第13話 やりたいこと
「———良いもの見れたわぁ」
「…………性格悪いね、君」
「ははっ、ブーメランって言葉知ってる?」
例の洞窟の真っ白な部屋に戻ってきた。
トラウマはもうどっかに消え去った。
ただその代わりに、先程からアルテミスが不機嫌なのである。
勿論理由は分かるが……ラスボスが不機嫌とか普通に怖いんだ。
現に今も、膨れっ面で机に頬杖を付きながらジトッとした湿っぽい瞳を此方に向けて睨んできている。
余程土下座が効いたらしいが……俺のせいじゃないんだから睨むなこらっ。
「や、全部お前が悪いからな? お前があの駄犬を先に殺してたら俺もあんなになんなくて済んだんだし」
まぁでも、ラスボスの土下座……何とも甘美なモノを見れた。
あ、でもこれからは俺が土下座しろって言ったら幾らでも見れる……待てよ?
嫌がりながら土下座する超絶美人……犯罪、紛うことなき犯罪。
一瞬でお縄に繋がれちゃうわ。
何て俺が想像していると、更にジト度(自作の造語)を高めたアルテミスが口先を尖らせながら言った。
「……物凄いえっちな顔してるね、君」
「え、ガチ? すまん、嫌がりながら土下座してるお前の想像……痛っ!? おい、殴るな! お前が殴ったらシャレにならねーんだよ! 死ぬから! 俺程度ぽっくり死んじゃうから!」
対面に座る俺を、身を乗り出しながらポコポコと胸を叩いてくるアルテミス。
だが、見た目に惑わされてはいけない。
相手はラスボス、俺なんかより遥かにステータスが高いのだ。
つまり———見た目に反して、ズドンズドンという威力の殴打が俺を内外問わず破壊しに掛かっているのである。
普通を通り越してめちゃくちゃ痛い。
尋常じゃないほどの衝撃が内臓を揺らしている。
多分骨ヒビ入ったって。
「お前俺を殺す気か!?」
「良いよ、1回死んで頭を冷やしたらいい」
「怖っ!? やっぱお前頭おか……し……」
尻すぼみに言葉が小さくなり、最後には言葉を失った。
視線がアルテミスに固定されて目が離せなくなる。
ジト目なのは変わらないが、普段より殊勝な態度に加え、俺がリアリティーのある想像を語ったためか自分でも想像したらしく、羞恥に頬を僅かに朱色に染めていた。
まぁつまり何なのかと言うと。
———新しい扉開きかけた。
や、いつもは大人っぽくて余裕のある美女がふとした瞬間に乙女のように顔を赤くするのって良くない?
ギャップ萌えってヤツだよ。
普段は手の平で相手をコロコロと転がしてる系美女が、実は攻めに弱くて此方の手の平でコロコロと転がされるとか最高だろ。
ありがとうございます。
「ありがとうございます」
「君は本当にえっちだね……」
「最高です」
やばっ、此処は天国かもしれん。
きっと今の俺の顔って気持ち悪いんだろうな……うわっ、想像したら萎えるし考えるのやめよ。
俺は気を取り直し……嬉々としてこの後も弄り倒した。
「———誠に申し訳ありませんでした。調子に乗り過ぎました。ほんの出来心だったんですよね。いつもやられてたからやり返してみたかったっていうか……はい、言い訳しないんでその目はやめて下さい」
現在俺は、弄り倒したせいで大分不機嫌なご様子で冷たい目を向けてくるアルテミスに許しを請うていた。
体勢?
勿論土下座に決まってますがな。
こーゆーのは誠意を見せんとあかんのですよ。
それはもう綺麗な土下座を披露する俺を見たアルテミスは、毒気を抜かれた様子で大きくため息を1つ。
「……はぁ、まぁ私は君の所有物になったわけだから、別に謝らなくていいよ」
「確かにそうだな。自分で自分を賭けの景品に持ち出した奴を、いざ俺が弄り倒してやったら不機嫌になってこっちが謝るって理不尽だよな」
「…………」
「てかクソほど長い年月生きてるラスボスのお前が俺程度の相手にいっちょまえに普通の女の子みたいな反応するの何なん? もしかして男性経験少なかったりする?」
「…………君、絶対モテないな」
「おっと、言ってはならないことを言いやがったな貴様! 万死に値する!」
幾らお前が超絶美人でも俺にだって選ぶ権利はあるんだぞ!
他に女性はいないんだけどね!
「そう言えばレイト、君はこれからどうしたいんだい? 君は意外と単純だから何となく想像付くけど」
おっと失礼だなコイツ。
もう一度羞恥に悶えさせてやってもええんやぞこっちは。
やっと俺を手の平でコロコロ出来て調子を取り戻したらしいアルテミスに、俺は内心言い返すものの、怖くて言えなかった。
だってやり過ぎたら死ぬもん。
「どうしたい、ねぇ……」
俺はちょっと真面目に考えてみる。
どうしたいか……一先ずこの森を出たい。 良い加減いち早く出たい。
もうレベルもMAXになったし、俺が死ぬ気で頑張ればダイヤウルフくらいなら倒せることも分かったので、この森にいる意味はないのだ。
てかダイヤウルフを1人で倒せるなら、主人公にワンチャン勝てる説。
まぁそんなこと絶対しないけど。
それに、原作にも関わりたくもない。
中々面倒なイベントが3年間の内に立て続けに起こるのだから、知っている身からすれば、関わりたいと思う奴はまず居ないって。
寧ろ積極的に関わろうとする奴がいるなら鼻で笑うわ。
はっ。
一応推しも居るので考えたりもしたが……あれは英霊なので、俺に懐いたり話してくれることが無いのは分かりきっていた。
わざわざ無謀なことをするよか、魔法を覚えてみたり、アルテミスの財産使って2人で自由に世界回った方が遥かに楽しい気がする———。
「———あ、あるぞ、1番最初にやりたいこと」
「? 一体何がしたいんだい? 私はどんなことがあっても君に付いて行くよ」
彼女の何とも頼りになる言葉に小さく笑みを零したのち、ちょっと今までの人生を思い返してみて……うん、同情の余地ねぇわ。
寧ろ普通に腹立ってきたわ。
「———とりまクソ両親をぶん殴りたい。そんで、俺に使わず大事に溜めてんだろう金を目の前で街の人たちに思いっ切りばら撒いてやる……!!」
そんな私怨がたっぷり内包された俺の言葉に———アルテミスは心底面白そうと言った感じで、その端正な顔をニヤリと喜色に染めたのだった。
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【朗報】
レイト、復讐のために遂に外に出る。
デュエルスタンバイ!
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします!
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