第7話 2層

 今日は1人でダンジョンを攻略しようとしていた。ソロで潜って周りのことは一切気にしないで、どんどんレベルを上げようと考えていたのである。

 レベル2なので、2層のゴブリンと戦おうとした。2層は1層と同じく洞窟のようになっている。


 そんな俺だが、2層に到着した時に彼女達と再会した。


「和真君だよね!」


「奇遇だね」


「さっきぶりですね」


 後ろを振り返れば、明莉と竜と比奈がいた。どうして俺の後ろにいるんだろうか。


「なんで、俺の後ろにいるんだ?」


「最初は和真さんも誘うとしたんですが、早くに帰ってしまったと思ったんです」


「それで3人でダンジョンに行こうって話になって」


「僕が和真を見つけたって訳さ」


 なるほど、そういう経緯があったんだな。


「和真君も一緒にパーティーを組もう!」


 明莉がパーティーに誘ってくる。確かに昨日は意外と楽しかったのは事実だ。なら、受けても良いのかもしれない。


「分かった、パーティー登録をしよう」


「ありがとう」


 俺は明莉達のパーティーに加わった。


「今日はどうする。俺と同じようにゴブリンを倒すか」


「そのつもりで来たんだけど」


「人、多いですね」


 1層と同じく2層も人が多かった。ゴブリンはスライム以上だが、この先で出てくるモンスターよりかは弱い存在である。

 だけど俺は知っている。ここにも隠し部屋があることを。


「隠し部屋を探してみよう」


「そこにならいる可能性があるね」


「そうだ」


「賛成!」


「私もそれで良いと思います」


 俺達は隠し部屋を探し始め、10分くらいした時に見つけることが出来た。


 隠し部屋の中には緑色の体をしたモンスター、ゴブリンがいた。武器を持っている個体と持ってない個体がいる。武器は棍棒だ。


「怖いですね」


「そうだね」


「それを倒すのが探索者だからね。頑張ろうか」


「そうだな。武器を持っている個体は俺と竜が、持っていない個体は明莉さんと比奈さんが倒してくれ」


 3人は頷いた。俺達は部屋に入る。ゴブリンは気付いて、こちら側を向いて来た。表情を強張らせて突撃してくる。

 俺と竜は武器を持っている個体を相手に、明莉と比奈は持ってない個体を相手にする。


 棍棒を振ってきた。俺は剣で受け止めて弾き返す。剣でゴブリンを切り裂いた。まだ倒れないので、そのまま突きを出す。ゴブリンを貫いて今度こそ倒した。


 周りを見てみると、明莉と比奈が苦戦しているようだ。ゴブリンを倒した竜と目を合わせて加勢しに行く。

 俺は明莉の方にいる、2匹を相手にする。その内1匹は既に傷付いている。あれなら明莉でも倒せるな。


 俺は傷付いていない方のゴブリンを相手にする。明莉と視線を合わせると頷いてくれた。

 ゴブリンを切り裂く。そして胸を貫いた。ゴブリンは倒れる。明莉もゴブリンを倒したようだった。

 竜と比奈を見てみると、ちょうど比奈がとどめを刺していた。ゴブリン達は魔石になる。


「よく頑張ったね」


「はい!」


 俺達は一度部屋を出る。30分後にリスポーンする。その間は休憩だ。


「和真君と竜君は凄いね」


「はい。私と明莉さんとは違い、武器持ちを倒したから凄いです」


「それほどかな? 武器持ちといえどゴブリンだからね。次は明莉ちゃんと比奈ちゃんもやってみようか」


「私に倒せるでしょうか……」


 比奈は心配そうにしていた。明莉はメイジ希望だから接近戦はあまりしないだろう。ただ比奈はシーフ希望だ。接近戦が出来ないなら、メイジの方が良いかもしれないな。


「それなら、私のスキルで強化しよう!」


「良いんですか?」


「勿論! 使おう!」


 明莉がスキルを使って比奈を強化することになった。どんなスキルなのか俺も興味がある。


 30分が経過した。部屋にゴブリンがリスポーンする。


「今度は明莉と比奈が武器持ちを、僕と和真が武器無しを相手する」


「その前に私のスキルを使うね。【ホープアップ】!」


 明莉が比奈にホープアップを使用した。比奈は驚いている。


「凄い、力が湧いてきます」


 ホープアップはSTRとINTを上昇するスキルだ。自分を対象にすることも可能である。これがあるならメイジでも十分活躍出来るだろう。


「よし、行くよ!」


 竜を先頭に再び部屋に入る。ゴブリンを相手にする。

 俺はゴブリンを交差するように切り裂いた。ゴブリンはそれで倒れる。竜は2匹相手にしていたが、俺が見た時には倒していた。やっぱり、剣の使い方が上手いんだろう。


 明莉は武器持ちに善戦する。レイピアの間合いを活かして、刺突を出し続けた。ゴブリンは倒れる。


 比奈も善戦していた。明莉ほどではないが、動きが速くゴブリンは付いて来れなかった。これはホープアップが身体を強化しているのか。

 比奈がゴブリンの頭にレイピアを刺突する。ゴブリンは動きを止めて倒れた。消滅して魔石となる。


「やった! 倒せました!」


「やったね比奈ちゃん!」


 明莉と比奈はハイタッチする。ゴブリンを倒しただけだが、1歩ずつ成長しているのかもしれないな。


「この調子で頑張ろう」


「うん!」


「はい!」


「分かった」


 俺達はゴブリンを倒し続けた。そのおかげで、全員レベルアップするのだった。

 全員がレベルアップが完了した段階で、俺達はダンジョンから出るのだった。外はすっかり夕陽に照らされていた。




 俺は今、夕食を食べていた。


「お兄ちゃん」


「ん、なんだ?」


「私、探索者になりたい!」


 そうか。美琴も探索者になりたいと、憧れる日が来たのか。


「良いぞ」


「ほんと!?」


 美琴は目を輝かせている。但し、確認もしておかないとな。


「言っておくが、ダンジョンは危険だぞ。それでも行きたいのか?」


「勿論! お兄ちゃんと一緒にダンジョンに行って、攻略するんだ!」


「……まだ中学生だから保護者が必要か」


「そうじゃなくて。私は、お兄ちゃんと同じ景色を見たいの!」


 美琴の目は本気だった。本気で俺と同じ景色を見たいんだ。本当に、兄想いの妹に育ったものだ。

 なら、俺も応えないとな。


「今すぐ探索者にすることは無理だ。ただ、俺が魔石を稼いで、十分にレベルが上がったら探索者になろうな」


「うん。その時まで待ってる」


 美琴とパーティーを組むか。楽しみが1つ増えた。

 俺もレベル上げを頑張らないとな。

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