第十六話 勃発
いきり立つキョウに少々呆れ気味の二人。サラが頭に手を当てて話しかける。
「てかキョウちゃん後付けてたの? 言ってよー! そしたら三人で帰ってたのに」
「なんであたくしがあんたと帰んないといけないの! ……あ、もちろんミズキ様は別ですわよ? いつでも一緒に帰ってしんぜますわ? いや、快活な子がタイプならこっちの方が正解かしら? オホン」
と咳払いし、キョウはミズキに人差し指をピンと突きつける。
「『しょうがないわね全く! あんたと一緒に帰ってあげられる子なんて私くらいなんだから、どうしてもって言うならあたくしが一緒に帰ってあげてもいいわよ!』」
「い、言うほど快活キャラでもないと思うけどな、そのセリフ……」
顔を指差されて困惑しながら返答する。
「……? 快活って声がデカくて恥知らずって意味じゃないの? いますわよね自分はいかにも元気っ子ですって周りにアピールしてる声がデカいだけの女」
「こっちはこっちで認知歪んでるなぁ……」
「あそーゆー意味!? へーミズちってそんな女子がタイプなんだ。趣味ワルいね!」
「色々違うから。二人とも」
じとーっとした目で二人から見つめられるミズキ。その視線に耐えかねて自転車に跨る。
「じゃ、じゃあ俺、こっちだから」
「え! もう言っちゃうの!? せっかくだしもう少し三人でお喋りしてこうよ!」
「そーですわ! わたくしももっとミズキ様のこと詳しく知りたいですわ。……ってなんで三人でお喋りなんですの! この女抜きで二人でアフタヌーンティーでもいかがです? ミズキ様?」
「いや……あはは……遠慮しときます」
「知らないのキョウちゃん? ミズち鬼シャイなんだから、そんな提案乗るわけ無いじゃん」
何故かサラが勝ち誇ったように胸を張る。
「は? あんたに言われる筋合いありませんわ? あたくしはミズキ様に話しかけてますので、横槍入れないで頂けますこと?」
「あーあせっかくアドバイスしてあげたのに無理しちゃって。あたしの方がミズちと歴長いんだから素直に聞いといたほうがいいと思うけど?」
「ハッ! たかが数日で彼女面してんじゃねーであらせられますこと? というかそのいかにもな正妻アピールきっついきっついですわー! 自分ヨユーですみたいな顔してその実裏では必死こいて猛アタックしてるのが丸わかりですわー!」
「そんなことしてませんケド! 知った風な口聞かないでくんない!? ってかさーキョウちゃん、会ったばっかの男子相手に彼女立候補しますってフツーに考えてちょっとキモいよ? もうちょっとコミュニケーションとか勉強しよっか? あーでも地元の名士だから金で全部なんとかなるのか! いいなーお金持ちって人生ラクそうで!」
「うっせぇですわ!!!」
「どっちが!!!」
「おおお、落ち着こっか! 一旦落ち着こっか二人とも!!!」
ヒートアップするのを見かねて慌てて間に割って入るミズキ。
「ちょっとミズちどいて、その都落ち女にジョーシキってやつを叩き込んでやんなきゃいけない」
「あなたが都落ちさせたんでしょう! この泥棒猫ッ!」
きーきーとなおも二人は喚き合うのだった。見かねたミズキが大きくため息をつく。
「二人とも仲良いね」
「良くない!」
「悪いですわ!」
「息合ってるよ……」
同時に二つの声が響く。
再びため息をつくミズキだった。
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