第30話天人将軍 曹仁 捕らわれる!!
「タタタタ!」
西陵城へ向かう官道上、曹仁を取り囲んだ三十の精鋭騎馬隊が馬を駆っていた。
曹仁と並んで馬を走らせる副将は心配そうな顔をして言った。「将軍、少しでも西陵城の下に着いたら、決して軽率な行動を取らないでください。」
曹仁は一軍の主将であり、探城中に何か起これば、三十の精騎やその家族は危険に晒されることになる。
「慌てるな。」曹仁は淡々と笑い、「探子の報告によれば、西陵城には二、三千の兵しかいない。我々は三万の大軍を持っている。」
「守城の将が少しでも頭を使えば、城門を閉じて戦わないことしか考えないだろう。」
「今回の探城は見た目は危険だが、実際は極めて安全だ。しかも……」
曹仁は悠然と続けた。「ここから大営までわずか十数里しかない。お前たちが敵を防いでくれるなら、本将は安全に戻れるだろう。」
話し終える前に、副将が前方を指さした。「将軍、前方に人影があります。」
曹仁は驚いて前を見つめ、確かに二人の騎馬がこちらに向かってくるのが見えた……
……
「ヒヒーン!」
劉武と陸遜は城を出てしばらく馬を駆っていたが、前方に数十人の騎兵が現れた。
その姿を見て、陸遜の心は一瞬で緊張した。「主公、あれは曹軍の偵察騎馬かもしれません。」
劉武は何も言わずに、ただ目を細めて馬の速度を緩めた。
両者はどんどん近づいていった。
ついに、二人は先頭の将軍の顔をはっきりと見た。陸遜は手綱を握る手が強張った。「この先頭の将は明らかに一般の者ではありません。」
劉武の目は輝き、その来た者が曹仁、曹子孝であることに気づいた!
当初、劉備が許昌に囚われていたとき、劉武は密かに彼の側にいた。その頃、曹営の将軍たちは劉武を知らなかったが、劉武は彼ら全員を見て知っていた。
劉武は曹仁が江陵を守っていることを知っていたが、まさかこの江陵の主将がわずか数人の護衛と共に無防備に大営を出て、自分と向かい合うとは予想していなかった。
まるで自分に贈り物をしてくれているようだ。
「私が彼を捕まえれば、誰かが彼だとわかるだろう。」
「主公!無茶をしないでください……」
「ヒヒーン!」
そう言う間もなく、劉武は手綱を引き、大戟を持って加速し、相手に向かって突進した。陸遜は止めようとしたが間に合わなかった。
……
曹仁は対面から近づいてくる二人の騎馬を見て驚いた。「この二人は西陵城の斥候か?」
その時、向こうの若い斥候が突然馬を加速させ、こちらに突進してきた。
曹仁は笑いながら首を振った。「命知らずめ!この斥候を捕まえて西陵城の状況を尋ねよう。」
「はっ!」
二人の精騎が馬を駆け、槍を持って劉武の両肩を狙った。
「ドン!」
劉武は馬の力を借り、大戟を力強く振り下ろし、耳をつんざく破空音を響かせた。
その巨大な力で二人の槍は折れ、彼らの骨は砕け、血を吐きながら馬から転落し、息絶えた。
「タタタタ!」
劉武は二人の死体を一瞥もせず、曹仁に向かって馬を駆け続けた。
この三十の精騎は虎豹騎から出た精鋭だったが、その二人が一合で倒された?!
曹仁の顔色は変わり、相手がただの斥候でないことに気づき、今日の自分の判断が誤っていたことを悟った。曹仁はすぐに馬を返し、命からがら逃げようとした。
「将軍、早く逃げてください!我々が後ろを守ります!」
副将も事態の深刻さを察し、残った精騎を率いて迎撃に出た。
「殺せ!」
二十余騎が暴風のように劉武に襲いかかった。
劉武の馬はさらに加速し、大戟は寒光を放っていた!
「ドン!ドン!ドン!」
大戟は驚龍の如く振るわれ、その一撃一撃が血飛沫を上げ、残肢が飛び交い、悲鳴が響いた。
瞬く間に、二十余騎の精騎は半数が倒れた!
劉武の馬の蹄は曹軍の精鋭の死体を踏みつけ、曹仁の逃げる姿に向かって猛進した。
曹仁は逃げながら戦局を確認していたが、目に入る光景に戦慄を覚えた。
二十余騎の精騎が一瞬で片付けられたのか?!
「駆けろ!」
曹仁は必死に馬を鞭打ち、逃げることだけを考えていた。大営に戻れば安全だと信じていた。
逃げられるか?
逃げられない!!
前方で必死に逃げる曹仁を見て、劉武は大戟を横に構え、前方に向かって力強く投げた!
「ヒュー!」
破空音を伴って大戟の柄が曹仁の背中に叩きつけられ、彼を馬から叩き落とした。
曹仁は地面に倒れた後、必死に起き上がろうとしたが、追いかけてくる騎馬の姿を見て怒りに燃えた。
自分は曹氏の宗親であり、主公曹孟徳の信頼を得て、大軍を率いて来たというのに、こんな屈辱を受けるとは?
曹仁は怒りに燃え、地面から鉄槍を掴み、殺気立って言った。「貴様!本将を怖れると思うな!」
そう言うや否や、彼は歩兵として馬に乗った劉武に突進した。
劉武は馬を止めずに、地面に刺さった大戟を拾い上げ、一式「烏龍擺尾」で下から上に振り上げた。
「ガン!」
槍と戟が交わり、曹仁の両腕は痺れ、全身が麻痺した!
まるで大波に飲み込まれたかのように、彼は宙に浮き、無力に地面に落ちた!
「ドン!」
曹仁は頭がくらくらしながら起き上がろうとしたが、頭上を大きな影が覆い、広い戟の刃が再び彼の背中に叩きつけられた。
この度、彼は本当に起き上がることができなくなった。
冷たい戟の刃が、曹仁の首に押し当てられていた。
曹丞相の腹心の重将、三万の先鋒大軍の主将……どんなに顕赫な権勢を握っていようとも、今や曹仁は劉武のまな板の上の魚肉に過ぎなかった。
「曹子孝。」劉武は馬上に座り、眼前の三万大軍の主将を見下ろしながら言った。「さて、お前を殺すべきか、それとも捕えるべきか?」
曹仁は荒い息をつきながら、その若く冷淡な顔を仰ぎ見て、怒りが目からほとばしり出るかのようだった。「士は殺されることはあっても、辱められることはない!」
劉武は頷いた。「よろしい。」
そう言うと、手中の戟が動くかのようだった。
「敵将、待て!」
その時、急ぎの声が劉武の背後から響いた。
彼が振り返ると、曹仁の副将と数名の生き残った精騎が、一人の男を馬上で押さえつけながら近づいてくるのが見えた。
馬上で押さえつけられている男が、辛うじて頭を上げると、陸遜の泣きそうな顔が現れた。「主公、私、私は……」
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