第30話 素晴らしきかな

「———……これ、新たな我が家?」

「うん、あの女の子に貰った紙には此処だって書いてあるよ」

「…………で、でけぇ……」


 あの騒動から1ヶ月が経ち……レイゼから家が完成したと告げられてやって来たのだが、俺は、視界を占領する超巨大な屋敷を眺めて呆気に取られつつ零した。

 ちょっと圧倒され過ぎて吐息みたいな声しか出ない。


 正直、公爵家というものを舐めていた。

 面倒だからとこれで関係を絶ったわけなんだが……ちょっと後悔。

 適当に擦り寄って甘い蜜吸えばよかったな、ミスった。


 我が家の規模は、正直個人が所有する様な代物じゃない。

 リアルに日本で言うところの国会議事堂を2周り小さくしたくらいある。


 見た目はTHE貴族の屋敷といった豪奢な感じで、レイゼ達グレイシャー家の色違いバージョンというのが1番例えとして適切な気がする。

 なので外装は銀じゃなくて銅のような金のような色合いが強い。

 流石に庭自体はそこまで広くないが……何とプールが付いている。

 それも学校にあるような25メートルの大きなプール。


「ヤバい、プールじゃん。プールが家にある=金持ちじゃん。やべっ、何か俺の世界と共通のモノがあって安心したら一気にテンション上がってきた。おい、アルテミス……さてはこれ……」


 懐かしの物にテンションの上る俺が期待の眼差しを向けると……アルテミスがしたり顔で頷いた。



「———君の記憶の中のモノを再現してみた」



 おい、ここに天才がおる。

 やっぱ金持ちの家といえばプールだよな、良く分かってるじゃないか。


 アルテミスの有能さに感動している俺に、この中で唯一プールと言うモノを知らないアリスが首を傾げて遠慮がちに訊いてくる。


「えっと……ぷーる、とは何なのですか?」

「人口の水遊びが出来る優れ物。金持ちなら誰もが付ける」

「ほえぇ……そんな物があるのですね……レイト様は一体何処でお知りになったのですか?」


 恐らくアリスは何て事ない質問のつもりなのだろう。

 だがしかし、これを言えば転生者だとバレる。

 こういう時は———。




「———よし、取り敢えずプールに入ろうぜ!」



 

 誤魔化すに限る。









 ———プールと言えば、水着。

 ———水着と言えば、女子。


 スク水・ビキニ・ワンピースなどなど……選択肢が海パンかブーメランパンツの二択しかない男子とは違い、女子は多種多様な水着が存在する。

 この世界に来て、美女や美少女に関わることなどなく、そもそも海に行かなければならないと半ば諦めていた水着姿をまさか今日見れるとは……それも美少女と美女の水着姿を。

 流石に今日は無理だと思ってたんだけど……マジナイス、アルテミス。

 こっそり買っててくれて本当にありがとう。


 因みにこんな中世をモチーフにした世界に多種多様な水着があるのは、この世界がゲーム世界だからである。

 美女、美少女が出るゲームなら水着衣装はもはや必須と言っても過言ではない。

 

「……緊張する」


 アルテミスの買った黒の海パンに身を包み、プールでアルテミスの作った浮き輪に乗って待ちながら嘯く。

 流石に上半身を覆うラッシュガード的な物はなく、14、15程度の子供とは思えないムキムキな身体に我ながらちょっと見惚れる。

 そう言えば最近身長もアルテミスを抜かしたし金もある……モテるのも時間の問題かもしれない。




「———お、お待たせいたしました……」




 【不死】の効果で殆ど傷のない自らの身体をペタペタ触っていた俺の背後から、透き通るアリスの声が耳朶に触れる。

 更に続けてアルテミスの声も聞こえた。

 

「ごめんね、レイト。あまりにもアリスが恥ずかしがるから遅くなった」

「アルテミス様っ!? ち、違うのですっ! ただこんな……し、下着のように布面積の少ない服を来たことが無くてですね……」

「そ、そうか……ま、まぁ俺は別にどれくらいでも待てるから気にすんな! てか後ろ向いても良い?」

「「ダメですっ良いよ」」

「いやどっち!?」

 

 全く正反対の答えに、思わずツッコむ。

 ただ、あのアリスの恥ずかしがり具合を考えるに……アリスはビキニタイプと見た。

 ますます期待が出来る。


「ど、どうせ遊ぶなら見ることになるんだし良いよな?」

「う、うぅ……はい……」


 よし来たさぁいざ2人の水着姿のお披露目といこうではないかっ!!


 俺は期待を馳せて振り返り———固まった。


「う、うぅ……は、恥ずかしいです……」


 アリスは、トップとボトムそれぞれにフリルがあしらわれた純白のビキニ。

 トップは胸の谷間が隠れないようにフリルが付いており、ボトムはビキニにしては少し布面積は多めだった。

 輝く白銀の髪と瞳、透き通るような白肌に純白のビキニがベストマッチしている。

 トップとボトムに付いたフリルが、アリスのまだ完全に大人になりきれていない美少女具合を表しており、可愛らしさの中にセクシーさも併せ持っていた。

 恥ずかしがって耳まで真っ赤に染めているのも尚グッド。


「うん、水着なんて来たこと無かったけど……涼しいね」


 対するアルテミスは、バストのフロント部分がクロスした、クロスデザインと呼ばれるタイプの黒のビキニ。

 アリスとは違って布面積は少なく、クロスしたバストのフロント部分がただでさえ豊満な胸を更に際立たせている。

 黒ビキニという煽情的なデザインがアルテミスの漆黒の髪と魅惑の肉体にこれまたベストマッチしており、頭の上に掛けたサングラスが格好いい美女といった雰囲気を演出していた。

 正直セクシーなど軽々と飛び越えてエロ過ぎる。


 まぁつまりは。




「———我が生涯に一片の悔い無しッッ!!」

 



 この一言に尽きるわけである。


 水着サイコー!!

 

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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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