第28話 他人任せの大乱闘
———今、俺が何をしているかというと。
「……えっと……うん。俺、剣持つ意味ないよね」
「……そ、そうですね、あはは……。アルテミス様があんな感じですし……」
「だよな。ちょっと俺、アイツに生意気言うの止めようかな」
アリスと共に、ただただその場に突っ立っていた。
何方もアルテミスの様子を引き攣った表情のまま眺めながらドン引きしている。
しかしそんな俺とアリスの半径3メートルを超えれば———。
「———ひ、怯むな、掛かれええええええええっ! 奴とて人間、いつかは必ず披露してミスをする! 攻撃の手を緩めるな!!」
「し、しかしレバン様! あの女に全く攻撃が当たらないどころか近付くことすら出来ません!! そし———ああああああああああっ!?!?」
「バイゼドっ! ぐっ……だ、だが……」
「レバン様ぁああああ!! 魔法士達の魔法も発動と同時に【
「ヘイクぅうううううううう!!」
「ヘイクに構っている暇などありませんよレバン様! あの女、ハイゼル様と剣を切り結んでいるにも関わらず、息1つ乱していません! それに我ら全員の攻撃を、その場で動くことなく防いでいるのですよ!? 無理ですよ!? あっ、また一気に7人の騎士が吹き飛ばされ———何で俺もおおおおおおおおっ!?!?」
「ヴォルガあああああああああああ!!」
アルテミスをけしかけたはずの此方ですら、思わず目を背けたくなるような阿鼻叫喚の地獄絵図を地で行くような光景が広がっていた。
この騎士達を率いているらしいレバンと呼ばれた30代後半のイケオジ騎士は、アルテミスに剣を振るいながらも一向に相手にされず、次々とやられていく仲間たちの姿に悲鳴を上げている。
対するアルテミスは……無傷で先程と変わらぬ余裕な表情のまま、全方向、全方位幾数ものあらゆる攻撃を、何か良く分からんくらい異次元の速度で捌いていた。
それもその場で、一歩も動くことすら無く。
彼女の使っている武器は、剣としても魔力を発射する銃としても使用可能な銃剣と呼ばれる物。
神秘的な光を纏った白銀のソレ一本で、彼女は全てを涼しい顔で対処している。
ハッキリ言ってキモい。
そんなアルテミス相手に、敵側唯一1度も吹き飛ばされることなく絶えず剣を交えていたハイゼルだったが……既に口から血を流し、燕尾服はボロボロで、握った剣もヒビが入っていた。
明らかに誰が見ても満身創痍と思うであろうハイゼルは、流石狂戦士と評されるだけあって気丈にも笑みを浮かべている。
普通にめちゃくちゃ格好いい。
「ひょっひょっひょっ……儂が赤子の様な扱いを受けるか。しかし儂はまだまだやれる———がふっ!?」
———バキンッ!!
剣が砕け散る音と共に、ハイゼルの腹をアルテミスの蹴りがクリーンヒット。
銃声にも似た爆発音がただでさえ人の悲鳴やら剣の音やらで煩い空間に一際大きく響いた。
これには流石のハイゼルも効いたのか、口から大量の鮮血を撒き散らしつつ、ヨロヨロと覚束ない足取りで何歩か後退した。
しかし決して倒れることはなく、落ちていた剣を拾ってレイゼを護るように再びアルテミスに対峙する。
「ひょっひょっひょっ……まだ儂は倒れんぞい……。儂はどれだけ傷付こうと……決して膝は折らぬ!!」
「おおおおかっけぇーーっっ!! いいぞ、ハイゼル! 頑張れ、お前ならまだまだやれるはずだっ! そんなチート尽くしのチート野郎なんかぶっ飛ばしちまえ!」
「君は一体どっちの味方なんだい?」
五月蝿い。
男ってのは、漢に憧れ、その生き様に感動する生き物なんだよ。
まぁチート持ちの俺は漢になんて絶対なれないけど。
そうして、2人のぶつかる様子を見逃すものかと注視していると。
「———わ、分かった! 私の負け!! 私の負けでも何でもいいからもうこれ以上はやめて!!」
レイゼの切迫感溢れる叫びが雑音しか無いこの空間で異様に響き渡った。
その透き通る声と共に、一気に空間を侵食していた様々な音が消える。
一転してシンと静まり返った空間の中、俺は反論した。
「おいおいだからさっき言ったろ? 泣いて謝っても許さねーって。それを聞かずして自らが不利になった途端止めろだなんて、虫が良すぎじゃないですかね」
「うっ……そ、それは……」
「ま、流石に俺もそこまで鬼畜じゃない。俺の要求を聞いてくれたら———」
そんな俺の言葉を遮ってレイゼが再び叫ぶ。
「私が悪かった! 全部私が悪かったって認めるからっ……貴方への無礼な発言も脅しも撤回するっ! どんなことでもするし、貴方の要求も聞く! だから、もうこれ以上ハイゼルを……私のために戦ってくれた皆んなをボロボロにしないでっ!!」
そう言って、レイゼはボロボロと涙を流しながらハイゼルに駆け寄った。
「ハイゼルっ!!」
「これはこれはお嬢様……やっと御自分の悪い所にお気付きになられましたか……? ひょっひょっ……ごほっ、ごほっッ!! ……この様に、この世には権力など無意味な存在が居るのです……」
「分かったからっ! もう身に沁みて分かったから、話さないで! ちょっとレバンっ! ハイゼルを急いで治療室に!」
「は、はっ、直ちに!!」
比較的怪我の少ない騎士達に運ばれて消えるハイゼルの姿を眺めながら……ポツリと呟いた。
「…………いや罪悪感すごっ……元は俺達のせいじゃないのに……」
一応、最高の結果ではあるのだが……斜め後ろからの冷ややかな視線に気付いていないフリをした。
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ごめん、昨日は試験で時間なかった。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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