第十週目

【おいでおいでと 鳴るのは何ぞ 竹そら笑い 足ひく河】


 残暑の中、とあるお寺へお参りしていると、しばらく先に仏塔のあることを老人に教えてもらう。確かに白雲とともにそびえたっているのが見える。ふもとまで行けるというので何となくそちらの方へ行ってみると、景色が更に古風なものへと移っていく。映画で見たような壁を縫うようにでこぼこの地面が、やや斜面がちに続いており、暑さもあってか曲がるべきところをついつい無視して歩いてしまう。

 そのまま上りきれば、そこには墓地があるらしい。その手前で左へ曲がる。

 すると壁はついに竹へと変わっていく。さきほどまでは微風さえ感じなかったというのに、笹の葉は揺れ、竹は互いに節々をぶつける。空笑いしているかのようにがたがたと鳴る。先ほどまでいたお堂とは全く異なる自然の轟音ごうおんと薄気味悪さを覚えつつ、仏塔へとたどり着く。

 元から人の気配は少なかったが、果たしてここを訪れている人は僕だけなのだろうか、というくらいその仏塔はフェンスで囲まれているとは言えども、古代と現代とが大きくかけ離れているような場所であった。思わず来てしまったその場所。まるで河辺で足を引かれるような名状しがたい心地。その場を立ち去るために、わずかに目を閉じて、手を合わせるしか仕様がない。

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