第25話江東は孫尚香を劉武に送った!!

魯粛は深い瞳をして、新しい局面を計画していた。


西陵城の賊将がいくら勇猛であっても、少しばかりの策略があったとしても、江東が大勢を掌握すれば、彼には何もできない。


もし彼が曹操の進攻に耐えられたなら、その時江東は友好の名の下に、次々と官吏を送り込むことだろう。


彼に対して、これらの人々は彼の指示を聞き、西陵を治めるために助けると称して、陸遜のように送り込む。


年を重ねるごとに、その賊将を完全に架空の存在にすることができるだろう。そうなれば、どんなに勇猛であろうと、その賊将は江東の手の中の泥人形にすぎなくなる。


そしてこの西陵城は、自然と江東の江北の拠点となり、江東が都合の悪いことを行う際には、その賊将の名を借りることができるのだ!


「だが、この賊将はどうして江を渡って呉侯に会うことを納得するのか?」その時、数名の従者は魯粛の話の意味をまだ理解できず、茫然としていた。


魯粛はただ笑って、「時を無駄にしないように、速やかに江東に戻ろう。」と言った。


そう言い終えると、彼はすでに馬を急がせて江辺へと向かっていた……


……


「魏将軍、さっき来たのは魯粛、魯子敬先生ですか?」


「彼は、何を言いましたか?」


魏延の大帳内、孫尚香が急いで駆け込み、息を切らしながら彼女の隣には陸遜が走ってきた。


二人は西陵城の城壁から魯粛の姿を見てから、不安でたまらなかった。魯粛が彼らを江東に連れ戻しに来たのではないかと心配していたのだ。


特に陸遜は、大江の盟を続けられなくなり、主公に仕えることができなくなるのではないかと悩み、恐れていた。


魏延は彼らに隠さずに言った。「そうだ、来たのは確かに魯粛だ。彼は我々の将軍が郡主をさらい、甘寧を拘束して、蛮横無礼だと言っていた。」


やはり魯粛は自分を連れ戻すために来たのだ。二哥(孫権)は自分を忘れていなかった!

孫尚香は江東に戻るのを望んでいなかったが、この時確かに魯粛が自分のために来たことがわかり、心の中では少し安心した。


自分は江東の郡主であり、魯子敬は自分を戻すために多くの代償を約束しているに違いない。


そう考えた孫尚香は、急いで尋ねた。「それで、どうなりましたか?」


魏延:「それで、魯子敬は我々に甘寧を放せと言った。」


ただ甘寧を放すだけ?

孫尚香は何かが違うと感じ、「それで?」と尋ねた。


魏延は笑いながら答えた。「我々がそんなに簡単に甘寧を放すわけがない。私はその魯粛に五千山越を要求したが、この子敬先生は快く受け入れ、そして城を出て江東に戻った。」


江東に戻った?


魯子敬はただ江東に戻っただけ?


孫尚香は驚愕し、「それで、他には?」と問い詰めた。


魏延は困惑した顔をした。「それで終わりだ。」


孫尚香は怒りで涙を浮かべた。「どうしてそれで終わりなの?私は江東の郡主よ!魯子敬は私を戻すと言わなかったの?」


そうだ!


ここには江東の郡主がいるのだ。


魏延は頭を叩いた。「本当だ!魯粛は最初から最後まで、ただ甘寧を戻すことしか言っていなかった。」


魯粛は江を渡ってきたのは、ただ甘寧を戻すためだけだったのだ!

では、自分という呉侯の妹、江東の郡主はどうするのか?

江東は自分を必要としていないのか?


二哥は自分を必要としていないのか?


孫尚香の顔色は真っ青になり、巨大な恐怖に包まれた。


これまで彼女は劉武にさらわれたものの、劉武に対して依然として尊大でわがままな態度を取っていた。それは自分が江東の郡主であり、呉侯である二哥が自分に自信を与えてくれるからだった。


しかし今、江東は自分を見捨てた。自分は何者でもなくなったのだ!ただの無依無靠の弱い女性であり、これからどうすればよいのか?


自分の居場所はどこなのか?

瞬時に、多くの考えたこともなかった問題が孫尚香の脳裏に押し寄せ、無限の迷茫が彼女をその場に立ち尽くさせ、まるで生気を失ったかのようだった。


江東は孫尚香を劉武に送ったのか?

「私はどうなるの?私はどうなるの?」


一方、陸遜は既に焦りで飛び跳ねるようにしていた。「私は陸家の千里駒であり、天賦の才があり、呉侯の認識を得ている。魯子敬は私を戻すために、きっと多くの無理な要求を飲んだのだろう?」


「君?」魏延は目を細めて見下ろし、「魯粛は最初から最後まで、郡主と甘寧のことしか話さなかった。君のことは一言も言わなかった。」


言ってなかった?

