第19話 僕の名は…  厳しいです 

 デザイン部の部長がいます。

 やり手の女性です。

 タレントさんも呼んできた人です。

 非常にきつい人です。


 僕はほとんどというか、

 まったく接点はありません。


「なんなのよこれは!」

 バッグのサンプルがあがってきました。

 僕が見てもちょっと安っぽいというか…

 バッグにうすいラップがかかっている感じです。

 防水にしたかったのでしょう…


「1万以上の製品の子供用のバッグがこれ! 」

 今日は特にひどいです。

 ヒートアップしています。


「やり直しよ! なにしてんの! 」


 担当者はガタイの大きい男性で、柄物のシャツを着た色白の人ですが、直立不動です。

 本人もこんなものがくるとは思ってもいなかったでしょう。


 あわててメーカーさんに電話しています。

 間に合えばいいのですが…



「言い訳は聞かない! 」

 別の日です。

 秘書の綺麗な小柄の女性が怒られています。


「いや…手違いがありまして…」

 半分泣きそうになりながらお話しています。


「言い訳は聞かない! 」

「聞いてください…」

「聞きません! 結果がなってない! 」

「だから理由があるのです…」

「聞かない! 以上! 」


 そうゆうご性格だから出世もされたのでしょう。

 結果ですからね、社会人は。

 ある意味わかりやすい人です。

 でも秘書さんも訳があるのですが…


 しばらくしてその秘書の方は退職されました。


 きっと熊木さんの退職の遠因でもあるのかな…

 僕はあえて接点を持ちませんでしたが。


 世の中は厳しいです。

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