第3話父子决裂、劉備の知られざる過去!!

「何故だ?」この三文字が劉武の口から放たれた。まるで雪夜の北風のように、大殿内に響き渡るかのようだった。


劉備の眉が寄せられ、顔にあった穏やかな表情が消え失せた。劉武の声が耳障りでたまらない。


「何の理由だ?その酒を飲め。」劉備の言葉には隠しきれない苛立ちと硬さが含まれていた。今はただ劉武にこの三杯目の酒を飲ませ、阿斗を世子として支持することを表明させたかったのだ。


うぅ!~バタン!~外の寒風が吹き荒れ、ホールの扉が激しく吹き飛ばされた。冷気がホール内の暖かさを幾分か奪っていった。


劉武はゆっくりと立ち上がり、劉備から視線を逸らさずに言った。「なぜ私を世子に立てないのか?」


劉武が阿斗と世子の座を争おうとしているのか?!劉備は驚愕の表情を浮かべ、信じられないという目で劉武を見つめた。思わず口をついて出た。「何を言っているのだ?」


劉備も認めざるを得なかった。彼が長年の苦労の末に、ようやく一国の基盤を築けたのは、劉武の多大な貢献のおかげであった。これまでこの長子は労を惜しまず、冷静かつ確実に物事を処理し、多くの困難な任務を見事に遂行してきた。表向きには何も要求せず、報酬も求めなかった。何より、劉武は自分に絶対的な忠誠を誓っていた。彼は確かに頼りになる有能な臣下であった。


しかし、彼を世子に立てるとなると……劉備の顔は一気に曇った。劉武は陰湿な裏仕事に慣れており、その心性は陰険である。もしそのような人間が主君の座に就けば、大災害になることは目に見えていた。


「私は……」劉武は厳粛な表情で、低い声で言った。「なぜ父上は私を世子に立てないのか?」


再び、劉武は断固としてこの問いを繰り返した。これは幻聴でもなく、劉玄徳の耳に異常があるわけでもないと確信した。


劉備の顔は怒りで真っ赤になり、今まで分別があり、大局を理解し、大事を考えていた長子が、突然別人のように自分の権威に挑戦し、決断を疑問視するようになったのだ。


「お前の言いたいことは、今まで多くの血を流し、多くの人を殺してきたということか?」劉玄徳は立ち上がり、怒りの中に笑みを浮かべながら、少し皮肉を込めて言った。「……お前は功労があり、苦労がある……」


「だから、父として七歳の子供を世子に立てるべきではなく、長子のお前を立てるべきだというのか?」


劉武は頷いた。「そうだ。」


バタン!~怒りに満ちた劉皇叔は、前の食卓を蹴飛ばし、大声で咆哮した。「逆子!放肆!!」


「阿斗は貴重で、父の膝下で育ったため、苦労を知らない!お前のように幼少期から苦労してきたわけではない。」


「彼が世子にならなければ、臣下になるというのか?お前のように危険な場所に赴き、命を落とすのか?」


「お前は兄として弟を助けるべきだ。それなのに、今は阿斗を助けるどころか、世子の座を奪おうとするとは、なんて恥知らずだ!」


阿斗が苦労を知らないから世子になるべきだと?自分がどれほどの功績を立てても、苦労に慣れているから黙って苦労を続けろと?こんな馬鹿げた道理があるだろうか?


何年もの間、苦労を重ね、命の危険を冒して戦い続けてきた。何度も死の淵から這い上がり、劉備の名声を広めた。これだけの努力が報われるのは、劉備の無関心、麋夫人の冷たい目、そして劉阿斗の「お前は家に何しに来たのか?」という言葉だけだ。


劉皇叔に鼻を指されて、「お前は兄として弟を助けるべきだ。それなのに、今は阿斗を助けるどころか、世子の座を奪おうとするとは、なんて恥知らずだ!」と言われるのが報いなのか?


バン!!!~ホールの扉は巨大な力で四散し、雪の中に飛び散った。


劉武は茫々たる雪夜へと飛び出して行った。


ホールの中、長子が遠ざかる姿を見つめ、劉備の顔は暗くなる一方だった。この逆子!こんなにも長い間、私は人を見る目を誤っていた。誰が想像できただろう、この逆子が普段の勤勉さと苦労を惜しまずに見せたのが、全て演技だったとは?この小さな畜生は自分の分を守らず、今後も良く叩いて阿斗のために使えるようにする必要がある。


今のところ、劉武が去ろうとしてもどこにも行ける場所はない。彼は劉備の息子であり、この天下で彼を受け入れる者は誰もいないだろう。曹操?孫権?劉武は馬鹿ではない。今日の天下の状況を彼は理解している。劉備の口元には冷笑が浮かんだ。「今日の天下、私以外の誰も彼を受け入れない!」


「彼は最終的に戻ってくる。」


…………雪はますます激しくなっていく。黒夜の中、肉眼で見えるのは白一色であった。劉武の表情は、この氷雪のように冷たかった。今日の劉備の行動は、彼の父の心中に自分の位置を完全に認識させた。劉備のために尽くしたすべてが、彼にとって当然のことと思われていた。劉備の大業のためにどれだけのことをしても、その目には深宅の婦人の手によって育てられ、一寸の功績もない阿斗ほどの価値はないと見なされていた。


あの【扶不起の阿斗】に卑屈に仕えるべきか?劉武はそうしたくなかった。しかし、彼がそうしないなら、去るしかなかった。ここを離れるのだ!!


劉武の足が止まり、心に一瞬の迷いがよぎった。去る?本当に去るのか?劉備の今日のために、劉武はあまりにも多くを捧げてきた。しかし、劉備はこの基業を阿斗に譲ることを望んでおり、自分を世子に立てる気はない。これまでのすべての努力は、他人のための嫁入り道具に過ぎないのか?


風雪はますます激しくなり、白一色の雪原の中で、劉武は一歩一歩進んでいく。足跡はすぐに風雪に埋もれてしまった。広大な天地の中、まるで劉武一人しかいないかのようだった。無辺の孤独感が彼を飲み込もうとしていた。


彼の心に、無意識のうちに鋼の髯を持つ顔が浮かんだ。それは彼の三叔、張飛張翼徳だった。


この数年、自分が苦しい思いをするたびに、三叔がいつも自分を助けてくれた……


ふと、


遠くに一人の鉄塔のような姿が劉武の視界に入った。


その足音が近づくにつれ、その姿の顔もますます鮮明になってきた。


豹のような頭に環のある目、


顔は黒鉄のように艶やかで、


手には丈八蛇矛を持ち、雪の中で振り回していた!

密集した蛇矛の影が、その姿をほぼ完全に包み込んでいた。


まるで毒蛟が首を振り、非常に危険な様相だ!

周囲の風雪がいくら吹き荒れても、それに侵されることはなかった!

轟!~

蛇矛が向かう先には、


まるで毒蛟が怒り狂い、


人を襲いそうな勢いだった!


この人こそ、劉武の三叔、燕人張翼徳であった……

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