119. ハーレム会議:まだ高一の僕が簡単にハーレムが出来る訳が無いんだよなぁ
「第一回、ハーレム会議を開催します!」
「わ~ぱちぱち」
「お~っほっほ!よろしくお願い致しますわ!」
「オリジナル……フォー……」
「まだ認めて無いわよ!」
ハーレムハウスのリビング、いや、和風建築なので居間にて、引っ越しを終えた四人と家主が街で買って来た大き目なちゃぶ台の周りに座って今後の方針について話し合おうとしていた。
「
「それとこれとは話が別よ!」
「じゃあ
「え…………やだぁ!私も一緒が良い!」
「ちょろいねー」
このままなし崩し的にハーレムに入ることは間違いなさそうだ。というか最初のヒロインなのに
「ぐすん、どうしてこうなっちゃったの……」
「魅力的な女の子が多いから」
「あんたが節操なく声かけるからでしょ!」
本人はガルルルと狼のような唸り声をあげる感じで睨んでいるつもりだが、ダイヤ的には子犬が構って構ってしているようにしか見えずほっこりしていた。
「それはそれとして、これからの皆との付き合い方を話し合いたいんだけど」
「それはここでの生活ルールのことではなく、ハーレムという点についてかしら」
「うん。生活ルールも決めなきゃダメだけど、それより先に決めておきたいなって思って」
ダイヤに惚れた女子達がこうして集って来たが、ハーレムが完成したという訳ではない。ハーレムとして社会的に認められるためにはまだ必要なことがあり、ダイヤは堂々とハーレムを堪能するためにその条件を満たすことを優先したいのだ。
「ダイヤ君は安定して私達を養えるくらいお金を稼げるようになるつもりなんだよね。でもそれってもう簡単に出来ちゃわない? スキルポーション売れば良いわけだし」
「ううん。スキルポーションは今は価値が高いけれど、流通量が増えてくればどんどん安くなってくると思うんだ。ある程度で下げ止まりはすると思うけど、皆を
高難易度ダンジョンへ挑戦するのならば高性能な装備などを入手しなければならない。それには当然お金がかかり、最前線用の装備であればスキルポーションに匹敵するくらいの価格となる。お金はいくらあっても足りないくらいなのだ。
「でもダイヤ。それじゃあ安定して稼げるっていうのはどうやって判断するつもりなの?」
「スキルポーション以外で価格変動が少なくて価値が高いアイテム。それを簡単に集められるようになること。そして万が一僕が大怪我とかでダンジョンに入れなくなったとしても、残った資産だけで子供達が成長するまで養えること。それが条件かな」
ゆえにスキルポーションが高いうちに売却しまくって資産を貯めておき、ハーレム一家を生涯養える分を残しながら、余剰分を探索や生活に必要な分として割り当てる。装備を整えていたらその余剰分は足りなくなるので、生活水準を落とさない程度に安定して稼げるようにならなければならない。
「それって……時間かかる……?」
「ううん、Dランクダンジョンとドロップ操作の合わせ技ならそんなに時間かからないと思う。Dランクのアイテムでも価値が高いものはあるし、世の中にはFランクの次にDランクが多いから需要も多くて直ぐに売れるしね。ハーレム人数がもっと増えることを考えると出来ればCランクには早めになっておきたいところだけど」
「増やすなー!」
「増えます」
「うわああああん!」
ハーレムが社会的に認められるために必要な資産については、いきなりDランクになったこととスキルポーションの存在により目途が立ちつつある。
「問題はもう一個の方なんだよね」
「もう一個ですか?」
「うん、子作りしなきゃダメってやつ」
ぼっ、と女性陣の顔が一気に赤くなった。養うだのなんだのと現実的な話から、一気に生々しい話へと変わったからだ。
「わ、わわ、私達は、ダイヤ君となら……」
「待って待って。気持ちは嬉しいけど、気持ちの問題じゃないんだ」
「え?」
照れる女性陣とは対照的にダイヤは真剣な表情だ。その様子を見て彼女達も徐々に冷静になって行く。
「そもそも子作り出来なきゃダメなんだけど……皆は検査したことある?」
「検査って……あ、そうか!」
「子作り……適正検査……」
この世界では人口が激減したため、どの国でも子供を増やす政策を強力に推進している。日本でも結婚可能年齢を引き下げ、若い頃からどんどん子供を産むのが自然な風潮になりつつある。ただし若すぎる出産は母体に大きなダメージを与え、子供が元気に生まれてこないかもしれない。
ゆえに少女達が出産に適した体に成長しているのかを検査し、合格した場合にのみ子作りを許可するという法律が定められているのだ。
「…………」
「…………」
「うう……ダメだったら嫌だなぁ」
「えろえろ……お預け……」
真っ赤のままで何も言えない二人と、冷静に照れる二人。性に対する積極性の違いが如実に表れていた。
「それに問題はそれだけじゃないよ。単に僕らが付き合うだけなら良いんだけど、ハーレムとなると子供を作らなければならない。だとすると、結婚するかどうかは別として、絶対にやらなきゃならないことがある」