魏延の言葉は、陸遜の最後の心理的防御を無情に打ち砕いた。


陸遜は完全に崩れた。「そんなことはない!絶対にない!」


「呉侯は私を未来の柱国の臣として褒めたのだ!柱国の臣だ!呉侯が私を見捨てるわけがない!」


「呉侯は私が江東にとってどれほど重要かを知らないわけがない。魯子敬が私を戻すために来ないわけがない!」


「いや、君は私を騙している!君は絶対に私を騙している!」


陸遜は失態し、大声で叫び続けたが、魏延は聞いていて苛立った。「黙れ!私は堂々たる男だ。子供を騙すわけがない!」


「柱国の臣?君はよく考えなさい。江東にとって、君という未来の柱国の臣が、現在の江東の大将ほど重要ではないだろうか?愚か者め!」


そうだ、江東にとって未来の柱国の臣が、現在の江東の大将ほど重要ではないのだ。


陸遜は愕然とした。


江東は自分を見捨てた。呉侯は自分を見捨てた!

自分は経天緯地の才を持っているというのに、今や人に捨てられた草芥のような存在だ。


瞬間的に、陸遜は怒りのあまり笑い出した。「いいだろう、江東の文武よ。私は君たちが今日を永遠に後悔するようにしてやる!」


「私は必ずや主公を助けて大業を成し遂げ、江東の六郡八十一州を併呑してみせる!」


「私は君たちに教えてやる。江東が今日見捨てたのは私陸遜だけではなく、江東の社稷の気運をも見捨てたのだ!!」


……


西陵城外、大江のほとり。


呼!~

冷たい江風が、広大な範囲に吹き渡り、人々の身体を寒さで震えさせた。


劉武は手を負いながら江辺を歩いていた。目に映るのは、尽きることなく流れる長江だった。


「主公、順には一つの疑問があります。」


そばにいた高順が低い声で話しかけた。「主公は劉備から離れ、曹操の西陵を奪い、今また江東の郡主をさらい、東呉の大将を捕えましたが、これは大江の両岸の全ての勢力を敵に回すことになりませんか?」


これらの日々、劉武の行動をすべて目の当たりにしてきた高順だったが、彼は普段は寡黙で、命令に従うだけの男だった。


しかし、今や劉武の基盤が形を成し始めたばかりで、次々と大きな動きを見せ、この基盤が激浪の中の小舟のように、いつでも転覆する可能性があるように見えて、高順は我慢できなくなった。


劉武の声が、江風に乗って高順の耳に届いた。「私は確かに劉備と曹操を敵に回したが、江東は私の逃げ道なのだ。」


「江東が主公の逃げ道ですか?」高順は驚いた目をした。


江東の郡主や東呉の大将、さらには陸家の嫡脈までを捕えた。江東の上下が西陵を恨み、これが逃げ道なのか?


劉武は頷いた。「そうだ、まさに逃げ道だ。」


「私の逃げ道は、衛満朝鮮の話のように江東を占拠することだ。」


「かつて劉備は荊州で成し遂げられなかったことを、私は江東で成し遂げるかもしれない!」


「思えば、江東は私に縁がある。この六郡八十一州はいつか私劉武のものになるだろう……」


西漢の初期、燕王盧綰は漢朝に反逆し、匈奴に逃亡した。燕人衛満も連座し、浿水を渡って当時の箕子朝鮮に投じた。衛満は力を蓄えてから朝鮮の君主を追放し、自立して王となった。


これが衛満朝鮮である。


劉備はかつて荊州にいた時、劉表の老いを見て、彼の息子たちが未熟であることを知り、鴟鴞が巣を占めるように荊州を奪おうと考えた。


しかし、蔡氏兄妹が先に手を打ち、荊州の世家と結託して、劉備の計画を台無しにしたのだ。


劉武の足は止まり、彼の目は大江の対岸に向けられた……


そこには江東の六郡八十一州がある!

そこは孫氏三代の基盤だ!

そこは曹孟徳が天下を統一しようとする夢が破れた場所だ!


哗!~

江潮が岸を打った。


「かつて孫策は三千の兵を率いて江東の地を完全に収め、その後は精進して今日の東南の盛況を築いた。」


「私劉子烈の志は、東南一隅に限られているわけではない!」


「孫権は結局、門戸を守る犬でしかない。この江東の地は私の大業の基盤となるのだ!」

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