　私は中三のときにＹ子と一緒のクラスになりましたが、それまでにＹ子がいじめられていたのは知っていました。というより先生たちは見てみぬふりだから、いじめっ子の女子たちが調子づいてみんなの前でＹ子を晒すようにいじめてましたからね。私はいじめっ子のグループでもなければいじめられてもいませんでした。だからといっていじめを止めるようなこともしません。Ｙ子が亡くなったのはショックだけど、自分の身に降りかかることを思えば……。

　そういえば、Ｙ子はあんだけいじめられていたのに毎日登校していたのはなんでなんでしょうね。不登校ってすでに社会的に広まっていましたし、子どもには事情があるもんだって認知されていましたから、別に学校に行かなくても良かったはずです。でもＹ子は来ていました。髪の毛は切られて、不細工なこけしみたいになっていましたし、机は彫刻刀でほられまくってぼろぼろでした。

　そういえば、Ｙ子のことで強く印象に残っていることがあります。Ｙ子の鞄がいじめっ子に荒らされてるときにノートが私のところに飛んできたんです。落ちたノートはあるページで開きました、そこには罫線を全く無視した大小いろんな大きさの文字で〈ガガンボ〉とびっしりと書かれていました。よく見ると文字の隙間や一文字の間に「死ね」とか「殺す」とか物騒な言葉も書かれていました。もっといろんな言葉が書かれていたと思いますけど、Ｙ子が慌ててノートを取りに来たので、私も見ていないふりをしました。だから助かったんでしょうか。いじめっ子たちはそのノートを取り上げてガガンボを見つけて「これってウチらのことかよ」って怒ってまたＹ子の髪の毛を切っていましたけどね。ガガンボってどういう意味なんでしょうね。

　Ｙ子が自宅の家事で亡くなったあとに、いじめっ子たちにＹ子からＳＮＳの友達申請が来たことは事実だと思います。いじめっ子たちが笑いながら見せてきましたから。でもまさかいじめっ子たちが亡くなるなんて思いもしません。Ｙ子の呪いなんでしょうかね。見てみぬふりもいじめのうちなら私もいつかＹ子の呪いを受けるんでしょうか……。