第8話 決意

記憶が戻って、本当の

恋人同士に、戻った。。



昨日の事もあって、

あかりは、俺に、

ピッタリと、くっついて

眠っていた。。

本当に、ごめんな。

心の中で、呟くと、

髪をひと撫でしてから、

先に起き上がり、珈琲を、

立てる。。


「珈琲、いい匂い。」


布団から、ちょこんと、

頭を出して、あかりが、

微笑む。


「おはよう。良く眠れた?」


「うん。春人が、

隣にいてくれたから。。」


俺が、居なかった時間を、

考えると、少し言葉に

詰まる。。


「あかり、色々と、

ありがと。な。」


歯切れの悪い、返事を

しながら、

二つのカップに、珈琲を、

注ぎ、


「あかり、こっちで、

一緒に飲もう。」


そう言って、布団から

出て来た、あかりを、

抱き寄せた。


「まだ、夢みたい。

本当なら、記憶は、

絶対に、戻らない、

はずだったから。」


あかりの、想いが、

本当に、嬉しい。。


「ありがとう。記憶を、

失っても、待ってて、

くれんだな。」


「うん。でも、記憶の無い、

春人が、もう一度、

私を、好きになるとは、

限らないから、怖かった。」


「ストーカーとか、酷い事

ばかり言って、ごめんな。」


「うん。許す。でも、

凄く、へこんだけどね。」


「本当に、すまん。」


「もう、この話は、

おしまい。先の事を、

考えようよ。」


そうだな。。そう思った。

これからの事。。。


「あかり、俺の記憶の事、

何か、裏がありそうな、

気がする。。」


神妙な顔をして、

あかりが言う。。

「裏って。。」


「組織が、一度手放した、

俺を、遠回しに、

また、引き込んだ事が、

違和感でしかない。」


「なるほど。春人の、

感って、当たるからね。

確かに、私も、

詳しいことを、

聞かされてないから。」


「その、組織の考えが、

わかるまで、記憶の事は、

俺と、あかりの秘密にして

欲しい。」


「わかったよ。春人。」


「それに、真弓と、

辰巳は、親友だ。

言わなくても、そのうち、

気付くさ。。」


「そうでだね、春人。」

あかりは、そう言うと、

微笑んだ。


珈琲の入ったカップを、

持ち、軽く回して、

ゴクリと、飲み干す。


それを見ていた、あかりが、


「春人、もう一杯飲むなら、

私が入れてあげるよ。」


俺は、首を横に、軽くふる。

そして、スッと、

立ち上がると、あかりを、

見つめて、微笑み、


「あかり、行こうか。」


あかりは、

キョトンとして、俺を、

見上げる。


「ん。どこに。」


「行けなかった、駅前の、

ファミレス。」


パァッと、笑顔になって、


「デートの続きだね、春人。」

可愛い笑顔で、そう答えた。



玄関から、外に出ると、

肌が、痛くなるほど、

寒かった。。。


「春人、さむいねぇ。」


あかりが、

寒そうにしてるので、

俺の方から、腕を出した。

クスッと、笑うと、

あかりが、腕を、

ぎゅっと抱き締めて、


「暖かいね。」


と言って、

俺の顔を見上げた。

その表情は、

見ている俺が、

眩しいくらいの、

笑顔だった。


二人で歩くのも、

記憶のあると、無いとでは、

全然違う。今、俺は、

最高に幸せだ。。


よくよく考えると、

記憶が、戻らなかったと、

思うと、恐怖でしかない。


きっと、あかりも、

こんな恐怖の中、俺の事、

見守ってくれてたんだなと、

思うと、心が辛くなる。。


二人で、景色を眺めながら、

歩いて行くと、

駅前のビルが、見えてきた。


ちらりと、あかりが、俺を、

見上げると、


「着いたね、二人で歩くと、

近く感じたよ。」

と微笑んだ。


駅ビルには、

レストラン以外にも

食料品、雑貨、薬、

電気屋さん、映画館も、

入っている。

大きい、建物だ。


中に入ると、二人揃って、


「暖かい。」

と声が漏れた。ふふっと、

あかりが、たまらず笑う。

