第16話孫権に直接会いに来させろ!
西陵城内の中軍大帳にて。劉武は目の前の雄壮な男を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「お前が甘寧か?」
甘寧は拳を抱え礼をした。
「正に甘寧だ。」
江夏で黄祖を生け捕り、烏林で曹操を追撃した男!百騎で曹操の陣営を襲い、曹阿瞞を夜も眠れぬほど驚かせた!八百人で関羽と対峙し、関羽の三万の軍馬を渡河させなかった!この江東十二虎臣の筆頭は、劉武の若い顔を見て一瞬呆然とした……。
彼はこの軍隊の主将が、一人で千人を相手にし、単戟で城を破ったのを目の当たりにしたが、その鉄甲の下の顔がこれほど若いとは思わなかった。この年齢でこれほど勇猛なら、将来この天下で彼に敵う者が何人いるだろうか……?
大帳の後ろでは、陸遜と孫尚香が慎重に帳内の様子を覗いていた。孫尚香の顔は青ざめていた。
「間違いない!やっぱり甘興覇だ、彼が来た……私は江東に戻るしかないわ。」
自分が戻った後、再び劉皇叔に嫁ぐ可能性があることを考えると、孫尚香は無比に嫌悪を感じた。
「どうすればいいの!」
陸遜は孫尚香よりもさらに心配そうで、眉をひそめていた。
「この甘寧はきっと呉侯と我が家の長輩の託を受けて、私を江東に連れ戻しに来たのだ。」
「しかし私はあの人と同盟を結んだばかりだ、それを破ることはできない。だが江東に戻らなければ、呉侯が激怒するのではないか?」
陸遜は極度に葛藤し、これから甘寧にどう説明すればいいのか苦悩していた。
大帳内で、甘寧は直接意図を示した。
「先日、我が江東の郡主が川を渡り劉皇叔と婚姻を結んだが、何者かに拉致された。」
「甘寧は追跡の末、郡主が貴下の軍中にいることを突き止めた。どうか郡主を江東に返していただきたい!」
さすが錦帆賊、こんなに早く孫尚香の所在を見つけるとは。劉武は心の中で思案しながらも否定はしなかった。
「郡主は確かに我が軍中にいるが……」
甘寧は眉をひそめた。
「ただし何だ?」
「将軍は郡主のためだけに来たのか?」
劉武は少し怪訝そうな目をした。
甘寧は不思議そうに言った。
「某はただ郡主を江東に連れ戻すために来た、それ以外に何もない。」
帳の後ろで、孫尚香は隣の陸遜を奇妙な顔で見つめた。陸遜の顔はすでに黒ずんでいた。彼は先ほどまで戻るか留まるかで悩んでいたが、江東は全く彼を戻そうとはしていなかった。
「ぷっ!」孫尚香は幸せそうに口を押さえて笑った。陸遜の顔はさらに黒くなった。
「そんなはずはない!絶対にない!私は陸家の千里馬であり、呉侯にも重用されているのだ。江東が私を急いで戻そうとしないはずがない!」
「この甘興覇は、きっと呉侯が任務を指示した時、彼が聞き逃したのだ!」
「郡主を返すことはできる。」
劉武は高座に座り、穏やかな声で言った。
「江東は何を差し出す?」
甘寧は劉武が単騎で城を破り、二千の兵で西陵を落とした壮挙を見た後、今回は穏やかに孫尚香を連れ戻すことが難しいと知っていた。相手が要求を出すことは予想していた。
「貴下は何を望むのか?」
劉武は言った。
「私は糧食十万石、甲冑一万領、楼船二百隻、人口二十万を欲する。」
糧食十万石!甲冑一万領!楼船二百隻!人口二十万!!
甘寧の顔色は険しくなった。甲冑一万領や楼船二百隻は言わずもがな、十万石の糧食だけでも一万の大軍が二年間使うに足りる。二十万の人口など荒唐無稽だ!江東の現在の登録人口はわずか二百万で、毎年山越を捕らえて補充しなければならない。この男は口を開けば二十万、まさに狮子大開口だ!
現状の江東は赤壁の戦いを終えたばかりで、糧食や武器の消耗が激しい。赤壁の戦いの前でも、江東はこれらの条件を受け入れることはできなかった。
甘寧は陰鬱な声で言った。
「貴下の値段は実に信じがたい、呉侯は同意するはずがない。」
「江東が人を贖うことを望まないのなら、甘将軍はお帰りください。」
「待て!」
甘寧はゆっくりと立ち上がり、相手の若すぎる顔を直視した。自分は江東の大将であり、武人だ。武人は常に強者を尊ぶ。武人は常に強者を打ち負かしたいと望む!甘興覇も例外ではない!
大江での劉武の絶世の武勇に甘寧は驚かされ、その瞬間に彼の心中に戦意が湧き上がった。ただし郡主を連れ戻すという任務を忘れていなかったため、その心のざわめきを抑えた。しかし郡主を返してもらえない今、彼の心のざわめきはもはや抑えきれない……
甘寧の目に熱意が閃いた。
「先ほどの話は公事だが、今は私事を話させてもらう。」
私事?劉武の目に驚きが掠めた。
「私は武人だ!」甘寧の目に戦意が燃え上がった。
「今日、貴下は一騎で城を破り、非常に勇猛だった!甘寧は見ていて心が躍った、どうか貴下に教えを請いたい!」
この江東の虎臣は、私と手合わせをしようと言うのか?劉武は剣眉を少し上げた。
「教えを請うか?よし、だが賭けをしよう。」
甘寧は驚いて言った。
「賭け?」
「お前は私と三招勝負をし、三招以内に負けなければ郡主を連れて行け。もし三招に耐えられなければ……お前もこの西陵城に留まってもらう。」
劉武の淡々とした声は、甘寧の耳には非常に刺耳に聞こえた。甘興覇は大江南北を縦横し、巴蜀荊州を横行したことがあるが、今までこんなに侮られたことはなかった!
