第2話 もう3ヶ月マ?
「———あぁぁぁぁ……1日の疲れが取れるぅ……最高だぁぁぁ……」
魔力の影響で植物までもが巨大化した、超高レベルなモンスターがうじゃうじゃいる危険な森———【禁足の森】。
そんな森の至る所に湧き出ている秘湯の内の1つに浸かる俺は、あまりの気持ちよさに爺さんみたいな声を漏らした。
植物同様、魔力を豊富に吸収した半透明の湯は丁度良い湯加減で、それらが相まって疲れた身体に染み渡るのだ。
この時間がこの森での生活唯一の癒やしである。
いやぁ……まさかこんなクソ危険な森にこんな気持ちいい温泉があったとは。
魔力が豊富に籠もった湯のお陰で傷の治りも早いし……何故か傷に沁みないし。
この湯、売ったらバカ売れしそうだな。
「それにしても……もう3ヶ月経ったのか……」
俺は湯船に肩まで浸かりながら呟く。
そう、時が経つのは早いとは良く言ったもので———あっという間に両親に捨てられてから3ヶ月が経った。
当初はあれほど地獄だ地獄だ、詰んだ詰んだと喚いていた【禁足の森】での生活にも、本当に癪だが大分慣れてきて、1日のルーティンも決まってきた。
この秘湯に入るのもルーティンの1つである。
寧ろこれだけは意地でも外せない。
さて、話は変わるが……これがラノベ主人公ならば余裕で強くなってそうなほどの月日が経ったわけだ。
そこで、俺のこの森での3ヶ月分の戦績を発表しようと思う。
聞いて驚くなよ?
———784戦0勝784敗784回死亡。
はい、フルボッコにされてます。
面白いくらいにボッコボコです。
『健闘? 寝言は寝て言え』くらいには手も足も出てません。
もはや考えうる死に方の全てを体験した気がします。
ただ、幸か不幸か、途中から死ぬのに慣れました。
「もはや作業なんだよな、死ぬの。感覚麻痺ってるわぁ」
おっと、何度も死んで情けないって?
馬鹿言え、殺すぞ。
それと、俺が弱いんじゃなくて、相手が強すぎるんだ。
そこを間違えるなよ、馬鹿野郎。
この森のモンスターは、軽く腕を振るっただけで高さ100メートルくらいある巨木を何本も薙ぎ倒せるのだ。
そんなバケモノ共相手に丸腰で挑んでいる上に、レベルで負けている俺に勝ち目など存在しない。
何だよ、どいつもこいつもポンポンポンポン即死技出しやがって。
大概にせぇよ、ぶっ飛ばすぞ。
まぁぶっ飛ばされてるのは俺なんだけど。
「今日は派手に吹っ飛ばされたな……ざっと数百メートルはかたいね」
いや、言い訳をさせて欲しい。
俺、一応死ぬたびに経験値貰って、レベル70まで大躍進したんだ。
相手が皆んな140とか150のバケモンだから、5も70も変わらないだけで。
本当意味わからねぇよな。
まぁそんなこんなで順調(?)にレベリングが出来ていたのだが……4ヶ月目突入直後にして、遂に問題が生じた。
何を隠そう———そろそろ死んで経験値を貰うというやり方では上がりづらくなってきたのだ。
「うわぁ……ガチでどうしようかなぁ……」
勿論、方法がないわけではない。
折角【不死】なんて言うチート特典を貰ったのだから、この特典を使わない手はないと考えている。
しかし、幾ら死に慣れたとは言え、痛いものは痛いし、怖いものは怖い。
ただ、784回も死んだのが功を奏し、数多のラノベを読んだ俺でも概要を測りかねていた【不死】の効果を、この僅か3ヶ月の間に大体把握した。
まず回数に制限はない、と言うこと。
あったらもう既に俺はあの世にいるよ。
だって784回も死んでるんだし。
2つ目は、死んだら例え塵すら残っていなくても生き返れるということ。ついでに身に付けていたものも全て。
ドラゴンの炎のブレスで跡形もなく消し飛ばされたから間違いない。
あれ、死ぬほど痛かったなぁ……当然死んだんだけど。
また、死んだら死んだ場所で生き返ると言うこと。
リスポーン地点などは自分では決められないらしかった。
まぁリスポーン地点なんぞ決めてる時間があったら逃げるわな。
最後に、死んだら30分後に生き返ると言うことだ。
これが何かとネックになっている。
いやまぁ直ぐに生き返ったら、その場で再び殺されるループに入るから良かったけど。
しかし、俺が考えている作戦には、ノータイムで生き返られないといけない。
名付けるならば———。
———『死に殴り大作戦』。
読んで字の如く、何とか気合いで1発相手を殴って死に、死んだ瞬間に生き返って再び死ぬ気で1発ぶち込む。
それを相手が死ぬまで繰り返すという、死ぬほど脳筋な死にゲー理論の作戦だ。
いや我ながら良く作戦とか言えたな。
こんなの完全に作戦じゃなくてただの狂気の沙汰だろ。
既に俺の頭はイカれちまったかな?
「ま、784回も死ねばおかしくもなるか」
と言うことで俺は、この作戦を実行出来る様にするべく。
———この森の奥深くにある特殊アイテムを入手しに行くことにした。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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