第10話 ラスボスさんと賭け
時間が経つのは早いもので……何と、アルテミスと出会ってから3ヶ月が経った。
季節も大分変わってきて若干肌寒くなって気がする。
幾ら天下の【禁足の森】と言えど季節には逆らえないらしく、青々としていた巨大な葉達も今やおじいちゃんの様にしわくちゃになって紅色や黄緑色に色褪せていた。
そんな植物ですら姿を変える中、3ヶ月経った俺はと言うと。
「……やっと……やっと、150……!!」
俺は自分のステータスにデカデカと記された『レベル:150』の表記を前に、歓喜の声を漏らした。
そう、遂に俺はレベルカンストに到達すると言う快挙を成し遂げたのである。
苦節半年、結局ブラックドラゴンには勝てず仕舞いだったが。
死んだ回数を数えれば多分1万回は余裕で超えているだろう。
この嬉しさを表現するならば……そう、渋谷のスクランブル交差点で全裸逆立ちしても心が折れないレベル。
もうね、今なら何されても笑顔で許せる気がするを越えて、何でも許せる。
今の俺は数多の仏や神より温厚で器が広いと断言できる。
「うんうん、よく頑張ったね。君なら絶対に成し遂げると思っていたよ。おめでとう」
「ああ……本当にありがとう、アルテミス」
地面に大の字で寝転ぶ俺の頭の横にしゃがみ込んだアルテミスが、俺の顔を覗き込みながら笑みを浮かべて褒めちぎってくる。
アルテミスとも随分仲良くなった。
始めはラスボスと言うこともあって頭のおかしい奴と思って警戒していたが……意外にもそこまでだった。
まぁ偶に煽ってくるが。
俺はそんなアルテミスの賞賛を受けて素直にお礼を言……待てよ?
「何で俺がお前にお礼なんか言わないといけないの?」
「え?」
「『え?』じゃねーよ? アンタ毎日毎日俺がブラックドラゴンに襲われてる時に楽しそうにしてたよな?」
忘れたとは言わせねーよ?
毎回毎回ブラックドラゴンを呼び寄せておきながら、俺に嬉々としてなすりつけ、文字通り殺られる俺を見てニヤニヤ楽しそうに笑ってたよなぁ??
俺はギロッと怨嗟の篭った瞳でアルテミスを睨む。
ただ、当の彼女には全く気にした様子は見られず、普段通りの何を考えているのか分からない笑みを浮かべたまま口を開いた。
「ところで、レイト君は賭けは好きかな?」
「ガン無視!? 俺の積年の恨みが篭った睨みをガン無視だと……!?」
「まだ出会って1年も経ってないし、恨みを抱くのは弱者で心が狭い証拠だよ?」
「正論は時に人の心をズタズタに引き裂くことをアンタも知った方がいい」
そんな面と向かってお前は弱者だ、なんてわざわざ突き付けなくても良くない?
もう俺のライフはゼロよ?
俺が口を尖らせながら結構本気でアルテミスの言葉に落ち込んでいると……突然俺の上にアルテミスが覆い被さってきた。
「っ!?!?」
「ふふっ、可愛い反応だね」
鼻と鼻の先がくっつきそうなほどの近距離にアルテミスの顔が迫る。
漆黒の滑らかな髪が俺の顔に垂れて来て、少し甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
なまじ美女なだけに不覚にもドキッとした俺がスッと目を逸らすと……アルテミスがクスッと笑う。
くっ……何たる屈辱……!
不意を付いて俺を揶揄ってくるとは中々やるじゃないか……!
相手がこの激ヤバラスボス女じゃなかったらうっかり落ちてたところだぜ。
何て頬を伝う冷や汗を拭っていると。
「———本格的に、君が欲しくなってきた」
灰色と黒の瞳に怪しげな光を灯しながら、何処か魅惑的で情欲を唆る様な表情に変わったアルテミスが、まるで獲物を狙う様にチロッと舌を出して唇を湿らせた。
……………は?
「え、あの……えぇ??」
欠片も予想していなかった展開に、俺は思考どころか普段はペラペラとくだらないことばかり吐き出す口すらも回らなくなる。
いやあの……本当にどーゆーこと?
何がどうしてどうなったら急にこんな状態になるのか聞いてもよろしいか?
てか一先ず逃げ———力強っ!?
ちょっ、おい———。
「た、タイムだタイム! 俺は貴殿に説明を要求する!」
俺は過去一の焦燥感に身を焦がしながら声を上げた。
しかし彼女は、全く聞こえてないとばかりに話を続ける。
「レイト、私のモノにならないか? 私は君が本格的に気に入った。ずっと手元に置いておきたいんだよ」
「話通じねーなこの女!? だ、誰か助けてー!! 森の中で痴女に襲われるー!」
ヤバいヤバいヤバいヤバい。
エグいほど鳥肌立ってるんだけど。
この人、マジで頭おかしいだろ。
てかずっと手元に置いておきたいとか死んでも嫌なんですけど。
俺は何とかアルテミスから逃げようと渾身の力を振り絞るも……モブの俺がラスボスに敵うわけもなく、びくともしない。
焦りに焦りまくる俺の様子に、アルテミスは楽しそうに笑みを溢した。
「ふふっ、相変わらず面白い反応を見せてくれるな、君は」
「……マジで何がしたいんだよ。普通にトラウマになるんだが」
「だから言ってるじゃないか。レイト、君が本当に気に入ったからずっと手元に置いておきたいって。3ヶ月も待ったんだからいいだろう?」
「お前の頭は沸いてんのか? こんな怖い思いして誰がはいそうですかって頷くんだよ」
相手がこの世界のヒロインとかならまだしも……こんな激ヤバ女と一生一緒とか死んでも御免だ。
ただ、彼女は俺のこの反応を予見していたのだろう。
特に焦ることなく、俺の顔の前で人差し指を立てた。
「———それなら、私と賭けをしよう。私が勝ったら君は私のモノ。君が勝ったら、私は君のモノ。公平だろう?」
……流石ラスボスさん。
唯我独尊具合がマジパネェっす。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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