そんな、あかりを見て、

微笑み返すと、

レストランの、立て看板が、

見え、おすすめは、

ビーフステーキと、書いて、

あった。入口を、くぐると、

スタッフが、立っていて、

俺は、指を2本立てて、

二人と、身振りで伝えた。


上着を、座席の背もたれに、

かけて、着席する。。


空腹で、歩いてきたので、

厨房から、漂う匂いに、

包まれながら、席に着き、

メニューを、二人で、

見る。

「あかり、何にする?」


メニューを見て、悩む様子。

ちらりと、俺を見て、


「春人は、食べる物、

決まっているの?」

と、聞き返してくる。


俺は、厨房から漂う、

匂いに、ハンバーグと、

決めていたので。。


「俺は、ハンバーグ。

ライス付きで。」


と答えると、


「じゃあ、同じのにしよう。」


あかりは、嬉しそうに、

そう答えた。


店員さんを、呼び、俺が、

二人分頼み、店員に、

メニューを返す。


あかりを見ながら、

「匂いで、余計に、

腹減るな。」


と言うと、あかりも、

首を縦に降った。。


「今日は、一日中、

暗くなるまで、デート、

しようぜ。」


あかりは、俺の、手を握り、


「じゃあ、ご飯食べながら、

次何するか、考えようよ。」と、俺の手を握った。。


そう言えば、あかりと、

付き合っていた時、

デートと言っても、

ご飯、映画、二人で、

色んな所に行った。

しかし、修行の時間が、

あった為に、基本、夜は、

18時、には、帰らなくては、

いけなかった。一日中、

遊べるのは、年に数回。

幼なじみの、あかりも、

俺と同じ、つまらない、

青春時代だった、はずだ。


なるほど。。。

今、あかりは、俺の監視役。

記憶が、無いことにすれば、

任務が、無い時は、

何時でも、デートが、

出来る。そうすれば、

あかりを、

悪霊退治以外の事。

できる限り外に連れ出せる。


「春人。何、ボーッと、

してるの?」


「いや、これからの事を、

考えていただけだよ。」


フワッと、ハンバーグの匂い

が近付いて来た。。。


「美味しそう。」


「早くたべようぜ。」


「うん。」


俺とあかりは、黙々と、

会話もせず、ハンバーグを、

堪能した。。

そう言えば、ここは、

デザートが、豊富な店だと、

あかりが、言ってたなぁ。。


「あかり、デザート。」

そう言うと、

口許を隠しながら、

あかりが、


「うん、ちょっと待って。」


と答えた。。

先に食べ終わった、俺は、

店員さんを、呼び、再び、

メニューを貰った。。。


「食べるの早いよぉ。。

でも、美味しかった。」


「うん。美味しかったね。。

せかすつもりは、無かった、

ごめんな。。。

デザート、どれにする?」


「実は、食べたいのが、

有るんだ。ここの、

レアチーズケーキ。

紅茶とセットで。」


「レアチーズケーキかぁ。

じゃあ、俺も、

それにする。」


あかりが、ふふっと、笑い、

「まねっこだね。」

と言うから、

ハンバーグをまねた、

あかりが、それを言うのかと、

俺も、笑ってしまった。


ケーキを食べ終えた、

俺達は、次、何処に行くか、

二人で、話し合った。。


「あかり、水族館、

行きたいって、

言ってたよな。」


あかりが、動きを止めて、

涙ぐむ。。。


「うん。春人と、最後に、

デートの約束した場所。。」


「忘れて無いよ、俺。

一年遅れだけど、

行こうか、水族館。」


目尻の涙を、ハンカチで、

拭うと、あかりは、

最高の笑顔で、

「うん。」

と頷いた。。。。


記憶が戻ったことを、

悟られない様にする事に、

もう一つ、理由が出来た。


寂しくさせた分、

思い切り、あかりを、

外に連れ出す。

それが、今の俺の、決意。。








































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