第5話 まさか自分がバーサーカーと呼ばれる日が来るとは思わなかったよ
「———さぁ、約束通り資格を証明しに来てやったぞ! ありがとうございました!」
テンションはそのまま、俺は洞窟の入り口で腕を組んだまま微動だにしないデュラハンへと、白い刀身の剣を向けた。
ちゃんと御礼も忘れない。
別に、御礼を言わなくて『礼儀のなっていない奴は許さん』的なことを言われるのが怖かったわけじゃないからな?
断じてないったらない。
『……その心意気や、よし。我も、全力で相手をしよう』
「え?」
ちょっと待って欲しい。
アンタが本気なんて出した日には、俺のライフは一瞬よ?
だからハルバードを構えて俺に殺気を向けないでください、お願いします。
お馬さんも鼻息荒く地面を踏みしめないで、やる気MAXにならなくていいから。
俺なんか一瞬で斬り飛ばせる有象無象の雑魚だから。
『いざ、尋常に参る』
「ま、待っ———ッッ!?!?」
しかし、俺の懇願などアンデッドたるデュラハンには通用しなかった。
デュラハンの言葉と同時に騎馬が一気に俺との距離を詰め———デュラハンがギリギリ視認出来るか出来ないかほどの速度でハルバードを振るった。
ブォンッッ、と風を切る音と共にハルバードの斧の様な部分が俺を襲う。
———鮮血が視界に映る。
どうやら俺は首を刎ねられたらしい。
だって真っ赤な血が見えたと思ったら視界がグルグルと回ってるんだもん。
———と思ったら、突然視界が暗転する。
そして次の瞬間には、俺の視界はグルグル回っておらず、しっかりと天と地を認識し、デュラハンを捉えていた。
デュラハンは顔がないから分からないが、騎馬の方は驚きに鼻を鳴らす。
なるほど、本当に直ぐに蘇るのか。
最高のアイテムを手に入れたぜ。
俺は自然と笑みが溢れるのも気にせず、地面を踏み締める。
目的は騎馬の足元。
相手が強いなら、機動力から奪ってやれば良い。
『……ッ』
決して油断をしていたわけでは無いのだろうが、確実に殺したと思っていた相手が即座に動き出したもんだから、デュラハンも慌ててハルバードを振るう。
それは取って付けたような精細さの欠けた一撃。
先程のモノとは比べ物にならないくらい稚拙で力の逃げた一撃。
俺は全力で目を凝らしてハルバードの軌道を読み、相殺するべく渾身の力を籠めた剣を叩き込んだ。
———ガキィィィィィッッ!!
耳を
しかし、俺は畳み掛けるように剣を軸に蹴りを叩き込む。
人間など遥かに超越した膂力が籠もった俺の蹴りは、デュラハンの甲冑にぶつかり、奴の身体を仰け反らせた。
「ハハッ、どうしたんですかぁデュラハン様ぁ! レベル150のアンタがレベル70後半の俺に一本取られるなんて———よッ!?」
今までの鬱憤を晴らすように煽れば、言葉ではなく激痛が返ってくる。
気付けば視界のデュラハンは数十メートル離れており、自分が吹き飛ばされたのだと理解する。
しかし、もう全身の骨が砕け、内臓も潰れた俺には『死』の一文字しか残っていなかった。
「クソッ……次だ」
———暗転、覚醒。
蘇った俺は、何事もなかったかの様に剣を握り直した。
いや訂正しよう。
今は、物凄く気分がいい。
「———ハハハハハハハハッッ!! 愉快ッ、実に愉快だ! あぁ、自分より強い相手に一矢報いるというのは何と気持ちいんだろう!」
俺は今まで一矢報いることすら出来ず800回近く死んできた。
どいつもこいつも反則級の即死攻撃ばっかで逃げることに必死だった。
それが、即座に復活出来る今となっては、相手の意表を突いて反撃する手法へと早変わりしたのだ。
これからは———ただ殺られるばかりの俺じゃないぞ!
「さぁ、どんどん行くぞ首なしチートつよつよ騎士!!」
『……面白い。死を恐れぬその姿、格上である我を前に軽口すら吐ける胆力。正に狂戦士。我の相手に相応しい』
若干高揚した様子で言葉を紡いだ
全身からは漆黒の魔力が滲み出ていた。
俺のレベルアップによって向上した勘が、あの魔力には触れてはならないと、けたたましく警鐘を鳴らす。
さて、と……どう攻撃しようか。
やっぱ蹴りじゃノーダメだよなぁ……切り札はあるにはあるけど……。
俺は自らが構える長剣に視線を映す。
白い輝きを纏うこの剣は、一応対アンデッド特攻の神聖魔法が付与された剣だ。
これで奴に一撃を与えられたなら、それなりにダメージを入れられるはず。
まぁ何にせよ。
「———死んで殴って、殴って死んでを繰り返せばいいか。覚悟しろ、つよつよチート騎士野郎! 神と主人公に変わって俺が浄化してやる!!」
俺はニヤリと笑みを浮かべると。
ググッと足———特に足裏———に力を籠め、トップスピードで弾丸の如くデュラハンへと襲い掛かった。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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