、転がったら教えてくれ」
「それだけで良いの?」
「嗚呼、それだけで構わない。んじゃ、行ってくる」
俺はモンスターがいる部屋まで移動する。道中、小石を拾って持っていく。
モンスターがいる部屋まで移動した。部屋の中にはゴブリンが数匹とオークがいた。俺は夜桜パッドを耳に当てる。数秒後、明莉から連絡が来た。
『転がったよ』
俺はポケットに夜桜パッドを仕舞って部屋に入る。オークとゴブリン達が入ってきたことに気付いた。
小石をオークに向かって投げた。オークは当たり、こちらを睨んでくる。俺は即逃げた。オーク達が追ってくる。
これは、中々来るものがある。背中に無数の敵意を浴びるってこういうことなのか!
気付けば俺の足は速くなっていた。
「ひぃっ!?」
明莉がいる場所へと近付いていく。音もどんどん大きくなってきた。
俺は明莉がいる場所へと到着した。いつでも剣を抜けるようにする。モンスター達が近付いて、転がってきた岩石に轢かれた。モンスター達は魔石になっていた。
「ふぅ……」
俺は思わず息を吐いた。ゲームでは感じなかったものが色々と感じられた。現実であることを忘れちゃいけない。同時に、トレインレベリングでのレベル上げは効率が良い。俺はただ、タイミングに合わせて走れば良いだけだ。
「和真君」
明莉が俺の瞳を見つめてくる。……やっぱり明莉を説得出来なかったか。
「やっぱり危険だよ。命は1つしかないんだよ」
「……それでも、俺は進み続ける。強くなる為には、どんなことだってする」
命を大切にして欲しい明莉と強くなるならどんなことでもする俺。考えが相反している。でも、もしどちらが正しいと聞かれたら明莉の方が正しいんだろうな。レジダンだから出来たことが、現実で出来るとは限らないから。
「嫌なら、2層まで送り届けるけど」
「嫌だ。和真君を残すなんて出来ない。……それなら私も一緒にやる」
「そうか……」
俺と明莉はそれだけ言い残して喋らなくなった。モンスターがリスポーンするのは30分後だ。その間、ずっと無言だったのは正直かなりきつかった。
30分後、俺はオークとゴブリンがいる部屋に向かう。入ろうとして立ち止まった。嗚呼、大変だ。
「明莉」
『どうしたの?』
緊迫した様子が声に出ていたのか、明莉は真剣に問い掛けてきた。
「部屋に、オークロードがいる」
俺は大変な低確率を引いてしまったらしい。
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