第13話 ランチ


あれから、一週間。


特に、要請は無くなり、俺たちは、

のんびりと、時を過ごしている。。


俺と、あかりは、婚姻届に、

サインして、提出は、まだしてない。


届けを出して、俺たちの事を、

調査され、二人の時間が無くなるのを、

恐れたためだ。。


そんな生活に、正直俺は、

後ろめたい気持ちもあった。


今、俺の目の前で、

洗濯物を干してくれてるあかり。。


鼻歌をうたいながら。そんな、

あかりが、とても幸せそうだから、

余計に、そう思ってしまう。。


あかりが、

用事を済ませたタイミングで、

俺は、話し掛けた。


「なぁ、たまには、ランチに、

行かないか?」


「うん。いいね。何食べたいの?」


「いや、あかりの食べたい物を、

食べに、連れていきたいと思って。」


「ん。春人らしくないなぁ。」


「どうして?」


「だって、普段なら、春人が、

食べたくなったものに、私が、

付き合ってるから。」


「そうだっけ?」


「そうだよぉ。。なんか、あやしいね、

なんか、こう言うの変。」


「そんな事ないよ。たまには、

いいんじゃない?考え過ぎ。」


「まぁ、じゃあ、そう言うことで、

いいよ。私は、パンにあうものが、

食べたいかなぁ。。」


「パンに合うものかぁ。。

シチューとか、グラタンとか?

洋食になるのかな?」


「あ、久しぶりに、グラタンとか、

食べたい!」


「グラタンかぁ。何だか俺も、

食べたくなってきた。じゃあ、

グラタン食べに行こう!」


「うん。ありがと、春人。」


あかりは、上機嫌で、服を選びに、

「パタパタ」と、スリッパを鳴らして、自分の部屋に向かった。。


俺も、あかりの入れてくれた、

珈琲を、グッと飲み干して、

お気に入りの服に、着替えて、

あかりの、支度が終わるのを、

待った。。。


「おまたせー。どう?」


薄いピンク色のシャツに、

白っぽいパンツ姿。

軽めの化粧。。。


「うん。可愛い。良く似合ってる。」


「えへへ。ありがとう。」


俺たちは、久しぶりの、外食をしに、

出発した。


「なんか、いいなぁ。こうやって、

なんでもない日に、春人と、ランチに、

行けるのって。。」


「俺も、あかりと、こんな風に、

過ごすのは、夢みたいだよ。」


「前は、春人、凄く忙しかったもんね、

要請が、あれば、すぐ飛び出してさ。」


「まぁ、あれは、早く問題が、

解決すれば、あかりとの時間が、

いっぱい取れると思ってだな。。

その。。なんだ。。」


「。。。そうだったんだ。」


「今だから、言えるけど、

ちょっと、無理しすぎたな。」


「馬鹿なんだから。」


「最終決戦の時なんかは、

終わったら、ランカーから、

除外してもらって、緊急要請以外は、

辞めようと、思ってたんだよ。

実は。」


「そうだったの?」


「そりゃ、そうだろ。。。

あかりと、結婚したかったから。。」


あかりは、急に立ち止まり。。。

うつむいて、

ぽろぽろと、泣き出した。。。


「春人を、見守ってきた時間が、

報われたよ。。こんなに、考えて。。

くれてたなんて。。」


「ちょ。あかり、こんな所で、

泣かないでくれ。」


「ごめん。でも、嬉しくて。。」


「ほら、せっかくの、お化粧が、

落ちちゃうよ。それに、

もう、一人にしないから。

泣かないでくれ。」


「うん。絶対だよ。」


あかりが、ポシェットから出した、

ハンカチを、俺は咄嗟に、

奪うと、優しく彼女の涙を拭いた。。


「ありがとう。」

微笑んだ、あかりの顔は、

とても幸せそうだった。


駅に入ってる、洋食屋さんに着くと、

メニューも、ろくに見ずに、

二人で、グラタンと、パンに、

珈琲をセットで、同じものを頼む。


「ねぇ。そう言えば、指輪って、

いつ、サイズ計ったの?」


「え、いや。あの。あかりと、

初めての時。。」


「え、そんな前から、だったの?

私の指、太くなってたら、

入らなかったね。」


「ん。そう言えば、そうだね。」


「でも、あの時から、ちゃんと、

考えてくれてたんだね。」


「いや、もっと前から、

あかりと、結婚出来たらいいなぁと、

考えてたよ。」


「それって、いつ?」


「んー。小学生くらいかなぁ。。」


「えー。私、その時は、

まだ、春人の事を、そんな風に、

見てなかったかも。。」


「俺のは、その、ひとめぼれ?

ってやつかなぁ。。」


「そうだったんだ。。」


「いや、でも、俺は、あかりにさ、

俺の事、好きか?って、聞いたら、

どちらかと言うと、好きだって、

言ってたよ。」


「それはさ、春人。友達としてって、

意味だよ。」


「あ、なるほど。」


「まぁ、俺も、子供だったし。

それにさ、好きって言っても、

何と無く、好きって、感じだったし。」


その言葉に、あかりは、にっこりして、


「じゃあ、お互いに、好きな友達、

見たいな感じだったって事かぁ。」


「そうだな。そう言うことだな。」


「でも、春人が、私に、ひとめぼれ

してたとは、知らなかったなぁ。。」


「まぁ。それは、否定しないよ。

あかり、可愛かったから。」


「今は?」


「もっと、可愛いくて、

綺麗になった。」


あかりは、自分で、聞いて、

俺の言葉に、動きを止めて。。


「うわーっ。そんな、恥ずかしい事、

良く言えるね。本当、恥ずかしい。

春人なら、もっと、ふざけると、

思ったのに。」


「いや、本当に、そう思ってるから。」


「。。。。」


そう言うこと、あかりは、

顔を真っ赤にして。。


「そうなんだ。ありがと。」


と、呟いた。


グラタンが、届くと、

俺たちは、下らない会話をしながら、

楽しく、ランチを済ませ、


少し、洋食屋で、くつろいでから

外に出た。。


「美味しかった。ありがと、春人。」


「どういたしまして。」


「お腹も、ふくれたし、このまま、

どっか、遊びに行くか?」


「うん。どこ行く?」


「洋服とか、見たいなぁ。」


「いいよ。じゃあ、行こうか。」


「えー。」


「どうした?」


「春人。緊急要請だよ。」


「まじかよ。」


「もう。」


あかりが、俺の手を握ると、

あの、白い部屋に飛んだ。。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る