第33話

「———今宵の俺は最強だ、誰にも止めらんねーぜ!!」

「な、なにもんだコイツ!? こんな強い奴がいるとか聞いて———ゴハッ!?」

「いけ好かないイケメンのくせに何て強さしてんだ———ぐへぇっ!?」


 どうも、グレイシャー家を襲撃する奴らを襲撃するレイトです。

 現在、今までにないくらい爽快で楽しいです。


 何でかと言うと。



「———はははははははは、邪魔する奴は全部纏めてぶっ飛ばしてやるっ!!」



 面白いくらいモブキャラが雑魚いからだ。


 今まで格上相手にしか戦っていなかった俺は、常に命を賭けて戦ってきた。

 少しの油断で首チョンパなど当たり前。

 何なら油断して無くてもあっさり殺されるような敵ばかり。

 

 それがどうだ?

 俺が腕を振るえば、紙のように無法者達がビュンビュン飛ばされていく。

 しかも無法者の攻撃は俺の身体を傷付けるに至らないと来た。


 転生当初の無双する夢が今叶っている。

 これほどストレスフリーでストレス発散に最適なモノはない。

 相手は襲撃者だから傷付けることに一切良心が痛まないのも尚良い。


「我が名はインテリ仮面っ!! 正義の名の下に邪魔するテメェ等をぶっ飛ばさせてもらおう!」

「む、無茶苦茶じゃねぇか!?」

「五月蝿い! テメェ等こそこんな何もない日に襲撃なんかしやがって、ちょっとは人様の迷惑を考えろ馬鹿野郎!!」

「ぬえぇえええええ!? 剣を折っ———ガホッ!?」


 俺は向かってくる無法者の剣を腕を振るって折り、目を見開いて驚く無法者の腹に掌底を打ち込み、吹き飛ばす。

 情けない声を漏らして吹き飛んだ無法者は、1人の仲間を巻き込んで道路にゴロゴロと転がった。

 そんな姿を見て怯む無法者達。


「ハハハハハハ、俺と戦いたいなら、ああなるのを覚悟の上で———」


 調子に乘りまくって高笑いをする俺の耳に。


「た、耐えろ! あと少しで奴らが任務を終えて帰る頃だ、そこまで耐えれば俺達の勝ちだぞ……!!」


 そんな言葉が聞こえてきた。

 同時に高笑いをしてウッキウキだった俺はピシッと石像のようにその場で固まり。




「———わ、忘れてたっ!」



 

 全速力で屋敷へと駆け出した。









 ———やっべ、完全に忘れてたよ、楽しすぎてすっかり本来の目的を忘れてたよ。

 

 もう動揺を隠すこともなく、俺は無法者達に見向きもせずにいつ見ても圧倒されるほどの豪奢な屋敷の門を飛び越える。

 どうやらここは特別隊が襲撃しているからか無法者の姿は全く見られず、他の家のように燃えたり崩れたりもしていなかった。

 しかし変わらないのは外見だけで———中から悲鳴があちこちから聞こえており、剣戟の音が聞こえてくる。


 うわっ、ホントにヤバいって。

 俺が調子に乗って悪党退治に精を出していたせいで、手遅れ一歩手前じゃん!


「ああもう面倒だな!」


 そう吠え、悪いと思いながらも緊急事態だし仕方ないと割り切って、如何にも高そうな玄関の扉を蹴破る。


「かってぇなクソ」


 半ば突進気味に飛び込んだせいで壁に激突した俺は、頭を押さえながら毒づく。

 そして辺りを見回し……短剣を握り締めたメイドと目が合った。

 メイドはカタカタと震える身体を必死に抑え、短剣を構えた状態で俺を目を見開いて見ていた。


 え、えぇぇ気まず……こんなドンピシャでばったり会うことある??

 まぁ襲撃者に会ってないだけマシだけど……。


「「…………」」

「え、えっと……怪しいものではないですはい、寧ろお宅の助太刀に来たといいますか……」


 気まずい空気に耐えられなくなった俺がそう告げると。


「———い、インテリ仮面様っ!? どうしてここに!? お嬢様からは半ば喧嘩別れ的な感じで別れたと……まさか今回の襲撃を予知されていたのですか!?」


 そんな突拍子もないことを言い出したので、俺は慌てて訂正する。

 

「いやいや予知してないです。それとまぁ……レイゼは嫌いなんですけど、駆け付けないわけにはいかなかっただけですよ。これでも一応、正義の味方を名乗ってる者なんでね」


 何かちょっとカッコつけてるみたいになった。

 本音はレイゼを助ける0.1、自分の家のある領地を襲撃した奴らへの腹いせ9.5なのだが……いやまぁ一応間違ってはないはず。

 あのだから……ちょっと誇張して言ったのは謝るんで、俺を神様を目の前にしたように尊敬を篭めて見るのはどうか止めてくれないでしょうか?

 いたたまれない気持ちがアレなんです。

 目が見れません。


 そんな感じで目を逸らす俺へと頭を下げるメイドに。



「———どうか、この屋敷を救ってくださいっ!!」

「……お、おうよ、任せな! インテリ仮面がな、何とかしてやっから!」



 俺がこう言うしか無かったのは、言うまでもないだろう。

 

 

—————————————————————————

 お久しぶりです。

 スランプで全ての作品の更新を停止していたんですが……また頑張ります。


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

 モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします! 

 

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