甘寧は怒りに笑った。
「よし、某は受けて立つ!」
カラン!~
彼の腰の長刀が抜かれ、秋水の如く冷気が溢れた。
長刀を手にした甘寧は眉をひそめた。
「貴下はなぜ兵刃を取らないのか?」
那杆饮尽鲜血的大戟,就立在刘武身旁,刘武却看也不看:“第一招,我让你先。”
甘寧瞬間被激怒了:“狂妄!”
ウィーン!~
秋水長刀が一声吟啸し、電光石火の如く劉武の首に向かって突き刺さる!
空中を切り裂く長刀は、金を断ち玉を切る勢いで、見る者の背筋を凍らせる。
この一刀は威風堂々、江東の十二虎臣ですら甘寧のこの一刀を防ぐことはできない!
刀鋒が呼啸しながら落ちてきたが……
空振りだ!
刀の下は空っぽだ?!
劉武はまだそこに座っていて、微動だにしない?
刀鋒は一寸外れていた、
こんなことがあり得るのか?
斬り損ねたのか?
甘寧は身の毛がよだつ思いだった。
この一刀を、
彼はただ避けただけでなく、彼の速度は自分の刀よりも速かったのだ!
「第二招、我還讓你先。」劉武は淡々と言った、まるで何もなかったかのように。
甘寧の顔は陰沈となり、身を引いてから、再び身と刀が一体となり劉武に飛びかかった!
ガバン!~
彼は片手で刀柄をしっかりと握り、周身の青筋が盛り上がった!
大筋が弓弦のように張り詰め、刀勢は狂風の如く呼啸し、咆哮しながら劉武に向かって突き進む。
刀光は閃き、山を砕き川を断つかのようだった!
巴蜀で、
荊州で、
江東で!
無数の豪傑敵将が、甘寧のこの一刀の前に命を落としたが、今……
一つの白い腕が無造作に伸びて、蚊や蝿を追い払うかのように、広い手の甲が刀鋒にしっかりと乗せられた。
ウィーン!~
甘寧は刀に巨大な力が加わり、震えが襲ってきた!
その力は彼の手中の刀を哀鳴させ、
その力は彼の腕を痺れさせ、
その力は彼を数歩後退させた。
「第三招、我照旧让你先。」劉武は淡々とした声で言った、彼の隣の大戟は一度も動かなかった。
彼はまだ自分に先手を取らせるつもりなのか?!
黄祖を生け捕り、曹操を追い詰め、名を荊襄江東に轟かせた自分が、今や人に弄ばれる稚童となるとは!
熱い血が怒りで沸騰し、甘寧の頭頂にまで昇った。
甘寧は目を赤くし、両手で刀を握った。
一歩、
一歩、
さらに一歩と劉武に向かって進んだ。
彼の全身の気血と力が搾り出され……
彼の気勢はますます重くなり……
それは赤壁の大江で八十万の曹軍と戦った鉄血の惨烈さだった!
それは百騎で曹営を襲撃した殺気だった!
鋭く目を射る刀光が、大帳全体を照らした。
帳内で風が激しく吹き荒れた!
この一刀は甘寧の全ての力を尽くしたものだった!
轟!~
冷たく鋭い刀光が、咆哮しながら劉武に向かって突き進む。
劉武の頭上の髪がほどけ、青い髪が両側に舞い上がった……
ウィーン!~
次の瞬間、その大戟がまるで蛟龍が空に飛び上がるように、空高く舞い上がった。
破空の音はまるで天龍の吟啸のようだった!
嘶吼し咆哮し、
凛然たる神威、
全てを鎮圧する!
ぼんやりとした間に、まるで広大な青天が突然崩れ落ちてきたかのようだった!
それは絶望と恐怖を与えた。
甘寧の心は一瞬で沈み、息ができないほどだった。
次の瞬間、大きな轟音が聞こえた、
轟!!~
耳をつんざく音で、激しい気流が四方に暴れ回った!
その場にいた全ての者は目撃した、
甘寧、甘興霸、その全身が大戟に弾き飛ばされ、まるで矢のように飛ばされた!
彼は帳外に吹き飛ばされ、小半分の軍帳が粉々になった!
秋水長刀もすでに折れていた!!
……
バン!~
大帳の外で、甘寧は無力に空中から激しく落ちた。
彼の顔は蒼白で、口から血を流し、地面に浅い穴を作った!
江東十二虎臣の筆頭、赤壁で曹操を亡命させた東呉の大将が、今劉武の帳外で、まるで敗北した犬のようだった。
先程の一刀は彼が重傷を負う覚悟で繰り出したものだったが、今や劉武の一撃を受け、すでに人事不省の状態だった。
帳内では、
劉武は戟を持ち立ち、舞い上がる髪をなびかせ、
彼はゆっくりと座り、
雄壮な声が帳外に響いた、
「拿了!」
帳外で長らく待機していた高順が、「上!」と叫んだ。
その瞬間、突撃隊の兵士たちが蜂の巣のように甘寧に群がり、甘寧はもはや抵抗する力を失った!
「呉侯に報告せよ……」
劉武は内力で声を飛ばし、大帳内から響かせた。
その声は数里に渡り、
西陵城内にも届き、
そして西陵城外で待っていた甘寧の親衛隊、すなわち錦帆賊の耳にも届いた……
「甘寧を取り戻したければ、呉侯自らが私に会いに来い!」
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