それこそが実はハーレムを作る上で最難関とも言える問題だった。
「皆の家族に認めてもらうこと」
「「「「!!」」」」
ハーレムに市民権が生まれつつあるとはいえ、社会的にはまだ否定派が多い。しかもダイヤ達はまだ高校一年なのだ。若気の至りと思われても仕方ない。そんな中で複数の女性と子作りして爛れた生活をしたいです、などと言われて許可を出す親がいるはずもない。
「うちの家族はダイヤに恩を感じてはいるけれど、ハーレムとなると難しいわね……」
「私も絶対無理そう。特にお父さんが……」
「わたくしは母が厳しそうですわ」
三人が顔を
「うちは……大丈夫かも……」
「え、奈子さんのとこは平気なの?」
「ハーレムでも……男を捕まえたなら……それだけで……喜びそう……」
「そ、そうなんだ」
それは奈子がこれまで失敗をし続けていたから。たとえハーレムであっても男に惚れて貰えたという『成功』があるならば、それだけで喜んでしまうような精神的な土壌が形成されていたのだった。
そこまで失敗が身近だったことを考えると、ダンジョン・ハイスクールの入試に合格出来たことは快挙だったのでは。
「ふふ……私だけ……エロエロ……」
「そんなのダメー!」
「奈子ちゃんばかりズルイ!」
「わ、わたくしも覚悟は出来てますのに!」
思わぬところで差が出てしまい焦る三人。だがダイヤがそんな差を放置しておく訳が無い。
「ちゃんと皆のご家族に挨拶に行って説得するから安心して」
「「「…………」」」
果たしてまともな説得が出来るのだろうか。
のほほんとした害の無さそうな見た目のダイヤが、娘さんを僕のハーレムに入れさせて下さいだなんて言ったとしても、子供のママゴトだとしか受け取られないのではないか。そんな不安がどうしても拭えない。
そこで
「ねぇダイヤ。挨拶に行く前に成果を作ったらどうかしら」
「成果?」
「こんな立派な人間だからハーレムを作るに相応しいって思わせるのよ」
「僕はそんな立派な人間じゃないよ」
「十分立派よ。スキルポーションを発見して、精霊使いの立場を向上させたじゃない」
「それ偶然だしなぁ。立派な人間だって主張するには少し弱くない?」
なお、金持ちという意味では十分すぎるため、金に弱い家族ならば簡単に堕ちそうだ。
「なら例の洞窟の調査をしてみたら?」
「え?」
「何者かがダイヤに何かを伝えようとしてたんでしょ。もしその内容がちゃんと分かって、世界的な大発見だとしたら成果になるわよ」
「それも偶然だと思うけど……でも偶然じゃなくなるように自分から調べるってことか」
「そういうこと」
単に突然伝言を受け取っただけなら何もしていないラッキーな人間と思われるだろうが、自分から行動して調べて答えを知ったのならばそれは成果として誇っても変ではない。すでにキングコブラと命を懸けた戦いをしているのだ。それで何もしていないというのは明らかにおかしい。
「じゃあ今後の方針としては、Dランクダンジョンで資産を稼ぎつつ、例の洞窟の調査に協力して成果を出して、皆の両親に認められてハーレム完成ってことだね!」
ダイヤはそれで納得したが、彼女達はどうやらそうではなかったようだ。ちゃぶ台から顔を乗り出して力強くあることを確認してきた。
「でもダイヤ君。ハーレムが完成する間に、少しくらい恋人らしく付き合っても良いんだよね」
「え?」
「そうね。わざわざ引っ越してきたのに普通に生活するだけというのも変な話よ」
「え?え?」
「分身スキルでわたくし達を同時に愛して下さるのですよね?」
「え?え?え?」
「入れなければ……問題ない……」
「何言ってるの!?」
彼女達はダイヤとイチャコラするためにハーレムハウスに引っ越してきたのだ。それなのに家族に許可を得るまで何も無しというのはあり得ない。そもそも一般的な感性として付き合うだけならば家族の許可が無くとも構わないのだ。子供を作る行為さえしなければ良いだけであり、愛を育むことは普通の事だ。
尤も、奈子が考えていることまで許されるかは微妙なところだが。
「ま、待って。まだ分身スキル覚えて無いし。覚えたとしても使いこなすには並列思考スキルが必須だし」
「「「「早く覚えて」」」」
「わぁお」
このままではダイヤ一人に対して彼女達が群がってくるのは間違いない。えっちなことはともかく、少なくともデートの誘いが重複してバトルに発展する可能性は否定できない。
彼女達の関係性が深まって来たならば上手いこと回せるかもしれないが、思春期の女子が男子を好きになった直後なのだ。我慢など出来る訳が無い。
ダイヤにとって一刻も早くやらなければならないのは資産獲得や親への挨拶などではなく、分身スキルを習得して使いこなし、彼女達と同時にイチャコラ出来るようになることだった。
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