第37話 英霊
———頼みの綱で召喚した英霊が、とんだド淫乱だった。
その酷さに、さっきの殺伐とした空気はどこへやら、俺もレイゼもハイゼルも……つまりこの場にいる全員が、白を基調とした花の模様の着物に身を包んだ銀髪銀眼の妖艶な美女英霊———フリルレル・フローズ・フォン・グレイシャーに視線を向けていた。
そして、当の本人は、俺にむくれた様子で視線をジト目を送っている。
「むっ、妾の誘いを断る男がいるとは……さては不の———」
「おっとそれ以上は言わせねーよ!? 俺は断じて違うから、俺の息子は普通にお元気ですから!」
「ならなぜ……」
「そんなの死ぬって言うからに決まってんじゃん。誰が死ぬのにヤるんだよ。もしヤる奴いたら、そいつは稀代の馬鹿だろ」
でもこんな美女とヤれるなら死んでも良いって奴は一定数いそうなのが怖い。
というか……封印されてた理由、絶対手当たり次第に男とまぐわって、次々と腹上死させたからだろ。
マジでこれほど召喚して後悔するのも中々なくないか?
課金して100連ガチャ回したら、最高レア1体も出なかった時より後悔してるんだけど。
何て俺が思いっ切り顔を顰めながら本気で召喚したのを後悔していると。
「それで……妾と馬鍬わずして何のために呼んだのじゃ?」
「お前の頭は重症だな。実はな? ———アレを何とかして欲しいのよ。正確には殺さず無効化して欲しいわけ」
本気で判らないといった感じの表情を受けべていたので、大きくため息を吐きたいのをグッと堪えてハイゼルを指差す。
ハイゼルはこのド淫乱女を警戒してか、先程から攻撃を仕掛けてこない。
俺としてはこのまま一生攻撃しないで欲しい。
「ねぇ、何とかなる?」
「ふむ……お主はこの程度の者を妾になんとかして欲しいと?」
「この程度、の相手に勝てない人間で申し訳ありませんね。そうだよ、アイツを何とかしてもらうために喚んだんだよ」
俺が拗ねたように言えば、ド淫乱女が無駄に気品のある所作で顎に手を添える。
しかし直ぐに何やら笑みを浮かべた。
不気味ったらありゃしない。
「良し、妾があの者を無効化させよう」
「ほんとか!?」
「終われば妾と馬鍬わってもらうがの?」
「……あぁ、良いよ。やってやろうじゃんか! 男に二言はない!」
俺はドンッと胸を叩いてふんぞり返る。
しかし態度とは裏腹に、俺は非常に狡いことを考えていた。
———この女がハイゼルを止めてくれた瞬間に全速力で逃げ出し、アルテミスに泣きつこう、と。
幾ら英霊であろうと、多分俺の全速力なら逃げられるはず。
こいつは肉体と言うより魔法タイプだし。
これでも伊達にカンストじゃないのよ。
「さぁ、やっちゃって! あの爺に一発ぶちかましてやって!」
「全く……。面白そうな者じゃから協力してやるが……破ったら許さんのでな?」
釘を刺すかのように妖艶な笑みはそのまま、身体の芯まで凍える程の冷酷な瞳を此方に向けてくるド淫乱女ことフリルレル。
ただ、ここでビビっていては俺の企みがバレてしまう可能性があるので、しっかりと言葉を返す。
「も、勿論破らないに決まってるだろです」
「語尾がおかしくなっておるよ」
う、五月蝿い。
ビビらないように頑張ったけど、人間的本能には抗えなかっただけだし。
俺がふいっと視線を逸らせば、フリルレルは仕方ないとばかりに息を吐き……全身から膨大な魔力が噴き出す。
膨大な魔力の渦はフリルレルを中心に円柱のように天へと登る。
ただの魔力のはずなのに天井をあっさり突き破る辺り、英霊が如何に次元の違う存在かがよく分かる光景だった。
……チートやん。
こんな奴に人間がどう足掻いても勝てるわけ無いじゃん。
ヤバい、逃げられるかな?
ハイゼルは勿論、レイゼもあまりの魔力に呆気に取られる中、俺は心の中で冷や汗をダラダラと流す。
もう諦めて童貞卒業しちゃえよ、と悪魔が囁いてくる。
……もう諦めて素直に従うか?
いやでも、アルテミスの下まで辿り着けたら絶対大丈夫だから……それに俺だって相手は選びたい。
こんなビッチを超えたド淫乱痴女で童貞卒業はちょっと……いや相当嫌だ。
何て俺が葛藤していると。
「【氷雪花】」
透き通る冷たい声が耳朶に触れた———と同時にハイゼルの身体を丸々呑み込む美しい1輪の氷の花が咲いた。
辺り一面に雪化粧がなされ、小雪が僅かな光を反射してキラキラと輝く。
もうなりふり構っていられなくなった。
「す、凄い……」
「くくっ、そうじゃろうて。さて、それじゃあ妾と馬鍬わ———ん? いない? そなた、妾を呼び出した者を知っているか?」
「え、えっと……」
「言うのじゃ。さもなくば、子孫だろうが殺す」
「て、天井から逃げましたっ!!」
「!? あ、あああ……あんの
「あぁぁぁレイト……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!」
天井から脱出した俺の後ろから怒りの声が届くが……心臓がキュッとなる感覚に苛まれながらも無視して全速力で走る。
目的地は世界一安全な場所———アルテミスの下。
「ふああああああああ助けてくださいアルテミスさまあああああああああああ!!」
過去一の恐怖に泣き叫びながら家へと駆け———。
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ごめんなさい、めっちゃ更新遅れた。
いや実はスマホ買い替えたんですよ。
そしたら3年半やってるソシャゲの大事なタイミングでアカウント復旧しないといけなくなって、更にそれに5日掛かると知って絶望してたら書けませんでした。
ただやっと吹っ切れたんで、これまでサボってた分、不定期ですけど出来る限り投稿頑張ります。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます。
モチベで執筆スピードが変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
また、応援コメントもくださると嬉しいです。
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