第25話
B5階層ーー。
その地下へと続く階段は降りたところで行き止まりになっていたーー。
「一体どうなってやがる……なんだ?これ」
「行き止まりの地下ーーだなんて、不気味ですね〜」
「…………………」
「……………………」
「ぎゃあああああああああ」
「わああああああああああああ!!」
「きゅいい!?(何!?)」
やかましい悲鳴の合唱が、狭い階段を反響して木霊する。
「お前っ!なんでいるんだよ!?帰れっつっただろう!?」
「ユウキさんを置いて行って死なれたら後味悪いじゃ無いですか!?先に帰らされる方の身にもなってくださいよ〜!?」
「おまっーー勝手に殺すな!!」
ぎゃいぎゃいと騒ぎ立てる二人を、ポピィに抱きかかえられながらジト目で見るスライム。
しかしこれだけ騒いでも、全く開く様子のない行き止まりの空間だったーー。
「ハァ……にしても、なんで現れたんだこれ?今までなかったのに……お前、何かしたか?」
「何もしてないですよ!?ていうかさっき言ってた気配ってどこからしてるんですか?」
ポピィの言葉に、だんまりとするユウキ。
「……………………消えた」
「消えたーー、消えたって、どういう事なんですか?」
「わかんねぇ……階段を降りてる最中に、ふと消えたんだよーー。全く……何が何だかわかりゃしねえ……」
と、そこまで言った時の事だったーー。
「はぁ……とりあえず、もう一度上に上りましょう……ユウキさんの言う通り、危険なら一度立て直してーー」
そこまで言ったポピィとユウキに、急な浮遊感が襲う。
「あ……あれ、?」
「……………………やべっ」
「きゅい……(下……)」
「「ぎゃあああああああああああああーー!!!」」
奈落の底へと落ちるーー3人であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「誰か〜!誰かいませんか〜!?お〜い!」
かつて落ちてきたパーティーグループの女の《魔法使い》セシリアが、落ちてきた場所から上に向かって叫ぶ。
辺りは薄暗く、赤黒い古びたレンガ質の一本道で、横幅3メートル程と若干狭めの空間だった。
そんな中、叫べど叫べど反応しない助けに、ただひたすらに虚しく木霊するだけだったーー。
「どうしよう……このまま誰も助けが来なかったらーーレックス……ゼル……アレン……みんな……怖いよ……」
今にも泣き出しそうなセシリア。
とーー、そんな時だったーー。
「いやああああああああああ」
ポニョ〜ンッーーー、コテッ、と。
スライムがクッション代わりになってくれた事で、大したダメージを負う事なく落ちるポピィ。
「いっててて……はっ!?スライムちゃん!大丈夫〜!?」
「みゅ……みゅいい〜(だ……大丈夫〜)」
クラクラと頭を天使が飛び交うスライムを前に、一応の無事を確認できて安心するポピィ。
とーー、
「うわあああああああああ!!助けて〜!」
ドシーンッーー!とダイレクトに床に落下するユウキーー。
「おいお前!ずるいぞスライムを盾にして自分だけ衝撃和らげるなんて……!!」
「わ……わたしだって意図して落ちた訳じゃないんですよ〜!?スライムちゃんが落下寸前にクッション代わりになって助ける〜って、助けてくれたんだから仕方ないじゃ無いですか!?」
場所をわきまえずぎゃいぎゃいと騒ぎ立てる二人を見て、おずおずと問いかける。
「あ……あの〜……あなた達は?」
「「……………………誰?」」
呆気に取られ、口をポカンとするユウキとポピィだったーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あの……わたし、セシリアって言います!ずっと助けを求めてて……ぐすっひっ、ひくっ……」
涙ぐみながら自己紹介するセシリア。
どうしたものかと思い悩む二人だったがーー、
「そっか……ずっとこんな暗いところにいたら怖かったよね……。わたしはポピィ!私たちが来たからにはもう大丈夫だから、安心して!」
胸を張って元気づけるポピィ。
すっとユウキの方を見てグッと親指を立ててウィンクした。
「はぁ〜、メンドくせえなあ〜……」
頭をわしゃわしゃと掻きながらぶつくさと文句を言う。
「で……一体何があった?」
そう問いかけるユウキに若干怯えるセシリアだが……やがて。
「急に……ここに落ちてきて……進んでも進んでも出口が無くて……私のパーティーメンバーも、この先に進んでて……私はずっとここで……」
「誰かの助けを待ってた……ねぇ……」
コクッと、強く頷く。
「ユウキさん……ここって」
ポピィも気がついたのか、魔気を感じられなくてもわかるほどに圧倒的な〝異質な空気〟。
何が言いたいのか察したユウキは、ポピィにこう告げる。
「いいか……?これから俺が先頭で進むから、お前らは俺より3歩離れた場所からついてこい……何かあったらすぐにオレに知らせろ……いいな?」
二人が頷く様子を見て、作戦実行に移すユウキーー。
〝茶のダンジョン深層〟ーーB・6・階・層・の探索が始まったーー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます