第3話 自己紹介 後編(たぶん…)

 それからまた数年後の春。


 新入社員さん、あいかわらず全員英語でご挨拶されていましたが…一人賢そうな女性が微笑みながらこう言いました。




「Bonjour. Je m’appelle …」


 なんだ…


「C’est un plaisir de faire votre connaissance」


 何語だ…?


「フランス語じゃねえか…」

 隣から声がしました。


 勿論、もちろん、わかりません! 

 自信を持って申し上げます、わかりません! 


 

 続いて…

 これまたかわいい女の子がマイクの前に立ち


「早上好」

「初次见面」


 北京語なのはわかるけれど


「我叫……」

「请多多关照」


 ちなみに東京の本社朝礼です。

 みなさん日本の大学を出た方々で…

 日本の人です。


 勿論、もちろん、わかりません!

 これまた自信をもって申し上げます、

 わかりません!



「俺、いまだったらこの会社に入れない…」

 僕は隣であくびをしている野沢さんに言いました。


「東京外語とか筑波大とかの子もいるらしいぞ…」

「そんな…うちの会社に国立大って…」


 心底思いました。

 言葉にでてしまいました。



「もったいない…」

 何がもったいないかは書きませんが…


 でも研修でこちらに来るんだよな…

 確か業務説明の講師、人事から頼まれていた…

 何を話せばいいんだろう。


 日本語でいいよな…

 日本語、彼らわかるよな…たぶん…




 自己紹介編、終わります。

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