第九週目

【伸びぬようにと 銘々すする 牛白湯パイタンと 社交辞令】


 普段であれば醤油や豚骨を頼む人間が、試みに牛白湯を嗜むきっかけというのはそう多いとは思えない。もしかすると映画や小説の中に描写があったからか、あるいはとりあえず空腹をしのぐために入店した先が、牛白湯推しの店舗だったか。

 彼の場合は、同僚との食事であった。

 味は案外申し分ない。だが、席のスペースや会話のタイミングに気を配りつつ、おごられるいわれのない事を踏まえて自身の財布から紙幣を抜き取る。軽く辞退しつつも思いの外すんなり受け取った。

 レシートを店員から貰ったその男から釣銭は渡ってこなかったものの。

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