第3話 想像の数百倍果てしない道のり
「———うん、誤算だ。完全なる誤算でしかないな、これは」
「ヒュォォォォォォォ……」
眼の前には、巨大な木の幹部分に大きな口が付き、その口を囲むように大量の目ん玉が生え、ギョロギョロと辺りを見回しているモンスター———ビーム・ウッドが口を開いて魔力を溜めている。
因みに、奴のレベルは150だ。逆立ちしても勝てない。
一体何が起こっているのか……そんなの俺が訊きたい。
だが、一応これまでの経緯を説明しておこう。
まず、話は一昨日の夜から始まる。
俺は疲れを癒やすために、あのまま秘湯の近くで極楽気分のまま就寝したのだ。
ただ、どうやらそこ一帯はレベル130〜140の『ジャック・ザ・モンキー』とかいう、手の平から刃渡り30センチ程の鋭利な刃物の様な骨を出すモンスターの縄張りだったらしく、侵入者の俺は勿論追い掛け回された。
ゲームでは数が多くてちょっとウザいな……程度で済んだのだが、現実ではウザいどころの話じゃなかったのである。
取り敢えずジャック・ザ・モンキーの縄張りから逃げるのに、17回身体を真っ二つにされて死んだ。
大体生き返っても数分で死んだので……時間にすれば8時間半以上は裕に掛かったかな。
だから、追い掛け回され始めた時はまだ深夜にもなってなかったのに……縄張りを抜け出した後には朝が来ていた。
さて、次だ。
やっと縄張りから逃げ出したかと思えば……出ました俺の宿敵、ダイヤウルフ。
ただ、全身ダイヤのキラキラウルフの相手は何百としたので、まぁ5回くらいしか死ななかった。
問題はその次だ。
端的に言えば———沼った。
ダイヤウルフから逃げてたら、文字通り底なし沼に嵌ったのだ。
モンスターが相手ではなく、ただの底なし沼に嵌っただけのことである。
ただモンスターより厄介なのは、死んだ場所からリスポーンするので、この森全域に広がる地下の空洞に落ちるまでノータイムで死ぬのだ。
それに結局丸1日掛かった。
そして原作知識をフル活用しながら地下空洞を数時間掛けて歩きで外に出たら———やっと現在の話に戻る。
レベル150のモンスターから、今まさに攻撃を受けようとしているところに。
「———あー、死ぬ」
「ォォォォォォォ!!」
———ズドォォォォォォォォッッ!!
俺は、ビーム・ウッドの破壊光線で跡形も無く消し飛んだ。
———30分後。
「……やぁ、ビーム・ウッドさん。それとさようなら」
俺は蘇ると同時に、脇目を降らず鬱蒼と茂る森の中に全速力で駆け出した。
生憎ドケチ両親のせいで魔法なんか使えないので、ステータス頼りのフィジカルを駆使して必死に逃げる。
いつか本当にウチの両親は正義の鉄槌を食らわせてやることにしてやろう。
しかし、相手も相手で、そう易々と逃がそうとはしてくれない。
「ォォォオオオオオオ!!」
「ひぃぃぃ!!」
ビーム・ウッドが何処から声出してんだとツッコミたくなる様な咆哮を上げたと同時。
奴の身体がザワザワと揺れたかと思えば、魔力の篭められた直径50センチほどの鋭利な葉っぱが無数に音速で飛んできた。
俺は悲鳴を上げながら、木と木の間や上を縦横無尽に駆け回って何とか回避する。
しかし、当たるのも時間の問題だ。
そのため、出来るだけ遠くに逃げなければ。
あ、勿論この技も、今の俺なら1つでも当たれば即死だよ。
足とか腕だと流石に死なないけど……綺麗になくなるだろうな。
そして結局死ぬのさ、悲しいね。
何て考えていると。
「———ッッ!? ……ごぷっ……あぁ、ミスったか……」
まず、右腕と左足を斬られた。
強烈な痛みと共に右腕と左足が飛び、断面から血が噴き出す。
そのせいで踏ん張りが効かなくなった俺はバランスを崩し……上半身と下半身を1枚の葉っぱに綺麗に斬り裂かれて、絶命した。
———30分後。
「…………」
再び蘇った俺は、まだ気付かれていないのを言いことに、全力を賭してその場から逃走する。
もはや1度目のように『やぁ』なんて流暢なことを言ってる暇はない。
良い加減着かないと一生着かない気がするのは俺だけじゃないと思う。
この場に居るのは俺だけだが……なんて考える暇もないな。
俺は目まぐるしく変化する景色の中、必死にゲームでの禁足の森のマップを思い出しながら走る。
確か俺の求めるアイテム———『奇跡の御守』は、この森で死んでしまったとある冒険者が持っていたはずだ。
効果はと言うと、1回の戦いで1度だけクールタイム無しで再び同じスキルが使えるという物。
これだけでも十分に強いアイテムだが……俺の不死とは多分物凄く相性が良い。
というのも……俺が死ねば経験値が入るので、1度死ねば戦いが終わった、という判定になるのだ。
だから、実質俺の不死は無限にクールタイム無しで使える。
正しく俺からすれば神、チート、奇跡の三拍子が揃ったアイテムだ。
何て、俯瞰して自分を上から見下ろしながら、呼吸の音も聞こえない程の速度で駆けていると。
「———み、見えた……!!」
視界を遮るように生い茂る草木の隙間から、レベルアップによって強化された視力が目印である禁足の森唯一の地上の洞窟を発見した。
俺は歓喜に身を任せ、そのまま繁みから飛び出し———。
『———此処を通りたくば、我に資格を証明せよ』
「———あっ……」
この洞窟を護っている首なし騎馬兵アンデッド———デュラハン(レベル150)の持つ黒っぽい紫色のハルバードによる斬撃が、呆気なく俺の首を斬り飛ばした。
同時に、俺は心の中で叫んだ。
———完全に忘れてたあああああああああああああ!!
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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