第6話 大阪…名古屋… 後編(何事にも…)


「TOTOサッカーくじじゃないですか! 」




「うん! 」


「すっごく真剣に話していたじゃないですか…! 大事なお話のようでした」


「真剣だぜ…大事だぜ…」


「僕のリスペクト返してください! 」


 倉本さんは笑いながら言いました。

「堀ちゃん…俺たちは真剣に大事なことを話していたんだよ、ねえ村田さん」


 村田さんも豪快に笑って応えました。

「オウ! 真剣だぜ…仕事より大事だ! 」


 お二人の懐の深さというのか…なんというのか…

 これくらいじゃないと販売部の長はできないのでしょうね。


「システム的なお話で呼ばれたのかと…実績表出して…とか…」


「ああ…それはいいからさ…」

 倉本さん、軽くそう言ってから僕にサッカーくじの購買用紙をくれました。

「堀ちゃん…福岡と横浜、どっちがいいと思う…?」

 村田さんが真面目な顔をして僕を見上げました。


「マ…マリノス…横浜じゃないですか…」

 内容はともかく営業部長の質問です…

 思うところを応えさせて頂きました…


「そうだよな…堀ちゃん」

 村田さんがうれしそうに言いました。


「そうか…そうかな…」

 倉本さんは顔をしかめています。


 お二人は僕からペンを借りてマークシートに記入すると席を立ちました。


「お疲れさまでした…」

 僕は部屋の出口に向うお二人に少し頭を下げながら言いました。



「なあ堀ちゃん、俺たちはな…何事にも真剣なんだ! 」

 村田さん、最後に豪快に笑って部屋を後にされました。

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